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70代まで現役として働きたい。画像はイメージ=PIXTA

70代まで現役として働きたい。画像はイメージ=PIXTA

ミドル・シニア転職が増える傾向にある。経験を生かしたキャリアの再設計は悪い話ではない。しかし『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)を書いた前川孝雄氏は「ブームに乗せられた格好でのミドル・シニア転職は危うさをはらむ」と警告する。失敗しない「最後の働き場所」探しのポイントを教わった。

「衝動的転職」の落とし穴

転職を考え始めるきっかけになりがちなのは、役職定年に伴う収入減や不本意な人事異動の通告だ。「この勤め先にもう居場所はない」といった喪失感が「新天地」を求める転職活動を呼び込む。「50代は不安感を募らせている」と、前川氏はみる。しかしミドル・シニア転職が容易なわけではない。転職先での活躍可能性も予測が難しい。

たくさんの転職者をみてきた前川氏は「一時の思いつきで、50代が転職に踏み切るのはすすめない」という。転職がまずいのではなく、事前の十分な準備を伴わない「衝動的転職」を危ぶむ。なぜなら、転職先の企業は、迎えた人材に早い段階での成果を望むからだ。「転職市場に特有の『こんなはずじゃなかった』というミスマッチが珍しくない」のも、前川氏が慎重な振る舞いを求める理由だ。

バブル期の終わりにあたる1991年の大卒求人倍率は2.86倍(リクルートワークス研究所調べ)と、90年代以降のピークだった。約30年を経て、当時22歳だった人は52歳前後を迎えている。バブル期の大量採用も手伝って社内のポストは不足気味。年齢・社歴が下の上司から指示を受けるケースも増えてきた。「『何もしないおじさん』という言葉が示す通り、社内の風当たりが強くなっている。出世コースに乗り損ねた人たちは悩みも深い」(前川氏)

自分の商品価値を把握する

本書で前川氏が提案しているのは、「定年まで我慢」でも「あきらめて早期退職」でもない、第3のキャリアだ。具体的には50代からの働き直しを選択肢に挙げている。人生100年時代を見据えて、「キャリア後半戦」に自分らしさややりがい、納得感を高める働き方を促す。幼い日に夢見たプロ野球選手や宇宙飛行士は体力的に難しいかもしれないが、野球や宇宙にかかわる仕事には様々なバリエーションがある。財務畑で培った知見を、運営支援の形で生かすような働き方もあるはずだ。

「つぶしがきかない」と悲観してしまう人がいるけれど「30年ほども働き続けた事実が無価値なはずがない」と前川氏は軽々しく見切ってしまう態度を惜しむ。自分のキャリアにきちんと向き合って、客観的な視点から「棚卸し」を試みれば、「それまで意識してこなかった自分の商品価値に気づきやすくなる」(前川氏)。とりわけ、大企業で培った実績は本人が過小評価しているケースが珍しくないという。社内の閉じた価値基準にとらわれていると正常な市場価値からのずれに気づきにくい。

転職市場のニーズをつかめていないと、自分の売り出し方を誤りかねない。その一例が中間管理職の経験だ。課長は務めたが部長にはなれなかった人が、転職にあたって萎縮してしまう必要はない。「スタートアップ企業ではミドルマネジメント層が不足しがち。実務経験の豊富な大企業出身者への採用ニーズは小さくない」(前川氏)。誰もが「社長含み」のエグゼクティブとして転職する必要はない。むしろ、年齢が上がりすぎてしまうと相応の受け皿探しが難しくなる。「50代より前での転職は複数のオファーを期待できる」(前川氏)から55歳まで待つ意味はない。

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