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ふらり「世界猫旅」のすすめ 新たな風景・自分を発見

旅行作家に転身した小林希さんの冒険

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NIKKEI STYLE

ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジア、中米、南米など世界37カ国の美しい街並みと、その景色に溶け込んでいる猫たちを、写真と文章でつづるフォトブックが多くの女性の心を癒やしている。著者の小林希さんはサイバーエージェントを辞め、世界一周一人旅を続けるうちに旅行作家に。その一方で猫旅で立ち寄った瀬戸内海の離島で古民家再生のゲストハウスプロジェクトを立ち上げることも。そんな小林さんに、猫との触れ合い旅の魅力について聞いた。

街の雰囲気によっても猫の顔つきが変わってくる

―――『世界の美しい街の美しいネコ 完全版』(エクスナレッジ)は、日本からのその街までかかる時間や宿情報のほか、猫の遭遇率やなつく度合い、おっとり度といった猫データも掲載されているのが面白いですね。いつから撮りためたものを一冊にまとめられたのでしょうか。

2012年から7年分の猫旅情報が詰まっています。同じ野良猫でも、その国の情勢や雰囲気、人間との距離感によっても、猫の顔つきや行動が異なる気がします。スペイン・アンダルシア地方の古都グラナダ、美しい海を眺められるイタリアの港町や、中米のキューバ、あとはモロッコ、チュニジアなどでは、穏やかで人懐っこい猫と出会うことが多かったです。人も穏やかで猫にも優しく接しているのだろうなということが想像できます。

一方、ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボ、セルビアなどの戦火に見舞われた街ではがれきの下などで暮らしているような猫たちがいて、やはり警戒心が強く野生っぽい、もしくは寂しい顔をしていました。人との距離感もあったりして、声に出せない街の声を猫たちから感じました。そうした視点で旅するのも興味深いと思います。

猫旅は、特に一人旅が好きで猫好きの方にオススメです。自分一人の都合で動ける方が猫を見つけやすいし、猫と一緒に過ごせる時間も作れますから。猫探しを通じて、その街の方と話したりすることも猫旅の楽しみ。実際に、猫を探してガイドブックには載っていない路地裏に入っていくと猫を飼っているおばあさんに出会ったり、私がずっと猫を追っかけ回して写真を撮っていると「ヘイ、キャットガール!」と声をかけられたり(笑)。猫好きは世界中にいて、人がいるところに猫はいる。猫を通じてその国々の人々とコミュニケーションが取れる機会になります。

この本の表紙に使った写真も、そうした人と猫との関係性を見せたくて選んだ1枚になっています。

――特に思い出に残っている国と猫のエピソードについて教えてください。

ルクセンブルクの小さな町、クレヴォーでの猫との出会いは、特に思い出深いです。小さなお城の城下のシュロフ通りを、猫を探して歩いていると、民家から出てきた中年の女性に「どっから来たの?」と声をかけられました。猫が好きだというと、「うちの猫を見せてあげる」と。家の中に入れてもらい、思いがけずご夫婦ととてもかわいらしい飼い猫と、午後の昼下がりを過ごすことができました。猫探しが旅の目的だからこその出会いでした。

猫で広がる地元の人とのコミュニケーション

――私たちが旅先で猫と出会うためには?

人に話しかけられることも多かったですが、それ以上に、私から話しかけることも多かったです。猫をなでている人を見つけては、「すごくかわいいですね、その子はあなたの猫?」「そうだよ」「いや違うよ」「あそこにもたくさん猫がいるよ」などと、地元の人とコミュニケーションをとりながら、いろんな猫と出会ってきました。「お隣さん家は猫が多いから、声をかけてあげようか」と言われ、お家にお邪魔したこともあります。

猫と会うためには、こうやって地元の人に「ここら辺に猫ちゃん、いますか?」と話しかけたり、事前に訪問する地名と猫で検索したり、猫がいる宿を検索したりすると情報が結構出てきます。

