大人も怖い、緑内障のリスク 近視は進行性の「病気」

なぜ、各国が近視対策を急ぐのか。

それは近視が進行すると、年齢を重ねたときに視覚障害になるおそれも指摘されているからだ。オランダの男女1万5693人を対象にした疫学調査では、近視の程度が強い人ほど年齢とともに視覚障害になるリスクが高いという結果が出た。「強度近視」と判定された人が視覚障害になるリスクは75歳時点までに約4割に達していた[注2]

「近視が強くなると、緑内障は3.3倍、白内障が5.5倍、網膜はく離が21.5倍、近視性黄斑症が40.6倍など、視覚障害の原因になる病気にかかるリスクも高くなる」と大野教授も指摘する[注3]

近視は眼球の前後の長さが伸びてしまう病気だ。「正常な眼球は直径24ミリメートルの球の形をしているが、近視が進行すると前後に伸びてラグビーボールのように長くなることもある」(大野教授)という。眼球が前後に伸びると、角膜と網膜を結ぶ長さ(眼軸長)が伸び、近くは見えるが遠くがぼやける。そこで、遠くにピントを合わせるためにメガネやコンタクトを使用することになる。

「眼軸長は小中学校の学童期に最も伸びるので、近視はこの時期に最も進行しやすいが、現在、学校で行われている裸眼視力を測るだけの検査では正確に近視を把握できない。目の異常を把握するには、眼軸長を測る必要がある」と大野教授。

<近視は「眼球が伸びる」病気>

正視=目がリラックスした状態で網膜にピントが合う
近視=眼軸長が長いため、網膜より手前でピントが合う
<近視の分類>
●弱度近視  -0.5D以上-3.0D未満の近視
●中等度近視 -3.0D以上-6.0D未満の近視
●強度近視  -6.0D以上の近視
※近視の強さは「D(ディオプター)」という単位で示す。これはピントが合う距離をメートル数で表した逆数で求められるレンズ屈折力の単位。裸眼で50センチメートル(0.5メートル)にピントが合っている場合は、逆数は1÷0.5=2となり、近視度数は-2.0Dとなる。Dが大きくなるほど度数が強く近視の程度が進む。

注1]Nature. 2015 Mar 19;519(7543):276-8. [注2]JAMA Ophthalmol. 2016 Dec 1;134(12):1355-1363. [注3]Prog Retin Eye Res. 2012 Nov;31(6):622-60.

「スマホ」と「屋外活動の減少」が拍車

近年の研究でわかってきたのは、近視は遺伝の影響だけでなく、「環境」こそ強く関わっている、ということ。有力視されているのが、スマホやパソコンなどの「近業(目とモノが近い状態で長時間作業をすること)」の増加と、屋外活動の減少だ。

中国で約2万人の小学4、5年生を対象とした調査では、視力とコンピューターやスマホの使用時間、屋外活動、学習時間などのデータを解析した結果、1日60分以上のコンピューター使用およびスマホ使用は近視リスクを高め、正午に30~60分以上屋外で過ごすと近視リスクが下がった[注4]。台湾で約700人の小学1年生を対象に、休憩時間に毎週最大で11時間屋外に出るという取り組みを行ったところ、屋外に出なかった群と比較して、1年後の眼軸長の伸びが有意に少なく、近視の進行リスクが約30%抑制された。その効果は廊下や木陰など強い光がない環境でも発揮されたという[注5]。このような研究の蓄積が各国での「小児の近視予防策」につながっているわけだ。

「スマホはパソコンよりさらに近いものを凝視し続ける、という点で近視進行の最大の引き金となる。近業の刺激が強いと網膜のアマクリン細胞という細胞が画像のぼけを感知し、さらに眼球を伸ばす指令を送ってしまうことがわかってきた。ヒトの目はもともと遠くを見たときにリラックスし、ピントが合うように作られている。子ども時代に屋外活動をすることは目の健康の基礎を作る大切な要素だ」と大野教授は語る。

「大人になって発症する成人進行近視や成人発症近視にも、スマホなどの近業時間の増加が影響している」(大野教授)とも指摘しており、近視は成人しても注意しなければいけない現代病なのだ。

ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント
疲れ目・かすみ 目の健康守る
注目記事
次のページ
近視の進行を抑える「3大治療」