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自分ができることを目いっぱい

12月は、ドラマの収録にも取り組んでいます。1月3日にTBS系で放送されるスペシャルドラマ『半沢直樹イヤー記念・エピソードゼロ~狙われた半沢直樹のパスワード~』に出演します。来年4月から始まる『半沢直樹』の放送に先駆けてのスペシャルドラマで、半沢が出向する子会社「東京セントラル証券」と関わるIT企業「スパイラル」が舞台のドラマです。

IT企業スパイラルの辣腕プログラマー・高坂役の吉沢亮(中央)と、彼の上司でスパイラル専務・加納役の井上芳雄(右から2番目)

主役は吉沢亮君で、かつてある事件に関わったことで行き場を失っていたのですが、その才能を買われてスパイラルの社員として働いている辣腕プログラマーの高坂という役どころ。僕はスパイラルの専務で、高坂を高く評価している上司の加納という役です。

『半沢直樹』らしい痛快で、胸がすくような展開がたくさんあって、見ていて面白いと思います。「倍返しだ」みたいな、見えを切るような要素もあります。僕の役はそこまで切らないのですが、収録では「ここのセリフは、もっとはっきり言ってもらって大丈夫です」と言われる場面もありました。僕の中では、ドラマというとリアルな演技で、あまり大げさにしないイメージなのですが、今回はむしろ舞台っぽいかもしれません。

舞台がIT企業という、今の時代らしい最先端の業界なのも見どころです。ハッキングされたりとか、戦い方も現代的。もっとも僕自身はアナログな人間なので、IT企業の専務の役といっても、分からないことが多いですが(笑)。役者あるあるで、俳優はコンピューターとかは苦手な人が多いですね。だからこそ、新鮮な気持ちで演じられています。

僕自身のことで言うと、上司の役は珍しいかもしれません。IT企業だから、ばりばりにスーツを着ているというよりは、カジュアルな感じではありますが。最近はリーダー的な役も多くなってきました。40歳になり、年齢を重ねるにつれ、役柄が広がってきた実感があります。俳優はできる役の幅が広い方が絶対にいいと思っているので、やりがいがあります。

12月のある日は、朝からこのドラマの収録でIT企業の専務の役をやり、昼は1月7日に開演するミュージカル『シャボン玉とんだ 宇宙(ソラ)までとんだ』のけいこで悠介というシャイで少し頼りない青年の役をやって、夜はFNS歌謡祭のリハーサルで黄泉の帝王トートを演じました。「自分は何をしているんだろう」と思って、自分を見失いそうになりました(笑)。

1日中ずっと何か表現し続けていて、その形態も、ドラマではセリフで表現して、ミュージカルの舞台では歌って踊って、歌番組では歌だけで表現する。自分ができることを目いっぱいやらせてもらっています。本当にありがたいことです。

井上芳雄
 1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第59回は2020年1月4日(土)の予定です。