――本の最後のページには、日本の瀬戸内海に浮かぶ男木島で出会った猫たちが紹介されています。

日本には美しい島がたくさんあって、私自身、島旅も大好きなんです。世界の中で、猫がいる美しい町という観点から見ても、日本の島にいる猫はとても愛らしい。瀬戸内海で暮らす海辺の猫や神社仏閣で出会う猫も、海外とは違う和を感じさせてくれる独特の趣があります。国内旅行でも、特にこうした猫がまだいそうな島で、猫たちを探索するのも面白いかと思います。

旅の非日常があまりに楽しくて退職を決意

――小林さんが、こうして猫を撮影する旅作家になられた経緯を教えてください。

大学卒業後、サイバーエージェントに入社しました。ちょうどアメーバブログが立ち上がった時期で、採用試験の面接時に社長の藤田晋さんにネットのコンテンツを書籍化する出版事業をやりたいと話したのです。その希望を聞き入れてもらい、アメーバブックスへ出向し、書籍編集者の道を歩み始めました。

様々なジャンルの本を作っていたのですが、28歳の時に2週間の休暇をとって会社の同期3人とチュニジアへ旅行しました。イスラムのモスクに住む人々の服装や建物の色使いなどがすごく非日常で旅情がある感じがして、チュニジアを選んだのですが、実際に足を運んでみると、あまりにも楽しくて感動しっぱなしで、さらに旅に出たくなったんです。当時は、旅作家になりたいとかそんなことは一切思っていなくて、ただただ無性に旅をしたくなりました。年齢的にも30歳を前に一区切りとなるタイミングだったし、書籍の仕事もやるべきことはやりきったというぐらい働いていたので、20代にしかできない世界一周の旅をしてみたいと思い、会社を退職することにしました。

――2011年、29歳で会社を退職し、世界一周旅行を実行されますが、どんな準備や注意を?

複数のワクチンを打ち、外務省が出している危険地域を事前に調べて気をつけるようにしました。夜は早くホテルに帰ったり、危ない地域ではタクシーはホテルに呼んでもらったものにしか乗らないようにしました。当時はスマホを持っていなかったので、切り取って持っていったガイドブックを頼りに移動し、わからなくなったら現地の人に聞いてホテルを探すといったアナログな旅の仕方でした。

あとは海外の友人らの家にしばらく泊めてもらったり、パリでは数カ月とどまって語学学校に通ったりしていました。400万円ほどためて旅に出ましたが、旅先でたくさんの人たちに助けられて、なんだかんだ半分近くは残ったので、帰国後もしばらく助かりました。

――1年間世界一周を旅して価値観などは変わりましたか?

昔は人に対して好き嫌いはありましたが、世界中の多様な環境や生き方を目にしたことによって、寛容になれたと思います。それぞれの育ってきた環境や仕事、暮らしによって、さまざまな考え方があって面白いなと客観視できるようになりました。それは帰国後、日本で仕事するようになって新たな人間関係を築く上でも役立ちました。前よりは人見知りもなくなって、また他人に対する偏見や思い込みがだいぶなくなったことで、よりいろいろな人と出会ってみたいと思うようになりました。

旅で書きためた原稿を持ち込み作家デビュー

――帰国後、どのようにして仕事を作っていったのでしょうか。

インドに滞在していた頃、フランスに行くためのビザを取得しようと一度日本に帰国することになりました。帰国した際、1年間の旅のことをまとめていた膨大な量の原稿を、前職でなじみのあった幻冬舎に持っていったのです。編集担当が読んでくださって、結局3カ月分のアジアの旅だけに絞って書き直し、2014年7月に『恋する旅女、世界をゆく――29歳、会社を辞めて旅に出た』という最初の本を文庫で出版し、作家デビューを果たしました。

――フリーランスとして働くことに不安などはなかったのでしょうか。

仕事やお金の不安よりも、最初は私のような生き方を理解してもらえないことがつらかったです。旅しながら原稿を書いて生活していくということに対して、「お気楽でいいわね、そんなので生きていけると思っているの?」といったネガティブな反応が多かったです。世界に目を向けると、好きなことを仕事にして自由に生きている人はたくさんいるのに、特に日本は「○○すべきだ」といった働くことに対する固定概念が、当時はまだ色濃く残っている気がしました。

