書店員がおすすめ 年末年始に読みたいビジネス書10冊

青山ブックセンター本店・本田翔也さんのおすすめは『ひとりの妄想で未来は変わる』と『岩田さん』
青山ブックセンター本店・本田翔也さんのおすすめは『ひとりの妄想で未来は変わる』と『岩田さん』

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回はいつもと趣向を変えて、定点観測している書店のビジネス書担当者に年末年始に読んでおきたいビジネス・経済書を推薦してもらった。2019年刊行の本から選んでもらったが、秋口から年末にかけて力の入った本が次々と刊行されたこともあって、近刊を推す人も多かった。年末年始のまとまった休みを利用して読書するときの参考にしてほしい。

ビジネスで未来を変える実践の「智慧」とは

今回は毎月訪れている定点観測書店と2~3カ月に一度訪れる準定点観測書店の5人の書店員に19年に刊行された本から2冊の推薦を依頼した。10月からビジネス書担当になった青山ブックセンター本店の本田翔也さんがまずあげたのは、出たばかりの新刊、佐宗邦威『ひとりの妄想で未来は変わる』(日経BP)だ。

佐宗氏はP&G、ソニーをへて戦略デザインファーム、BIOTOPEを起業し、様々な企業・組織のイノベーション支援に取り組む。本書はその経験で培った「前例のない取り組みを、ひとりの妄想を起点に実装していく、創造と革新のための現場の智慧(ちえ)」を紹介した内容だ。「年末に出る本は年間ベストなどで見逃されやすい。僕も読んで刺激を受けた。これを読んで新しいことを始めようという人が一人でも増えてほしい」と本田さんは推薦理由を話す。

起点をたった一人の妄想に据え、これに熱をふき込み、周囲を巻き込み、既存組織をも巻き込んでいくプロセスを現場の「智慧」として36項目にまとめる。実際イノベーション支援で関わった企業の人との対談をところどころに差し挟んだり、章ごとにすぐに試せるワークシートやエクササイズを用意するなど、具体的な実践につながりやすい本づくりになっているのも魅力だ。

もう一冊選んだのは、ほぼ日刊イトイ新聞編『岩田さん』(ほぼ日)。2015年に急逝した任天堂元社長の岩田聡氏の「ことば」を集めた本で、「うちで今年よく売った本。版元からは全国の書店の中で売り上げがベスト5に入ると言われた」と本田さん。本コラムでも8月に「組織で働く人を勇気づける 任天堂元社長岩田氏の言葉」の記事で紹介した。

「わたしは、ただしいことよりも、人がよろこんでくれることが好きです」。こんな柔らかい言葉が拾われ、10年以上、任天堂のトップとしてビジネスを指揮した岩田氏の等身大の思想と哲学がゆったりしたリズムで読み手の心にしみ入ってくる。企業で働くことやリーダーシップについて考える道しるべになる一冊だ。

シリコンバレー伝説のコーチは何をどう教えたか?

三省堂書店有楽町店・岡崎史子さんは『1兆ドルコーチ』と『イノベーションの歴史』をすすめる

『岩田さん』と似た趣を持つ一冊が三省堂書店有楽町店の岡崎史子さんが推薦してくれたエリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル『1兆ドルコーチ』(桜井祐子訳、ダイヤモンド社)。著者らグーグルの人々、アップルのスティーブ・ジョブズ氏、アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス氏らのエグゼクティブ・コーチだったビル・キャンベル氏について書かれた本だ。キャンベル氏は16年に亡くなった。追悼の思いもたっぷり込めながら「ビルが何をコーチしたか(コーチングの内容)と、どうやってコーチしたか(コーチングの方法)の両方を考えて」いく。

「謙虚さやチームメンバーを尊重することなど、今年売れたビジネス・経営書に共通する世界観が魅力的。まさに今読んでおきたい本」と岡崎さんは話す。教え子でもある著者らは80人を超えるキャンベル氏に関わった人へインタビューし、本書を著した。シリコンバレーの強さが人間味たっぷりに伝わってくるところが多くのビジネスパーソンをひきつけそうだ。

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