とりあえず、規則正しい生活を促して、改善をはかろうと、夜は午後9時就寝、朝は午前6時に起床するように助言しました。当初はうまくいったのですが、仕事が忙しくなると生活のリズムが崩れ、再び体調が悪くなり、休職することになりました。

この休職期間中、彼の家族が亡くなるという悲しい出来事がありました。本人はショックを受けていたようではありますが、ひどく落ち込んだようすもありませんでした。幸い体調も安定していたことから、それから間もなくして復職することになりました。

ところがです。家族の死から1年ほどすると、またたびたび腹痛を訴えるようになりました。結果、勤怠不良が続くようになり再び休職となってしまいました。

身体の不調を訴え、内科の診察や検査をしても原因がみつからない。それでも、症状やその痛みなどで生活に支障をきたす。これが身体表現性障害の典型的な症状です。具体的な症状はさまざまです。下痢や便秘、腹痛などのほか、めまいや動悸(どうき)などもあります。つらい症状に加えて、その原因がわからないため、不安を抱いたりすることもあります。

こうした状況が長く続いても、自覚しているのは身体症状だけなので、精神科を受診することに抵抗感を持つ人もいます。症状の軽減をはかるためにも、精神科や心療内科の医師に相談することが望ましいでしょう。治療法としてはカウンセリングのほか、抗うつ薬や抗不安薬の処方があります。抗うつ薬は痛みを抑える効果も期待されます。

痛みで遅刻や欠勤、休職ののち退職

マーケティング会社の20歳代男性の事例です。

体中に痛みを覚え慢性疼痛(とうつう)のような状態でした。疲労感はあるものの、不眠や落ち込みなどもありません。内科で診察や検査をしても原因がわからずじまいでした。問診でも「特にストレスはない」といいます。痛みのために会社を遅刻したり、欠勤したりすることもしばしばで、休職となってしまいました。

痛みを和らげることもあり抗うつ剤を処方するとともに、「痛みを意識するのではなく、痛くない状態を意識するように」などと指示しました。ただそれでも完治せず、結局は休職期間満了で退職することになってしまいました。

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