ハーレー・ローライダーS 怪力Vツイン「孤高の狼」

2020/1/19
足まわりではフロントにφ43mmのシングルカートリッジ倒立フォークを採用したほか、フレームレイク角を30度から28度に変更。よりスムーズでレスポンスのいいハンドリングを追求している

「ミルウォーキーエイト114」はまさに怪物

さて、最新のローライダーS。採用されるエンジンはかつてのような特別版ではなく、他のモデルにも使われているミルウォーキーエイト114だが、そもそもこいつは「こんなものをレギュラー化していいのか!」と机をたたきたくなるような化け物だ。

114とは排気量を示す数字。単位はキュービックインチで、耳慣れた単位に直すと1868cc(ちなみに通常版ローライダーは1746cc)である。そのトルクは同排気量クラスの四輪ガソリンエンジンに匹敵する155N・m。バイクではまずやらない2速発進を試したら、すんなりクラッチがつながった。もちろん、スロットルをうかつに開けるとあなたは瞬時にロケットマンになれる。いや本当、思いっ切り開けると冗談ではなく後方へふっ飛ばされそうになるのでご注意を。その一方で、強大なトルクは走りの余裕となり、街中ではちょいとアクセルをひねるだけで楽に流せる。

通常版とは足まわりでも差異を設けている。フロントブレーキはABS装備のデュアルディスク。フロントフォークは剛性の高い倒立式で、レイク角は通常版の30度に対して28度に設定されている。「よりスポーティーなハンドリングを」ということなのだろうけれど、そうはいっても、さすがにこの車格と排気量でビュンビュン切り込む勇気はなかなか持てない。ただ、試乗の際、思いのほか操作系に重さを感じなかったのは事実だ。

「ソフテイル」や「ツーリング」「トライク」「CVO」と、ハーレーの中でも上級モデルに搭載されるVツインエンジン「ミルウォーキーエイト」。「107」と「114」の2つの排気量が用意されており、「ローライダーS」には大排気量版の114が搭載される
「ローライダー」がタンデムシートの2人乗りなのに対し、「ローライダーS」ばバックソロシートを装備した1人乗りとなっている。加速の際に、しっかりライダーのでん部を支える形状が特徴

強大なトルクを独り占め

とまぁ、ここまで紹介しておいてなんだが、このバイクについてはスペックに関してあれこれ口にするのはヤボだと思う。なぜならハーレーは、バイクの中でも特に“嗜好(しこう)品の類い”と言っていい代物だからだ。その中でもローライダーSは、おそらくハーレー史上最もバランスの取れたデザインであろう元祖ローライダーのスタイルを踏襲し、なおかつ至る所をブラックで締めた“おとこ気”に満ちたモデルなのである。

およそ300kg(!)という重さを感じさせない、力強い加速と操舵フィールが印象的だった「ローライダーS」。しかしその魅力といえば、やはり初代「ローライダー」直系のスタイリングにとどめを刺すだろう

蛮行と呼ぶべき設定はソロシートだ。普通乗用車なら5人で共有できるトルクを独り占め。それを(お値段250万円にもかかわらず)家族を説得した上で手にできるなんて人は、この世知辛い世間に残るヒーローだ。平日は社会の一員として然(しか)るべき立場と役目を全うしつつ、週末には黒一色をまとった不良を装う。そんな姿を平日の姿しか知らない誰かに見られたら絶対モテる。ギャップ萌(も)えだ。ハーレーには、そういう演出機能が備わっている。そういう大人になりたい。なれたら「孤高のローンウルフ」と呼ばれたい。でもって、「孤高とローンがカブってるよ」とツッコみたい。

(ライター 田村十七男)

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2355×850×1160mm
ホイールベース:1615mm
シート高:690mm
重量:295kg
エンジン:1868cc 空冷4ストロークV型2気筒 OHV 4バルブ
最大トルク:155N・m(15.8kgf・m)/3000rpm
トランスミッション:6段MT
価格:244万0900円

[webCG 2019年12月19日の記事を再構成]

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