「お荷物」部下の再生術 世代の差を知り本音を見抜く『イマドキ部下のトリセツ』 麻野進氏

ただ、ロスジェネ世代に共通して響くキーワードがあるわけではない。「仕事を続けていくうえで本人が重視しているアンカー(いかり)のような価値観を見付けて、それと関連付ける提案を試みると共感を得やすくなる」という。アンカーの種類としては、「専門職志向」「独立・起業」「安定重視」「社会貢献」などがある。「本人の希望と異なる軸に沿って働きかけても、狙った反応は返ってこない。まず本人のアンカーを探り当てるために、言葉を交わす必要がある」と、麻野氏は対話を促す。アンカーが見つかりさえすれば、専門職志向の場合は、スキル・知見の深掘りに役立つ働き方を一緒に考え、独立・起業タイプなら将来に役立つ経験の幅を広げる手助けを買って出るといったサポートを提案できるだろう。「上司が自分のキャリアを応援してくれていると感じてもらえれば、手を携えてパフォーマンスを上げていく気持ちを引き出せる」(麻野氏)

いったいどっちが本心なのか

麻野進氏

ゆとり・さとり世代との向き合い方は、麻野氏の研修で最も「難物」のテーマとして相談が多い。たとえば、「取引先へ車を運転して回る際に上司がハンドルを握ると、すぐに助手席を後ろに倒してすっかり寝入ってしまう若手がいる」という嘆きを聞いたこともあるそうだ。上司の目を気にして過ごした昭和世代には容易に信じにくいふるまいかもしれないが、麻野氏は「似たような事例は珍しくない。上司は結構なめられている」と明かす。パワーハラスメントが厳しくとがめられるようになり、上司は部下の行動に注文を付けるのをためらうようになった。地位をかさに着た過剰な指導は戒められて当然だが、「結果的に部下の育成・指導そのものにおじける傾向が表れた」(麻野氏)

上司との対人関係を嫌うかのような、こうした行動を見せる半面、「若手の間では、周囲が自分をかまってくれないという不満が強い」と麻野氏は複雑な心理を読み解く。自分からは積極的に職場の人間関係にかかわろうとはしないものの「気にしてほしい」という願望は強い。関心や評価を求める。「いったいどっちが本心なのか、理解が難しいとすら思えるキャラクターを兼ね備えているのがこの世代の特徴」と麻野氏は解説。同時に傷つきやすいナイーブな側面も持つ。背景にあるのは、「嫌なことはしなくてもいい、給食も嫌いなら残していいと認められて育った成長期の体験。自ら痛みを買って出て、成長の助けにしようという気持ちは乏しい」とみる。

「成長させてほしい」という期待感が強いのも、ゆとり・さとり世代の傾向だという。三菱UFJリサーチアンドコンサルティングが新入社員を対象に実施したアンケート調査でも、「会社に望むこと」の第2位は「自分の能力の発揮・向上ができる」だった(1位は「人間関係がよい」)。4位の「残業がない・休日が増える」も増加傾向にある。こうした意識を背景に、麻野氏が提案するのは、「将来の転職に役に立つ成長の機会を得る」という参加の促し方だ。

「もっと働きがいを感じられて自由時間も多い仕事に移るためには、今のままでは十分ではない」という自覚を引き出して、今の職場での成長機会に進んで取り組む態度につなげるわけだ。「手間はかかるが、丁寧に向き合わないと現状維持で構わないと思い込んでしまう」と、麻野氏は管理職の「もう一手間」が肝心とみる。

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