大人も怖い、緑内障のリスク 近視は進行性の「病気」

なお、近視の中には遺伝的要因が主となる「病的近視」という疾患もある。大野教授によると、長期的にみて「黄斑部の出血、網膜はく離(または網膜分離)、緑内障を発症し失明する可能性が高くなる。病的近視は子どものときに、眼底を検査機器で見れば発見できる」という。

病的近視は現在国内で失明の原因第4位の疾患。「病的近視の患者は、失明への不安からうつや不安障害を引き起こしやすい。最終的に失明に至らないよう、眼球の外側の強膜を硬くする治療を現在開発中で、数年以内の臨床応用を目指している」(大野教授)

病的近視=眼球後部が変形が強く、網膜に萎縮が起こる。網膜や視神経にダメージを与え失明リスクが高くなる

[注4]PLoS One. 2019 Apr 26;14(4):e0215827. [注5]Ophthalmology. 2018 Aug;125(8):1239-1250

近視の進行を抑える「3大治療」

近視は成長期の子ども時代に進行する。進行を抑える最新の治療法として、大野教授は以下の3つを挙げる。

(1)低濃度アトロピン点眼薬

アトロピン点眼薬は副交感神経を刺激し、ピント調節をする毛様体筋をゆるめる作用があり、近視進行を抑制する点眼薬として古くから用いられてきた。しかし、通常の濃度では瞳が広がってまぶしさを感じたり、近くがぼやけるなどの副作用がある。「シンガポールの研究者らが100倍に薄めて学齢期の子どもに使用したところ、副作用はほとんどなく、近視進行が抑制された。日本では現在、自由診療だが、数年後には保険適用となる可能性がある[注6]」(大野教授)。

(2)オルソケラトロジー

就寝時に、一時的に角膜の形状を変えて見えやすくするハードコンタクトレンズを装用することで、翌日裸眼で過ごすことができる。日中ソフトコンタクトレンズを装用した患者との比較研究で10年間の近視の進行をみた結果、近視進行が有意に抑えられた[注7]。「およそ6歳以降の子どもに行うことができる。裸眼で過ごせるだけでなく近視の進行も抑えられる、というメリットがある半面、自由診療のため初期費用が高い、親の管理のもと適切に扱わないと角膜感染症リスクがあるなどの注意点もある。大人の近視の場合、近視進行抑制効果のエビデンスはないが、裸眼で過ごせるという目的で治療に用いられている」(大野教授)。

(3)多焦点ソフトコンタクトレンズ

老眼用のコンタクトレンズと同様のメカニズムで、同心円状に、近くを見る部分、遠くを見る部分がある多焦点ソフトコンタクトレンズ。網膜周辺部の焦点のぼけを軽減し、眼軸長が伸びるのを抑える。「こちらも自由診療でコストがかかり、学童期の子どもがコンタクトレンズを管理できるかという懸念はある」(大野教授)。

「近視抑制にいい」とされる民間療法的な方法が話題を集めることもあるが、大野教授は「残念ながら近視進行抑制の十分な根拠はない。日常で近視を進行させない心がけが重要」と言う。以下のアドバイスを、大人も子どもも実施してほしい。

●習慣的に目にするもので、片目ずつ見え方をチェック

道路標識や看板など、習慣的に目にするもので月1回程度、片目ずつで見て見え方をチェック。「両目で見ていると無意識のうちに悪い方の目を補い、片目だけの視力低下に気づかないことがある」(大野教授)

●子どもは年2回、大人は年1回、眼科の定期検診を

子どもは視力が変化しても「メガネが合ってない」とは気づきにくい。「メガネが強すぎても弱すぎても、近視進行の原因になる。夏休みと春休み、など時期を決めてかかりつけ眼科にみてもらい、眼軸長を測ってもらうと近視の進行を管理できる」(大野教授)。大人も年1回は眼科で定期検査を受けよう。

●寝転びスマホはNG

寝転んでスマホを見ると、左右の目がアンバランスな距離で焦点を結ぼうとするため、眼軸長が伸びやすくなる。「適度な距離をとり、正面から見る。スマホではなくタブレットなど、なるべく大きな画面で見る。暗闇でのスマホは、明かりの刺激によって網膜に障害を起こす危険性があるので避ける」(大野教授)。

[注6]Eye (Lond). 2019 Jan;33(1):3-13. [注7]Ophthalmic Physiol Opt. 2018 May;38(3):281-289.

(ライター 柳本操、イラスト 三弓素青)

大野京子教授
東京医科歯科大学医歯学総合研究科眼科学

横浜市立大学医学部卒業。東京医科歯科大学眼科講師、文部省在外研究員(Johns Hopkins大学)などを経て、2014年より現職。強度近視、病的近視において最先端の診療、研究を行い、国内外から患者が訪れる。2016年に日本近視学会を立ち上げ、近視疾患診療ガイドラインを作成。日本近視学会理事長。
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