日経エンタテインメント!

表面上は普通の女子大生を演じていても、心の奥にはいつも“黒い黒島”がいる。その感覚はなかなかぬぐい去れず、「常に二重の感情が走っている感じでした」と打ち明ける。

共同創作であるドラマや映画は、共演者やスタッフとのコミュニケーションが必要不可欠だが、バックステージでの西野はどうだったのか。鈴間氏は「撮影初日は住民会のシーン。でもスタジオの前室(控え室)に行ったら、彼女がいないんですよ。マネジャーさんに「西野さん、どこ行きました?」と聞いたら、「あっちでソロ活動してます」みたいな(笑)。見ると、少し離れたセットの横のところに、1人でちょこんと座っていました」と証言する。

(写真:佐賀章広)

「初日は、なるべく人がいないところに行っていました(笑)。スタジオの前室が、すごく狭かったんですよ。イスも足りなくて、椅子取りゲームみたいになっていて(笑)。『先輩たちがいっぱいいるのに、私が座るわけにはいかない』と思ったので、全然違う場所にいて…。でも少しずつ、みんなの中に入っていけるようになりました。

大きかったのは、奈緒ちゃん(尾野幹葉役)や金澤美穂ちゃん(シンイー役)の存在。2人とは同い年で波長も似ていたので、話しやすかったんです。一緒にいると心強いっていうのもあって、共演シーンがある時は常に一緒にいました。

2人には、お芝居の面でも刺激を受けました。2人ともずっと女優さんでやってきているので、お芝居が上手。奈緒ちゃんが目の前で尾野ちゃんを演じていると、『憎たらしい!』って本気で思うんですよ(笑)。本当にすごいなと思いましたね。

みなさんと仲良くなれたのは、2クールあったからっていうのが大きいと思います。例えば(手塚)翔太役の田中圭さんとも、最初はあんまり一緒のシーンもなく、全然しゃべらなかったんです。黒島が監禁されるシーン(第9話)は2~3日に分けて撮ったんですけど、その間も田中さんとは一言も話してなくて…。それが2クール目に入った頃からほぐれて仲良くなれたので、半年間あって良かったなと思います」

2クール目の「反撃編」では、黒島は304号室の二階堂忍(横浜流星)と距離を縮め、キスシーンも登場する(第18話)。キスの後に「…それで、おしまいですか?」と迫るシーンは、これまでのイメージを覆し、SNSなどでも話題になった。

「意外と積極的でしたよね(笑)。現場でも男の人たちが『言われたい』「キラーゼリフだよね!』と盛り上がっていました(笑)。あのシーンでも、本当の黒島の思惑は、別にあって。その本当の姿が出るのは、最終回の第20話だけなんです。私はてっきり19話の途中から『実は私が黒幕でした』みたいな展開があるだろうと予想していたので、あんなに引っ張るとは思いませんでした。

その最終回の台本をいただいたのは、撮影の3日くらい前。その時は『ふあぁぁー!』となりましたね(笑)。『(黒島が)ずっとしゃべってる』みたいな。とにかくセリフが多くて、何から覚えていいかも分からないぐらい。だから最初に、台本の要素を全部書き出しました。『この話をして、次はこれ、次はこうなって』と全体の流れを一度整理してから、ずっとぶつぶつぶつぶつ、どこでもセリフを言って覚えました。

クライマックスの前半は、翔太とどーやん(二階堂忍の愛称)に犯行を語るシーン。黒島が人殺しや命を軽く見ている感じを表現したいと思ったので、普段通りの軽い感じで話すようにしました。そのほうが、(残虐な)内容との間に、ギャップが出て異様に聞こえるんじゃないかと思って。そして翔太に馬乗りになられて、本当の黒島を解放する場面では…アドレナリンがすごく出ていたと思います。

それまでは、お芝居をしながらも、『次のセリフはこう』とか『カメラがあっちだから今はこう映ってる』とか、常に何パーセントかは冷静に考えていたんですよ。でも馬乗りになられてからは、頭が空っぽになって、何も考えていない状態に。だけど口は動くし、セリフは出るしという、不思議な感覚になって。そんなふうにストッパーが消えたことが初めてだったから、すごく幸せな体験だなあと、うれしい気持ちでいっぱいでした」

この迫真の演技がSNSを沸かせ、「サイコパスすぎる」「西野七瀬の演技の振り幅やばすぎ」といった声があふれた。ツイッターではオンエア中に「#あなたの番です」が世界トレンド1位になり、2位には「#黒島ちゃん」がランクイン。視聴率は第19話の平均12.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)から大幅に上昇して19.4%となり、2019年のそれまでのGP帯(19~23時)ドラマで最高となった。

(ライター 泊貴洋)

[日経エンタテインメント! 2019年12月号の記事を再構成]

インタビューの続きは1月2日に公開します。