検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

独仏のおいしさいいとこ取り 華麗で豪快アルザス料理

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

2016年、フランスはそれまであった22の地域圏を13に再編、一部の地域圏は統合などにより名称が変更した。そうした中、パリを中心としたイル・ド・フランス地方に接するフランス北東部のシャンパーニュ=アルデンヌ、ロレーヌ、アルザス地方は、新たにグラン・テスト地域圏として出発。

「これまで海外からの旅行者は、パリからニースなど南フランスを周るのが主な観光ルートだったが、地域圏としてまとまったことで、これからはブルゴーニュ、ボルドーと並ぶワイン産地であるシャンパーニュとアルザスを有するグラン・テストへの観光ルートの拡大が期待できそうだ」と19年秋来日したグラン・テスト地方圏議会議長ジャン・ロットネールさんは話していた。特に注目が高まりそうなのが、ドイツやスイスと国境を接するアルザス地方。ドイツ領だった時期もあり、食文化でも同国の影響が強い地方だ。

09年、東京・浅草橋でアルザス料理店「ジョンティ」をオープンしたラ・スール オウミヤ社長の富田裕之さんも、最近、アルザスへの関心が高まってきていると肌で感じている。「今でも『アルザスってどこ?』というお客様は多いのですが、この頃は現地のお薦めレストランを尋ねるなど、実際アルザスに行ってみたいという方が格段に多くなりました。もう何十組にもなります」と言う。

富田さんとアルザスとの出合いは、フロアスタッフとしてワインの品ぞろえが豊富な和食店に勤めていたときのこと。フランスワインの魅力に目覚め、同店で働きながら20代前半でソムリエの資格を取得。フランスにワインの勉強をしに行く機会を得た。2度目の渡仏で、以前ボルドーやシャンパーニュといったワインの銘醸地を訪れたことはあったが、アルザスは初めて。同地に足を踏み入れると、それまで抱いていたフランスのイメージとはまるで異なる景色が広がっていたと言う。

「うわ、なんだここ」

目に飛び込んできたのは、フランスの他の銘醸地とは異なり、ドイツ風のカラフルな木組みの家が並び花々が窓を飾るかわいらしい街だった。「ワインもスレンダーできれいな瓶に入っていて、花のような香りのものもある。ところが料理は、うってかわり飾り気がなくて武骨。しかもすごいボリュームで出てくる。そのギャップが楽しかったですね」と富田さんは振り返る。

アルザスワインは、ボルドーやブルゴーニュに比べ、華やかで優しい甘味を持つワインが多い。同地を訪れる前に日本でも飲んだことはあったが種類も限られ、「好きなワインだ」とは思ったものの強烈な印象はなかったという。しかし、現地で幅広い味わいに触れ、風景と共にぐっと心をつかまれた。

アルザスワインは、9割方が単一品種から造られる白ワインだ。代表的な品種はリースリング、ピノ・グリ、ゲヴェルツトラミネールなど。「研修旅行の際、リースリングを30年ほど寝かせたワインを飲ませてもらったら、若いワインにはないバターやナッツの香りが出てきていました。料理や街の雰囲気に加え、この地域のワインにこうした奥深い世界があると知ったことが、アルザス料理の店を開く契機となりました」と富田さんは説明する。

和菓子店を営んでいた家に育った富田さんは、小さい頃から自分の店を持つのが夢だった。パティシエの経験があり、積極的に調理場の仕事も手伝っていたという富田さん。アルザスに飛んでは現地の料理を食べ歩き、自分なりのレシピを作り上げていった。店をオープンしてからは、短期で現地レストランの厨房で働かせてもらい、料理に磨きをかけたという。

特に富田さんがよく足を運んだのは、リクヴィールやカイゼルスベルグなどといったアルザスの小さな村々。ワイナリーにも近い場所で、地元の人でにぎわうレストランでは、大きな観光地ではなかなか出合えない、素朴ながら手をかけた料理が出てきたからだ。

そんな村料理の味に習った「ジョンティ」では、ベーコンやソーセージまで手作り。現地で最もポピュラーな料理の一つ、フランス版ピザの「タルトフランベ」には、桜のチップでいぶしたベーコンをトッピングする。一方、バターを加えて作る生地は手間暇をかけ3次発酵(3回発酵させること)させる。こうすることで生地が紙のように薄くのび、パリッと焼き上がるのだ。最初に食べたとき、「シンプルなのにこのうまさはなんだ!」と富田さんが衝撃を受けた料理だ。

タルトフランベは、生地の上にフロマージュ・ブラン(酸味のあるフレッシュタイプのチーズの一種)と生クリーム、ナツメグを合わせたソースを塗る。トッピングはバリエーションに富むが、ベーコンとタマネギをのせたものが大定番。「ジョンティ」で焼き上がりが運ばれてくるとしっかりとしたくん香が漂い、一気に食欲がわいてくる。その香りをさかなにワインが飲めそうだ。

もう一つの看板料理は「シュークルート」。塩漬けにして発酵させたキャベツとソーセージやベーコン、豚スネ肉などを煮込んだ料理だ。シュークルートは塩漬けキャベツの名称でもあり、日本で親しまれているドイツのザウアークラウトと同様のものだ。

料理には、先のベーコンのほか、手作りソーセージや、丸1日マリネをした塩漬けの豚スネ肉を使う。現地のシュークルートは、塩漬けキャベツの酸味が強くでたものが多いが、「ジョンティ」では自家製ラードや豚スネ肉から出るだしなど、たっぷりとした豚肉のうま味でキャベツの酸味を包み込み、味のバランスを整える。

シュークルートに合わせる定番ワインはリースリングだが、「うちの料理は、南国フルーツを思わせる味わいのワインが多いピノ・グリの方が合います」と富田さん。肉々しい極太ソーセージに分厚いベーコン、スネ肉の塊に皮つきジャガイモが添えられたボリューム満点の料理だが、ワインと交互に食せば意外にさっぱり。いつの間にかペロッと食べ切ってしまう。

驚くのは、シュークルートに添えたマスタードも手作りであること。種子をすりつぶし、酢や塩で味を整える。食べ慣れた瓶詰マスタードとは異なり、まろやかで、おろしショウガのような食感がある。酒の当てにしたいと、このマスタードを所望する客もいるそうだ。

ちなみに、お気づきのようにアルザスでは肉料理でも合わせるのは白ワイン。同地の料理によく使われる豚肉は赤身肉の分類ながら、そもそも白ワインに合う白身肉の味わいがあるが、「しっかりとした赤身の肉でも少し甘い白ワインなどが合います。普段は重厚な赤ワインがお好きなお客様が、お帰りになる頃『こんなに白ワインが料理と合っておいしいとは思わなかった』と気付いてもらえることが多いですね」と富田さん。単一品種のワインが多いため、様々な品種の飲み比べをして、各ブドウの個性をとらえやすいところも、アルザスワインの愛好者が増えている理由だろう。

同店では、ワインをグラスではなくボトルでオーダーする客が多く、7、8割のテーブルにボトルが置かれる。1本5000円前後と頼みやすい価格にしているのも人気の理由だ。そうしたアルザスワイン普及の功績が認められ、富田さんは10年、アルザス地域のワイン普及にかかわる団体、コンフレリー・サンテティエンヌ・ワイン騎士団より「シュヴァリエ(騎士)」の称号を受けた。これからは、「楽しかったアルザス旅行を思い出したい」と同店を訪れる客が増えていくに違いない。

(フリーライター メレンダ千春)

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_