宴会…飲み放題の落とし穴 酒量は約2倍、増えるケガ少量飲酒のリスク(下)

日経Gooday

飲酒は小分けにして、休肝日も設けるのが理想的

写真はイメージ=(c) Donato Fiorentino-123RF

少し安心したところで、次に、現況の日本の基準である「1日に20g」、週に換算すると140gになるが、この140gをどのように飲んだらいいのか。もう少し突っ込んだ話を吉本さんに聞いてみた。

「飲み方には個人差があるので、『これじゃなきゃダメ』という決まりはありません。自由度がある程度あったほうが長続きしますから。できれば、休肝日をきちんと作りつつ、140gを小分けにして飲むようにするといいですね。休肝日は肝臓を休めるという目的もありますが、酒量を自分でコントロールできることを示すためにも設けることをお勧めします」(吉本さん)

つまり、週140gだからといって、1日、2日でそれを一気に飲むことは避けて、酒量を分散させる。ただし、毎日は飲み続けずに休肝日も設ける、ということだ。これならそう無理せずとも実践できそうである。なお、「女性や高齢の人、そして顔が赤くなる人はより飲酒量を減らしてください」と吉本さんは話す。

前述したように、1日60gを超えるような飲酒は健康リスクがあるのはもちろんだが、それに加えて、「飲んだ翌朝に飲酒運転にならないためにも、多量飲酒をしないようにと指導しています」と吉本さん。

当シリーズの飲酒運転の回(「二日酔いの朝は運転NG どれだけ時間空けるべき?」)でも紹介したが、日本アルコール関連問題学会などのアルコール薬物関連の学会は、体内におけるアルコールの分解速度は1時間に4gとして、飲酒したら、運転するまでに「飲酒量(g)÷ 4」時間以上待つように、というガイドラインを出している。もちろん分解能力には個人差があるわけだが、この基準だと、多量飲酒の基準とされる60gを飲んだ場合、約15時間かかる計算になる。夜の10時ごろまでこの量を飲んでいたら、翌日の午前中はまだ酒が残っている人もいるわけだ。

実際、吉本さんの診療の場に、日中であってもお酒が残っている人が来ることがあるという。「呼気チェックをすると完全に飲酒運転レベルです。お酒が残って臭い人もいますが、ほとんどの人は呼気チェックしないと本人も他人も分かりません。最近では、飲酒運転への目が厳しくなっています。飲酒運転で捕まったことが原因で、社会的地位を失うことを避けるためにも、夜遅くまでの多量飲酒は控えてください」(吉本さん)

確かに、朝の電車で、いかにも「夜遅くまで深酒していました」と思わしき酒臭い人と遭遇することがある。これもまた社会的信頼を失う要因にならないかと余計な心配をしてしまう。

また、吉本さんが休肝日の設定を強く勧めるのには、こんな理由もあるという。

「休肝日を設けることなく、毎日飲む人の中に『夜、眠れないから寝酒代わりに毎日酒を飲む』という方がいます。お酒を飲むと寝入りばなは確かに良くなりますが、アルコールには覚醒作用があるので、睡眠の質は悪くなります。この場合、お酒の力を借りて無理やり眠るのではなく、睡眠の専門医に診てもらうなど、不眠を根本から解消することが先決です」(吉本さん)

確かに、私の周囲にもウイスキーやジンなど高アルコールの酒を寝酒として毎晩飲んでいる人がいる。しかしよく聞くと「寝酒」とは言えないレベルの量なのだ。それを本人に指摘すると、「体がアルコールに慣れてしまったのか、徐々に量が増えてしまった」と話していた。中には「酒と睡眠薬を併用しないと眠れない」という人も…。こうなるとアルコールではなく、確実に睡眠の専門医やアルコール依存症の専門家の力が必要である。

「飲み放題」はやっぱり飲み過ぎる

さらに、吉本さんは、「短時間で」大量に飲むのは避けてください、と話す。最近耳にするようになってきた「ビンジ飲酒(Binge Drinking)」である。「Binge」とは何かを過度に行うことを意味する英語、つまりビンジ飲酒とは、短時間に多くのお酒を飲むことで[注2]、その極端な例がいわゆる「イッキ飲み」ということだ。

吉本さんたちの研究グループは、国内の大学生2177人を対象にビンジ飲酒の調査を行っている(Tohoku J Exp Med. 2017;242:157-63.)。そこで、驚くべき結果が出た。

写真はイメージ=(c)wang Tom-123RF

「ビンジ飲酒をしていた人は、そうでない人に比べ、ケガを起こすリスクが25.6倍も高かったという結果が出ました。短い時間の間に、ガンガン飲むのは危険なんです」(吉本さん)

最近では、イッキ飲みのリスクが知られるようになっているとはいえ、短時間でガンガン飲む人は少なからずいる。特に、そういう人たちを助長するようなシステムとして、私たちにおなじみの「飲み放題」がある。

飲み会の幹事になると、余計な心配をしたくないこともあり、支払いがシンプルになる飲み放題を選んでしまうケースは少なくないだろう。しかし、飲み放題となると、左党の性として「元を取ってやろう」とつい、いつもより飲み過ぎてしまう。「ラストオーダーでーす!」と言われると、まだ手元に酒が残っているのに意地汚く、「同じものもう1杯!」と叫んでいる自分がいる…。

吉本さんは、飲み放題について興味深い調査をしている(Tohoku J Exp Med. 2018;245(4):263-7.)。関東の31大学35学部の大学生・大学院生(20歳以上)で、飲み放題を利用した511人を対象に、飲み放題の利用と飲酒量を調査したところ、驚く結果が!

「飲み放題では、通常の飲酒(飲み放題ではない)に比べ、飲酒量は男子学生では1.8倍、女子学生では1.7倍も増えていました。さらに、男子学生の39.8%、女子学生の30.3%は、1回の飲み会で純アルコールにして60g以上摂取するという危険な飲酒をしていることが分かりました」(吉本さん)

ああ、やはり飲み放題は飲み過ぎてしまうのだ。

関東の学生511人を対象に、飲み放題利用時と非利用時の飲酒量を比較したデータ。飲み放題の場合は、そうでない場合に比べて、飲酒量が男子学生で1.8倍、女子学生では1.7倍増加した。(Tohoku J Exp Med. 2018;245(4):263-7.)

「世界保健機関(WHO)では、一定料金での無制限飲酒、日本で言うところの『飲み放題』のサービス提供の禁止・制限を提言しています。ところが、日本ではいまだに飲み会の通例となっています。海外の研究者に飲み放題の話をするとみんな驚きますよ」と吉本さんは話す。やっぱり日本は世界的に見て、酒に思い切り寛容な国なのだ。

[注2]この研究で吉本さんは、日本人の体格や代謝能力などを基に、ビンジ飲酒を「2時間での純アルコール換算で男性50g以上、女性40g以上」としている。

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