働く自分、考える人へ 東大・早大の書店員が選ぶ3冊

2019/12/23
推薦の条件は「就活生の力になってくれそうな本」
推薦の条件は「就活生の力になってくれそうな本」

2021年に卒業する学生の就職活動が年明けから本格化する。不安、焦り、迷い。様々な感情が入り乱れ、エントリーシートを前にぼうぜんとしてしまう日もあるかもしれない。そこで、「働く自分」の姿を考える学生にお薦めの本を、東京大学と早稲田大学の大学生協の書店で働くふたりに選んでもらった。「就活ノウハウ本や就活を扱った小説ではないが、就活生の力になってくれそうな本」が条件だが、元就活生や将来を考える高校生の胸にも響くであろう言葉にあふれる本が並んだ。

早大生協・鈴木祥介さんオススメの3冊

「盗まれた手紙」 エドガー・アラン・ポー著
    (所収多数。写真は集英社文庫「E・A・ポー」・1430円)
「銀河で一番静かな革命」 マヒトゥ・ザ・ピーポー著(幻冬舎・1650円)
「ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた」 
    一橋大学社会学部佐藤文香ゼミ生一同著
(明石書店・1650円)

早稲田大学生活協同組合ブックセンターの鈴木祥介さんがまず挙げたのは、近代推理小説の開祖といわれるエドガー・アラン・ポーの短編「盗まれた手紙」。盗まれた手紙を探し出そうとするがなかなか見つけ出せないパリの警視総監が、探偵デュパンに相談する。2平方センチ単位で捜索しても見つからなかった手紙をデュパンはやすやすと発見するのだが、そのからくりは? というストーリー。

「モルグ街の殺人」などと並んでデュパンが登場する作品の一つで……といった文学史上の位置づけはひとまず横に。「この作品が鮮やかなのは、読者が必死で1カ所をみつめて手紙を追っているところでふっと、読者の視点をずらさせる展開があること」(早大・鈴木さん)。そう、必死で1点ばかりをみつめず、視点を変えてみると、世界はまるで違って見えてくる。就活は気づくと視野が狭くなっていることが多い。行き詰まったと感じたら、デュパンのように視点を変えてみよう。世の中は広い。

早稲田大学生活協同組合ブックセンターの鈴木祥介さん

次に挙げたのが、マヒトゥ・ザ・ピーポーの「銀河で一番静かな革命」(幻冬舎)。ロックバンドGEZANのボーカルである筆者が初めて出版した小説だ。海外に出たことがない英会話教師、ながいこと曲が作れないミュージシャン、父親が誰だかわからない娘を産んだシングルマザーなど、「うまくいかない」ことを抱えた人物が登場し、それぞれの人生が東京の渋谷のはずれで交差する。

「ワタシはワタシをやめられないし、同時にワタシにもなれない」「『はい』とも『いいえ』とも主張できずに、ただ、黙ることしかなく、いつもそうやって自分が主人公でいることを避けてきたように思う」。登場人物の一人である英会話教師はこんな独白をするように、みな自分が何者かわからないまま下を向いて生きている。しかし、地球全体にかかわる「あること」をきっかけに自分を生き始める。

早大・鈴木さんは「就活生が生きる世界とは全く違う世界を描いているが、登場人物はみな、自分は何者かを考えている。狭い世界にとらわれずに生きてほしいというメッセージを感じられる」と解説してくれた。

3作目は「ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた」(明石書店)。「あなたがあなたらしくいられるための29問」と副題のついた本書は、一橋大学社会学部の佐藤文香教授のゼミ生たちが大学生の視点からジェンダーに向き合った1冊だ。「フェミニズムって怖いもの?」「めざしているのは逆差別?」など、ジェンダーをめぐる素朴な疑問に、学生たちが一つ一つ真摯に答えを探していく。

女性らしさ、男性らしさって何? そもそも私らしさって? そんなことを考えるきっかけをくれる。「自分はこうだって決めつけるのは、実は非常に難しい。その難しさをジェンダーの視点から考える本」(早大・鈴木さん)だ。

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