令和元年に「暦」のうんちくを語る

19年には平成から令和への改元があり、1つの時代が終わりました。実は、元号を使用しているのは世界で日本だけです。中牧弘允『世界をよみとく「暦」の不思議』(イースト・プレス)を読んで、年越しの時期に日本文化と暦について考えてみませんか(参考記事 明治政府はなぜ旧暦を捨てた? 暦でわかる世界の文化)。暦はその国の歴史や特徴、個性を映し出している鏡のようなものです。例えば、ボスニア・ヘルツェゴビナには祝祭日の記載が一切ないカレンダーが出回っています。多民族多宗教がそれぞれ暦を持っているから、争いを誘発しないようにという知恵だとか。逆の発想がインドネシアで、各宗教の祝祭日を全部入れています。これは「寛容なカレンダー」と呼ばれているそうです。暦というと絶対に揺るがないもののように思えますが、本当はそうではなくて、時や場所とともに変化してきている。その柔軟さにわくわくしてきます。

『最後の一文』

半沢幹一『最後の一文』(笠間書院)は、小説が好きな人も普段あまり読まない人も満足してもらえること間違いなしの一冊です(参考記事 書き出しが有名な小説 「最後の一文」を味わう読み方)。古典的名著から現代作品までが紹介されていて、最初にその小説の「最後の一文」が書いてあります。次いで、書きだし一文も紹介しています。その2つを比べながら解説を読むと、作家が考え抜いた書き出しと締めくくりの響き合いが胸に迫ってきます。著者によるナビゲートも丁寧で、あらすじ紹介としても充実の内容。夏目漱石や東野圭吾といった有名作家が、どんな意図で物語を創作したのか――。それが如実にあらわれる最後の一文はまさに読書のうまみが凝縮。小説の新しい読み方を教えてもらいました。

最後は、11月下旬に発売されたユヴァル・ノア・ハラリ『21 Lessons』(柴田裕之訳、河出書房新社)です(参考記事 『ホモ・デウス』著者が挑む 人類を揺らす21の課題)。あまりにも複雑になってしまった人類の苦境を淡々と描き出す本書は、正直にいうと怖い話が次々と出てきます。ITだけでなくバイオテクノロジーが同時に進化することで、人間の体や遺伝子、脳の仕組みを理解したうえで、センサーで私たちの生体反応などのデータを集めるようになる。それによって人間の意思決定がたやすくコントロールされてしまう――。こんな具合です。

この本の特徴は、通常のビジネス書では得られない読書体験を与えてくれる点です。問題があって、その答えを求めて読むのが仕事のための読書です。でもハラリ氏は、膨大な情報の渦中に読者を放り出します。文章中に問いかけも多く、頭の中に「?」がたくさん浮かんで終わり、という感覚です。「戸惑う」「圧倒される」「考え抜く」という体験も、読書の醍醐味ではないでしょうか。ぜひ、年末年始に挑戦してみてください。

情報工場 エディター 安藤奈々
8万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部で、自らがひらめきを与えられながらコンテンツ作成、編集に携わっている。1年半の育休から2017年4月に復帰。おんぶが大好きな娘に100%応え、疲弊する日々を送っている。神奈川生まれ千葉育ち。早稲田大学第一文学部卒。
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