ビタミンE20倍・ゆず風味… こだわりの卵かけご飯
安全性の高い日本の卵だからこそ味わえる「卵かけご飯」。家庭で気軽に楽しむのが一般的だが、様々な種類の卵を食べ比べできる専門店も登場している。養鶏場が運営するレストランではとりわけ新鮮な卵を食べられる。11月には都内で「たまごかけごはん祭り」も開催された。家庭で手軽に味わうのもいいが、時にはこだわりの卵を食べてみてはどうだろう。
日本はメキシコに次ぐ世界2位の卵消費大国だ。年間330個以上の卵を食べているとされ、世界でもほぼ唯一、生食が可能な国だ。流通も生食を前提にしているため、サルモネラ菌による食中毒の危険も少ない。一方、海外では加熱調理して食べるのが常識。基本的に生食はできない。卵かけご飯はそんな日本だからこそ味わえる美味となっている。
「『ゆうやけ卵』は濃厚で『お米卵』はさっぱりしていた。スーパーで買う卵とは全く違う」。「喜三郎農場」(東京・文京)で卵かけご飯の食べ放題を注文した女子大生3人組は目を輝かせる。ゆうやけ卵はビタミンEが通常の約20倍あるという三喜鶏園(群馬県高崎市)、お米卵はコメをエサとして与えてコレステロールを約3分の1に抑えたヘルシー卵で半沢鶏卵(山形県天童市)から仕入れている。
同店では常に5~6種類の卵が並ぶ。卵食べ放題の「卵かけごはん御膳」は740円(税抜き)。他にも親子丼などのメニューもあるが、来店客の約3割が卵かけご飯を頼むという。
オーナーの高木大地さんは「趣味のひとつとして色々な卵を取り寄せては食べている」というほどの卵好き。「お店で提供する卵はそれぞれエサや育て方、産地が違う。食べておいしいものを選んでいる」と胸を張る。多い日には1日に600個以上も卵を使う。
「甘い卵、豊かな香りがする卵などいろいろ味を楽しめる。火を通すよりも生のほうが卵本来の味が分かる」(高木さん)。普段は卵かけご飯を食べない外国人にも人気で、年々来店が増えているという。
記者(26)も「卵かけご飯御膳」を注文し、「ゆうやけ卵」と「ゆずたま」を食べ比べてみた。まず、ゆうやけ卵を割ると、濃いオレンジ色の黄身が顔をのぞかせる。黄身の色も濃いが味も濃い。次に食べてみたのが、高知県南国市のヤマサキ農場のゆずたま。さっぱりとしたかんきつ系の香りが鼻に抜ける。ここまで味に違いが出るとは予想外。正直驚いた。
千葉県匝瑳市で養鶏を営む九十九里ファームが運営する「たまご屋さんコッコ」(千葉県多古町)では、取れたての卵を使った卵かけご飯にありつける。地元の人に卵へのこだわりを知ってほしいと10年前から販売している。
お店に並べるのは質の良い若鶏の卵。「エサには動物性たんぱく質をほぼ入れず、大豆カスなど植物性のものを与えることで臭みがなくなる」(同社の担当者)
卵の味は濃いのに臭みがない。あまりにも食べやすく、気づくと3個たいらげていた。500円で卵とご飯をお替わりし放題。財布に優しく、ボリュームも申し分ない。同社の卵は都内なら通販などでも購入できる。
毎月、卵かけご飯について研究している――。そんな話を耳にして一般社団法人「日本たまごかけご飯研究所」の上野貴史代表理事を訪ねた。
研究所では月に1回、6~7種類の卵を決まったしょうゆとご飯の量でテイスティングする。同研究所の黄金比は卵(Mサイズ)1個にご飯150グラム、しょうゆ7グラム。食べ方にも順序がある。先にしょうゆをご飯と混ぜることで「卵本来の味を感じることができる」という。
上野さん自身、これまでに食べた卵は300種類以上というほどの卵好き。「日本の文化である卵かけご飯をもっとPRして卵の生産を盛り上げたい」と意気込む。
11月には東京・池袋で「第1回たまごかけごはん祭り」を開催した。参加費は500円(食べ放題)。卵20種3100個を用意した。予想を上回る人気だったため、2020年4月にはイースター(復活祭)に合わせて、第2回を開催する予定だ。「生産者にも来てもらって消費者にも作り手を知ってもらう機会にしたい」(上野さん)という。
取材するまでは卵によって味が違うのか半信半疑だったが、食べ比べてみるとそれぞれの個性がはっきりわかり驚いた。日本に住んでいるからこそ楽しめる卵かけご飯。たまには専門店や通販でこだわり卵を買って楽しんでみてはどうだろうか。
(嶋田航斗)
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