官民ファンド、深刻なガバナンス不全(安東泰志)ニューホライズンキャピタル取締役会長

ガイドラインには多数の政策目標が示されているが、官民ファンドが国民という投資家に対する忠実義務を負っているのであれば、政策目標が忠実義務を阻害することにもなりかねない。A-FIVEなど損失が出ているファンドは政策目標のために国民という投資家への忠実義務を怠っていることになる。産業政策が目的ならファンドではなく、国会で審議して予算措置を取るべきだ。

ちなみにJICは産業革新機構(INCJ)を傘下に入れる形で発足し、JICの投資回収率は2.5倍となっている。しかし利益のほとんどは国策の事業再生案件であるジャパンディスプレイとルネサスエレクトロニクスへの投資を一部回収した分だ。両社は現在経営不振に陥っており、残った出資を回収できるかどうかは不透明感が強い。本来の目的であるベンチャー投資については、経産省の資料によれば投資回収時に数十億円の損失が発生している。

PEの育成に力を入れるべき

そもそも「損をしなければいい」という発想が間違いだろう。平成のおよそ30年間で家計部門の金融資産は約900兆円増えて約2倍になったが、公的債務もほぼ同額増えている。

極端な仮定だが、国が民間の資金を吸い上げて非効率に運営するのではなく、PEが全額を年率15%で運用したとすると、家計部門の金融資産は66倍になったという計算が成り立つ。

国はこれ以上民間に介入せず、官民ファンドに投下する資金があるなら、中小企業基盤整備機構など通じてPEを育成する方向に舵(かじ)を切るべきではないだろうか。

安東泰志
1981年に三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行、88年より、同行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。2002年フェニックス・キャピタル(現ニューホライズンキャピタル)を創業。三菱自動車など約90社の再生案件を手掛ける。東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。事業再生実務家協会理事。
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