――目標や計画を立てて道を切り開いてきたのでしょうか。

いえ。初めの頃はとにかく最初の本を出版することに集中していました。最初の本が出てからは、さらに書いたり撮ったりする機会が増えていきました。旅先の魅力や旅の素晴らしさを伝えたい一心でしたが、そのうちそうした一方通行の「発信」ではなくてもっと現地の人との交流や感触を何か形にできないかとも思ったのです。そのきっかけが日本の島での人との出会いでした。

古民家で島に人呼ぶ「ゲストハウスひるねこ」プロジェクト

――島の人との出会いで、形にしたものとは?

2014年、瀬戸内海の島旅に出かけたとき、瀬戸内海に浮かぶ島、香川県丸亀市の讃岐広島にある人口25人の集落、茂浦で島の人々からおもてなしを受けました。そこで、島がこのままでは無人島になってしまうという話を聞いて、東京に戻ってからも何かできないかと考えていました。島には宿も食事処も観光名所もありません。ただ、空き家がたくさんあったので、古民家を再生してゲストハウスを作ったらどうかと思い、島プロジェクトという企画書を作って、1カ月後に再び島に戻って島の方々にプレゼンしたのです。1泊で帰るつもりが結局数泊もして、島のいろいろな人とお話ししました。

――その後は、すんなりゲストハウスプロジェクトは進んだのでしょうか。

いえいえ。再生する空き家は築60年くらいで、もちろん行政の助成金などは一切なく、空き家を再生する経験もないので、当時65歳前後の島民の皆さんの強い思いに付き動かされて、私も毎月島へ通って、さらに友人らにも声をかけて古民家の片付けなどしました。今思うとさまざまな苦労がありましたが、2015年6月に念願のゲストハウスひるねこのオープンまで何とかこぎつけることができました。お披露目の日は大漁旗が掲げられ、茂浦の港に周辺の島の自治会長などが自分の船に乗って集まってくれました。とても感動的で、島の人たちとの絆も生まれたような気がします。

今は丸亀市に委託され、プチ離島暮らしが体験できる「週末島旅学校」を開講するなど、島おこし活動を続けています。いろんな人が島に訪れてくれて、いいところだと言ってくれるたびに、島の人たちの自信につながっているように思いますね。

――島の人たちとの絆はさらに深まっているのですね。

今は旅コミュニティ、オンラインサロン「しま、ねこ、ときどき海外」を運営し、みなさんとさまざまな島旅を企画したりイベントを開いたりしています。また、ゲストハウスひるねこを立ち上げた経験から、空き家が多い島を再生させるご相談を頂くことも多くなりました。

そんな島おこし活動を見てくださったのか、日本旅客船協会の「船旅アンバサダー」に任命され、先日、国土交通相、海事局長および観光庁次長を表敬訪問させていただきました。想像もしていなかった仕事の広がり方ですが、ありがたい機会なので、インバウンドをはじめ広く一般の方々に船旅はもちろん、船で行く島の魅力や楽しさも伝えられればと思っています。

いろいろなことに手を出しているように見えますが、私にとっては全てがつながっていることでとてもナチュラルに生きている感じがあります。旅と猫と島とカメラ。そこで出会う人と仕事して、ものづくりをして。ずーーっと、好きなものからブレないで生きていたら、流されるように世界が広がっている感覚です。だから、「1年後」何をしているかがまったく想像できないのですが、それが私らしい生き方なのかなと思っています。

小林希
1982年東京都生まれ。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。1年後帰国し『恋する旅女、世界をゆく――29歳、会社を辞めて旅に出た』(幻冬舎文庫)で作家に転身。現在も旅しながら、旅、島、猫をテーマに執筆を続ける。また瀬戸内海の讃岐広島に「ゲストハウスひるねこ」をオープンするなど島プロジェクトを立ち上げ、地域おこしに奔走する。

(インタビュー・文 高島三幸)

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