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おばあちゃんシャチ 閉経して長生きは「孫のため」

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

シャチは、メスが閉経する数少ない哺乳類の1つだ。ヒトも閉経するため、あまり疑問を感じないかもしれない。だが、死ぬ前に繁殖機能を失う閉経は、より多くの子孫を残すほうが有利という進化的な観点と矛盾するため、大きな謎とされてきた。

新たな研究によって、シャチのこの謎の一端が解明された。おばあちゃんシャチがいると、孫の生存率がぐっと上がるという。

太平洋岸北西部で数十年にわたってシャチの群れを分析してきた科学者が、おばあちゃんと一緒にいる孫の方が、そうではないシャチよりも生き延びる確率が高いことを突き止めた。さらに、おばあちゃんシャチが死ぬと、その後2年間は孫の死亡率が大幅に上がることもわかった。シャチは母系集団を形成するので、食料源などの重要な情報を持つ高齢のメスが、群れの生死を左右しているのかもしれない。

今回の研究結果は、学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に2019年12月9日付けで発表された。「閉経したおばあちゃんシャチの死は、群れにとって大打撃なのです。そのため、今回の研究は保護のための重要なツールになります」と、英ヨーク大学の進化生物学者で、論文の著者の1人であるダン・フランクス氏は述べている。

「知識とリーダーシップを持つおばあちゃんシャチの存在は、子どもにとって大きいのでしょう。環境が厳しいときは特にそうです」とフランクス氏は言う。

シャチは、最大40頭ほどの固く団結した群れを形成し、極地から赤道近くまでの広い範囲に生息している。肉食性で、場所によって魚からクジラまでさまざまな獲物を食べ、狩りを行うときは群れで協力し合う。通常は、オスもメスも生まれた群れの中で一生を過ごすが、近親交配を避けるため、繁殖相手は群れの外から探す。また、シャチのメスは40歳くらいになると繁殖を行わなくなるが、90歳くらいまで生きる。一方、オスの寿命は50歳ほどだ。

国際自然保護連合(IUCN)はシャチを「データ不足」に分類し、絶滅リスクの評価が難しいとしている。しかし、もっとも研究が進んでいる太平洋岸北西部を含め、シャチの生息数は減少傾向にある。主な原因は、有毒化学物質であるPCB、主な獲物であるキングサーモン(マスノスケ)の減少、そして船舶による騒音被害という3つの問題だ。

「これはとても重要な研究です」と、米ワシントンD.C.にあるジョージタウン大学の動物行動学者のジャネット・マン氏は言う。「ですが、おばあちゃんシャチの役割の一端を解き明かしたに過ぎません」。なお氏は今回の研究に関わっていない。

「おばあちゃん効果」とは

ヒトの女性の閉経は、長いこと科学者たちの興味を引いてきた。通常、女性の平均寿命は男性よりも長い。しかし、女性は子どもを産まなくなってから何十年も生きる一方、男性は死の直前まで子どもをもうけられる。

「男性に閉経はありません。最後まで、多少の精子が存在します」とマン氏は言う。

進化という観点で見れば、これは筋が通っている。一方で、繁殖能力を失ってから数十年ほど生きるのは腑に落ちないとマン氏は話す。自然選択を考えるなら、女性も子孫をできるだけ多く残す方が有利なはずだ。

進化生物学者たちは、このジレンマを説明する仮説をいくつも立ててきた。その1つに、閉経が起これば、祖母と母がそれぞれの子どもを養うために希少な食料をめぐって争うことを避けられるというものがある。年をとってから子どもを産むことは、その母子にとって危険なうえ、すでに生まれている子どもにまで危険が及ぶことにもなる。

そこで登場するのが、「おばあちゃん仮説」だ。米国の人類学者であるクリスティン・ホークス氏による、現在もタンザニアで狩猟や採集をして暮らすハッザ族の研究などで、広く知られるようになった。これによると、おばあちゃんが食料の確保や子守などを助けることで、孫の生存率が大幅に向上する。

この説は、多くの研究で支持されている。その一例が、産業革命前の時代に生きたフィンランド人とカナダ人のデータを2004年に分析したものだ。そこでも、おばあちゃんがいる孫の方が、成人になるまで生存する割合がはるかに高かった。

40年分以上のデータを分析

ヒトを対象にした研究に触発され、フランクス氏らは同じことがシャチにも当てはまるかどうかを調べることにした。そして、米国のワシントン州とカナダのブリティッシュコロンビア州の沿岸に生息する2つのシャチの群れについて、出生や死亡など、さまざまな出来事を詳しく記録した40年分以上のデータを徹底的に分析した。

合計で378頭の「孫」の生存率を分析した結果、閉経したおばあちゃんが死んだときと、孫がオスだったときに死亡リスクが大きくなることがわかった。フランクス氏は、閉経後のシャチは孫に尽くせるので、おばあちゃんの死の影響はその分だけ大きくなるのだろうと述べる。オスの死亡率が高い原因は、よくわかっていない。

また、獲物となる魚が少ないと、リスクが高くなることもわかった。そこから、食料不足のときほど、おばあちゃんの存在意義が高くなっている可能性がうかがえる。

「困ったときに食べものが得られる場所に群れを連れて行くのは、おばあちゃんたちであることがわかっています。また、つかまえた魚を若者たちと共有することもわかっています」とフランクス氏は言う。「でも、それだけではないと考えています。おばあちゃんシャチの群れへの貢献について、まだ解明できることがあるはずです」

マン氏は、太平洋岸北西部でシャチが減り続ければ、それを突き止めることはできなくなってしまうかもしれないと言う。

「私たちは、閉経が生じるメカニズムについて理解するチャンスを失いつつあります。その原因は、私たち自身の行動にあるのです」

(文 CARRIE ARNOLD、訳 鈴木和博、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年12月11日付]

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