官民ファンド、深刻なガバナンス不全(安東泰志)ニューホライズンキャピタル取締役会長

数億円程度の出資要請のためでも運用責任者などが投資家に日参し、過去の投資1件1件について微細な点まで資料を提示する。先に述べた(1)~(3)について数百項目に及ぶ質疑応答を求められ、他の投資家に聞き取り調査をされることさえある。まさに「地べたをはいずり回る」ような苦労をして資金を集めているといっていいだろう。ファンドを組成したあとも運営会社は各投資案件について丁寧な説明責任が課されている。

「損をしなければいい」官民ファンド

これに対し官民ファンドのガバナンスは、「官民ファンドの運営に係るガイドライン」に沿って、閣僚会議の下に関係府省と有識者からなる「官民ファンドの活用推進に関する関係閣僚会議幹事会」を置き、検証を行うとされている。

しかし、この仕組みで各官民ファンドの幹部は民間の運営会社と同じように投資家からのプレッシャーを受けるだろうか。官民ファンドの投資家は言うまでもなく国民であるが、官民ファンドの幹部は国民に頭を下げてファンドを募集するわけではない。PEの幹部が地べたをはいずり回るようにして出資を募るのに対し、官民ファンドは、いわば「天から降ってきた巨額のお金」を運用していると表現してもいいかもしれない。

JICで経産省と対立した当時の社長はPEファンドでのトラックレコードがなかった。政府保証を含めて約2兆円もの国民の財産を運用するのに、なぜ社長に選任されたのだろうか。また、高額な成果報酬を求めたとされる一方で経営陣の自己資金投資はゼロ、ハードルレートもクロウバック条項も存在しないなど投資に失敗したときの責任も不明確だった。

官民ファンドは収益性についてのKPI(目標値)があるが、多くの官民ファンドでは驚くべきことに「出資金を全額維持できる収益性確保」「1.0倍超」、つまり「損をしなければいい」という目標を示している。民間事業会社の自己資本利益率(ROE)目標は10%台、PEファンドの収益率(IRR)目標は20%に設定するのが一般的だ。官民ファンドは資本市場が通常求める収益率に満たない企業を支援することになる。これでは産業の新陳代謝は進まないだろう。

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