チャールズ・A. オライリー, マイケル・L. タッシュマン『両利きの経営』(入山章栄監訳、渡部典子訳、東洋経済新報社)は、現代のビジネス人にとって必読の経営書と言えるでしょう(参考記事 医薬でも強い富士フイルム イノベーションが続く理由)。イノベーション理論として欧米では広く認知されるようになった「両利きの経営」について初めて体系的に紹介した書籍です。この経営論のキーワードは知の「深化」と「探索」。既存事業を深化させながら新規事業(イノベーション)の可能性を探索する戦略について詳しく解説しています。代表的な成功例として挙げられているのは日本では富士フイルムです。フィルムの売り上げが急下降し始めたタイミングで、自社の独自技術を新しい製品・サービスに応用する探索を行いました。デジタルトランスフォーメーションで既存の技術が急速に陳腐化する時代に、あらゆる業界で「両利き」が求められているようです。

専業主婦にも共働き女性にも「生きづらさ」

『なぜ共働きも専業もしんどいのか』

働く女性が増える時代の陰の部分をルポした中野円佳『なぜ共働きも専業もしんどいのか』(PHP研究所)は、多くの読者に自分事として読んでいただいたようです(参考記事 共働きも専業も、疲れ果てる主婦たち 日本の息苦しさ)。「女性活躍」の旗印のもと「ワーママ」や働く主婦ばかりが注目されがちですが、本書は「専業主婦という生き方も決して安楽ではない」と指摘します。働いているかいないかを問わず家庭を持つ女性たちの苦しい状況を描くことで、旧態依然とした日本社会の現状を浮き彫りにします。女性も、そして男性も誰もがしんどく、読んでいて気がふさいできます。私自身、幼い子どもの育児をしながら時短で働いています。本書を読んで「仕事と家庭を完全に分けてきたひずみだな」と強く感じました。生活が「仕事」「家庭」という区分では立ち行かなくなっている気がします。

「ワークライフインテグレーション(統合)」という言葉も聞くようになりましたが、仕事と家庭が地続きであることを、もっとオープンに認めていく社会になっていくのかもしれません。このような時代に、男性の側ではどんな意識改革が必要なのかを教育の現場から考えさせてくれるのがおおたとしまさ『21世紀の「男の子」の親たちへ』(祥伝社)です(参考記事 名門校ではご法度 親の勘違いが生む「経験泥棒」とは)。男子校といえば「男らしさ」を学ぶ場所。では「男らしさ」とは何なのか? グローバル時代を生き抜く上で必要なのは「男であることに捉われないこと」だというメッセージが鮮烈です。「男だから」というバイアスを取り払う教育の最先端を、開成、灘、麻布といった名門男子校で教えている教師たちへのインタビューを通じて、教育ジャーナリストが紹介しています。

ファッションを通じて昭和・平成から令和への時代の変化を読み解くのが米澤泉『おしゃれ嫌い』(幻冬舎)(参考記事 ユニクロが売れる理由 「おしゃれ嫌い」がトレンドに)。なぜ、ユニクロが売れ続けているのでしょうか。著者はその理由を「おしゃれ嫌いこそ本当のおしゃれだから」と説明します。人より値段の高いもの、珍しいもの、格好いいものを身につけたい――。昭和時代のおしゃれとは、人との競争でした。でも今は「自分らしいくらし」「ていねいなくらし」が優先される時代です。赤ちゃんからおじいちゃん、おばあちゃんまで心地よく着られるユニクロが、今の価値観にフィットしたのだそうです。また、ユニクロブームにはSNSも一役買っているそうで、ファッションからこれほど時代性が読み解けるのには驚きました。これから迎える2020年代にはどんなファッションが流行するのでしょうか。そんなことを考えながらページをめくってみてください。

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