書店員がおすすめ 年末年始に読みたいビジネス書10冊

岡崎さんがもう1冊に選んだのは橘川武郎『イノベーションの歴史』(有斐閣)。経営史学者による「イノベーションのあり方の変化に注目して、日本経済の発展の流れを明らかにする」試みだ。江戸期の鴻池善右衛門、三井高利に始まり、現代の柳井正、孫正義まで、20のケースを追いながら論点と歴史観を抽出していく。その視線の先には当然、「日本のイノベーションの再生」が見据えられている。

「日本経営史の中でどういった文脈でイノベーションを実現させてきたかが書かれている。個々の経営者に焦点を当てた本がほとんどの中、大きな文脈で考えられるのがこの本のいいところ」と岡崎さん。大きな文脈を意識しながら個々のケースを好きなように選んで読めば、自分の仕事とのつながりを発見できるかもしれない。

経営学、ビジネスに役立てるには

紀伊国屋書店大手町ビル店・西山崇之さんのおすすめは『新しい経営学』と『世界標準の経営理論』

「経営学のしっかりした本が出たのが今年の特徴だと思う」。紀伊国屋書店大手町ビル店の西山崇之さんは19年を振り返ってこう話してくれた。その視点で選んだ2冊が、三谷宏治『新しい経営学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)と入山章栄『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)だ。

『新しい経営学』は、本コラムでも「事業ひとつを回せるように 初学者向けに経営学を整理」の記事で10月に紹介した。誰を狙うのか、提供価値は何か、どうやって価値を提供するか、どうお金を回すか、というビジネスに不可欠な4つの要素を順序立てて学んでいくことで、一つの事業を回せる基礎が身につく構成だ。ビジネスの教育者という著者の個性が際立つ内容で、豊富に組み込まれた具体的なビジネスモデルの事例や演習問題などで、ビジネスストーリーを面白く読みながら経営学を学べる本だ。

一方の『世界標準の経営理論』は800ページを超える大部の本格的な書物。12月初めに刊行されたばかりだ。著者の入山氏は早稲田大学ビジネススクール教授。「世界で標準となっている経営理論」を可能なかぎり網羅・体系的にわかりやすく紹介した本だ。

著者によればそうした経営理論は約30ある。SCP理論、取引費用理論、ダイナミック・ケイパビリティ理論、資源依存理論……ちょっと聞いただけでは簡単にイメージしにくいこうした経営理論を一つ一つ丁寧に紹介していく。網羅性、体系化への恐ろしいまでの気力に圧倒される内容だ。著者は経営理論を知ることで「思考の軸」を持ってもらいたいと、ビジネスパーソンに呼びかける。思考のよりどころを持てば、つねに考え続けることができる。経営理論は答えではないが、考え続けるための軸の一つになり得るというのが著者が本書に込めたメッセージだ。

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