AIと人間の関係は? 津田大介が今年注目する3分野

AIにも説明責任が問われるようになる(写真はイメージ=PIXTA)
AIにも説明責任が問われるようになる(写真はイメージ=PIXTA)

2020年、デジタル関連製品ではどのようなものがはやるだろうか。また、これからどんな技術が伸びてくるだろうか。前編では3氏が挙げた次世代通信規格5Gを取り上げたが、後編では津田大介氏がヘルスケアやAIについて語る。

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僕が今年注目しているデジタルトピックは次の3つだ。

・ヘルスケアデータの収集がスマートウォッチと融合してより身近に
・「移動の快適さ」をテーマとしたデジタルグッズの進化
・AIの利便性向上とともに問われる人間の責任と取り扱い方

アップルはヘルスケアカンパニーに?

今年、デジタル機器の分野で今まで以上に注目されるのは、ヘルスケアデータとの関係だろう。そう考えたきっかけが、先日購入した第4世代の「Apple Watch」だ。

Apple Watchはヘルスケアのデータを収集する

新しいApple Watchは、初めて時刻が常時点灯されるようになり、ようやく普通の時計のように使えるようになった。さらに心拍数を計測する機能がつき、ヘルスケア関連のデータを収集できる。ヘルスデータを収集するウエアラブル端末はこれまでもあったが、スマートウォッチで最も存在感の大きなApple Watchが対応したことで、スマートウォッチを利用してストレスなく情報を収集する動きはさらに加速するだろう。アップルは、ヘルスケア企業になるのではないかとも言われているが、新しいApple Watchを毎日使っていると、その方向性がリアリティーを持って感じられる。

現時点の課題は充電だろう。睡眠中の情報も収集しようとした場合、どれだけバッテリーが持つか、いつ充電するかが重要になる。東京大学・川原圭博教授の研究グループは、室内の様々な電子機器に配線を使わずに電力を送る技術を開発しているが、こういった技術をいつどういう形で搭載してくるか。

スマートウォッチは一時ほど話題にはならないが、ヘルスケアとデジタルという視点で見ると、デバイスとしての重要性はますます大きくなっていくだろう。

移動を快適にするグッズがヒット

もう一つ、今年注目したい分野が「快適に移動する」というニーズを満たした製品だ。

ここ数年、「移動・外出が快適になるアイテム」の人気が高まっている。例えばイヤホンではアップルの「AirPods」を筆頭に、ケーブルのない完全分離型が大きなマーケットを形成している。一度使ってみればわかるが、ケーブルがないというだけで移動中の煩わしさは大きく軽減される。さらに19年に発売された「AirPods Pro」やソニーの「WF-1000XM3」はノイズキャンセリング機能を搭載し、周囲の雑音をシャットアウトできるようになった。これらを使えば外出先で仕事をするときも集中できる。

ソニー「WF-1000XM3」。ソニーストアでの価格は2万5880円
2019年10月30日に発売されたAirPods Pro。直販価格は税別2万7800円

ノートパソコンで1キロ以下のモバイルノートが好調なのも、移動中や外出先で利用したいというニーズが大きいからだろう。19年の夏に至るところで目にしたハンディタイプの小型扇風機は、このジャンルの代表的ヒット商品といえるかもしれない。

働き方改革の影響もあり、「オフィスに縛られない」という傾向は今年、より強くなっていくだろう。オフィスや自宅から離れて、「いかに快適に移動するか」というニーズを満たすアイテムに注目すると、新たな可能性を見つけられるはずだ。

AIと人間の関係はどうなる?

19年もさまざまな場面で話題になった人工知能(AI)だが、今年もさまざまな場面で使われるようになるだろう。そこで注目されるのは「AIを使う側の責任」だ。

基本的にAIはデータを読み込ませて学習することで進化する。しかし、そのデータに偏りがあると、差別を助長する恐れもある。例えば男性社員の多い企業が採用活動でAIを使って希望者の適性を検証するようなケースでは、過去の社員データを使うと、AIは男性に適した仕事だと判断し女性を不利に扱いかねない。こういった例を元に、19年6月には総務省はAIが差別を助長するのを防ぐための指針案をまとめた。これを回避するためには、女性もバランスよく採用されるように人間が学習データで補正をかけるしかないわけだが、その調整レベルが正確かどうかを判断するのも非常に難しい。

AIは人間に代わって「判断」をしてくれるが、人間の「決断」に伴う責任を希薄化する危険も伴う。折しも昨年末には、AI研究者のツイッターに投稿した内容が差別発言だとして炎上する事案もあった。AIの利便性が増す一方で、扱う人間のポリシーや倫理観、差別やプライバシー情報に配慮する必要性も議論されるようになるだろう。

一方で、我々の生活にAIが関係してくる度合いも深まるのは間違いない。2019年で印象残ったサービスは航空券やホテルの予約をワンストップで行える「Google Travel」だったのだが、これまで単体で処理していた業務をまるごと担うというサービスは、企業がAIを活用することで、さらに発達していくだろう。旅行に関していえば、利用者にとってはAIが秘書のような役割を果たしてくれることで、快適な旅行を手軽に楽しめるようになるわけだが、従来のホテル比較サイトや旅行代理店は今のビジネスモデルのままでは生き残るのが難しくなるだろう。国、企業、そして個人も、今年はAIとの付き合い方を考える機会が増えるのではないか。

(構成 藤原達矢=アバンギャルド)

津田大介
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。「ポリタス」編集長。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。NIKKEI STYLEに「津田大介のMONOサーチ」を連載中。
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