犯罪も抑止?ストレス激減 不思議なヨガの科学的効果

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/1/5
ナショナルジオグラフィック日本版

古代インドで誕生したヨガは、現代のストレスを軽くしてくれると、世界各地で実践者が増えている。米国では、健康維持法の一つとして奨励され、悟りを開いたり、さまざまな病気を治療したりする方法としても注目されている。ナショナル ジオグラフィック2020年1月号のテーマ「健康に生きる」では、ジャーナリストのフラン・スミスが、最新の科学的な研究を紹介しながら、ヨガが私たちにもたらすものをリポートする。

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米国フロリダ州にあるジャクソンビル郡裁判所。黒い法衣をまとったエレニー・デルク判事は、法衣の下に派手な柄のヨガ・パンツをはいている。デルクがヨガに出合ったのは25年以上前のこと。当時、彼女はクローン病を患い、激しい腹痛に苦しんでいた。医師からは手術を勧められたが、それは避けたかった。そこで、ヨガの講師をしているいとこに相談した。いとこは、倒立などをする「インバージョン(逆さのポーズ)」を教えてくれた。科学的根拠はないが、体内の毒素を一掃してくれるといわれている。デルクの痛みはすぐに治まった。「ヨガは命の恩人です」と彼女は語る。

デルクは訓練を受けてヨガの講師になり、今では裁判所の芝地で無料の講習会を開いている。裁判の途中に休憩をとり、陪審員たちを立たせてストレッチや深呼吸をさせることもある。だが、デルクが法曹界で有名な一番の理由は、有罪判決を下した受刑者にも、服役中にヨガを実践するよう命じているからだ。

デルクが担当する事件は、万引きや少量の麻薬所持、飲酒運転など、最高で刑期1年の軽犯罪だ。受刑者は「ヨガ4チェンジ」というプログラムを毎週受講すると、刑期を4割以上短縮できる。ヨガは内心の葛藤を鎮め、犯罪行為を引き起こす怒りや不安、悩み、衝動を抑えてくれると、デルクは考えている。

当初は同僚たちから不信の目で見られ、戸惑う受刑者もいたというが、ジャクソンビル郡内の3カ所の刑務所で評価によれば、ヨガのプログラムに6週間参加した受刑者たちは、熟睡できるようになり、体調が改善し、怒りや不安感を抑えられるようになったという。今では新たに2人の郡判事がヨガの受講を勧めるようになった。

ヨガの健康効果を証明するのは難しい。大半の研究は被験者が少な過ぎて結論を出せない。政府や製薬会社などの業界による助成がないことも大きな理由の一つだ。

米ハーバード大学の神経科学者で、ヨガの講師も務めるサト・ビル・シン・ハルサは、ヨガの効果の解明にはまだ長い時間がかかると認める。「それでも、効果は実証済みだといえると思います」。ハルサは不眠症やPTSD(心的外傷後ストレス障害)、不安障害、慢性ストレスに対するヨガの影響を研究し、なかでも慢性ストレスに大きな効果があることを確認している。

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