「誰もが結婚」前提崩れる 生涯未婚率の名称変更ダイバーシティ進化論(水無田気流)

2019/12/28
写真はイメージ=PIXTA
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今年5月、政府は50歳までに一度も結婚したことがない人の割合を指す「生涯未婚率」を「50歳時未婚率」に表現を変更したという。晩婚化・非婚化やライフスタイルの多様化など現状を鑑みた決定とのことだ。

この統計は国勢調査の結果をもとに、国立社会保障・人口問題研究所が45~49歳と50~54歳の未婚率の平均値から計算している。50歳を過ぎると女性の妊娠可能性が低くなることを念頭に、結婚と出産は結びつくとの考えから算出された。

時系列で見ると、男性の50歳時未婚率は1990年の5.57%から2010年には20.14%と4倍近く伸び、15年に23.37%となった。一方女性は1990年に4.33%だったが10年は10.61%、15年は14.06%だ。共に増加しているが、とりわけ男性が著しい。

この状況を反映してか、06年にはフジテレビ系ドラマ「結婚できない男」がヒットし、今秋には続編が放映された。その名も「まだ結婚できない男」。阿部寛氏演じる、優秀な建築家だが生活全般への美意識もこだわりも強く、何より独りが大好きという、結婚には不向きな主人公・桑野信介をめぐる騒動を描いた作品である。

前作は信介も40歳になったばかりで、恋愛対象となる女医とのやりとりがストーリーの中軸を担っていた。だが今作で彼女と破局したらしいことが明らかに。すでに信介は53歳。変人ぶりにも磨きがかかっている。きれい好きな彼は、整理整頓が行き届いた高級マンションで快適に暮らす。高級レストラン並みの料理を自分だけのために作り(北京ダックをきれいに焼き上げたときには、軽い目まいを覚えた)、1人でそれはそれは幸せそうに食べている姿は圧巻だ。

私見ではこのドラマ、もはや既存の恋愛ものの域を超え、50代独身生活満喫男性の生態観察と化している。そこにあるのは「結婚しないと不幸」という社会通念への、ささやかな抵抗のようにも見える。

考えてみれば「未婚」という言葉自体、いずれ誰もが結婚することを前提としたものだが、今日それは統計的にも妥当ではない。結婚が出産の「ため」のものであり、人口増に寄与するはずとの発想から生まれた「生涯未婚率」の術語も、旧来の価値観から生まれたといえる。今後は「未婚」に換えて「非婚」の語を使用すべきだと考えるが、いかがだろうか。

水無田気流
1970年生まれ。詩人。中原中也賞を受賞。「『居場所』のない男、『時間』がない女」(日本経済新聞出版社)を執筆し社会学者としても活躍。1児の母。

[日本経済新聞朝刊2019年12月23日付]

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