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六花亭・小田豊さん 4つも音楽ホールを造った理由

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日経ARIA

全国区の人気を誇る北海道の菓子メーカー、六花亭製菓。今年放送されたNHK朝の連続テレビ小説「なつぞら」に登場する菓子店「雪月」のモデルの一つとなったことでも話題を集めました。元社長で現亭主の小田豊さんは、父の跡を継いで社長に就任すると、本業を飛躍させるとともに、本格的な音楽ホールを造って名だたる演奏家のコンサートを開催するなど文化事業にも力を入れてきました。なぜ小田さんが音楽ホールにこだわるのか。その理由を伺いました。

◇  ◇  ◇

六花亭には今、音楽ホールが3つあります。正確には4つかな。最初はここ帯広本店のビルの4階にあるはまなしホール。広間にひな壇と椅子を並べた、サロンコンサート用のホールです。それから札幌市内に本格的な音楽ホールが2つ。あとは、帯広市の隣の中札内村(なかさつないむら)に造った「六楽堂」。ここではバイオリニストの久保陽子さんが月に10日間くらい滞在して活動しています。久保さんに練習用のホールが欲しいと言われて、それなら造りましょうということになりました。

久保さんは、不思議なご縁が続いている方なんです。

苦手だったクラシックが、「あれ、悪くないな」

僕には3歳上の姉がいて、姉は子どもの頃からピアノ教室に通い、クラシック音楽にも関心を持っていました。片や僕のほうは同じ教室に通っていたものの、先生に「また来ないわね」って言われるような状態。レッスンが嫌で仕方ありませんでした。

そんな姉が東京の女子大に進学して、3年後には僕も大学生になり上京。すると、東京で熱心に演奏会に通っていた姉にある時、「あなたもたまには聴きなさいよ」と誘われました。それで東京文化会館で聴いたのが、久保さんが演奏するメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲でした。

いたく感激したとかではないと思うし、それがきっかけで熱心にクラシックを聴くようになったわけでもありません。ただ、あの哀愁を帯びた有名な旋律で始まる曲が、どこか心に刺さったんですね。子どもの頃はあれだけ逃げ回っていたクラシック音楽の世界が、全然嫌なものではなかった。振り返ると、あれがクラシック音楽との出合いになるのかなと思います。

喫茶室でサロンコンサートを企画、評判に

大学を卒業して実家の帯広千秋庵製菓(後の六花亭製菓)に入社し、創業50年を迎える1982年に、帯広本店2階の喫茶室で記念のサロンコンサートを開くことになりました。当時副社長だった僕は、東京から有名なオーケストラを呼んで一晩だけのイベントをやるくらいなら、同じ予算で1年を通してできるような内容にしたらどう? と提案しました。一度きりでおしまいではなく、続くものにしたいと思ったんです。それで室内楽のコンサートを開くことになり、久保さんにも出演してもらいました。

「お菓子とお茶と音楽と」というコンセプトで、名付けて「デセールコンサート」。デセールはフランス語でデザートの意味です。最初は1年でやめるつもりでしたが、これがまあ評判がよくて。早朝から寒空の下で、お客さんがチケットを買うために並んでくれるようになって、やめるにやめられなくなりました。初期に出演してもらった札幌交響楽団のメンバーの中に中央(東京)に人脈のある人がいて、「次はこの人」「その次はこの人」と、第一線の演奏家を連れて来てくれました。

僕はみんなに喜んでもらうことが好きなんです。それでせっかくならと、仲間たちと「十勝ひろびろ音楽祭」という音楽イベントを始めました。十勝にコンサートホールはないので、建物のロビーなどが演奏会場。世界的なチェロ奏者のミッシャ・マイスキーやソプラノ歌手の中丸三千繪も来てくれました。

イベントが終わってからは「直会(なおらい)」と称してワイワイおしゃべりする。それがたまらなく楽しくてね。これは20年くらい続いたのかな。最終的には地元のクラシックファンの広がりに限界が見えてきて、いったんおしまいにしようということになりました。

それでもしばらくすると、また「何かやりたい」とむずむずとしてくるわけです(笑)。今度はどこかにちゃんといいホールを造らないといけないな、という思いがありました。そんなときに、札幌市の真駒内というところに六花亭の店舗を造るチャンスがやってきた。そこで、今度は先に音楽ホールを造ろうと決めました。

逆転の発想で今までにない店舗が誕生

建物は店舗ではなく、あくまでコンサートホール。それを1年のうち、コンサートがない350日間は店舗に使います。今までは既にある建物の一角でサロンコンサートばかりやっていましたが、これでは限界があるなと思ったので、目的と手段とを入れ替えたんです。

前例のないプランですから、ホールと店、それぞれの機能的な整合性をどうやって取るかという点では非常に苦労しました。設計士とは途中で大げんかもしましたね。一時は「この話はなかったことにしよう」というところまでいきましたが、最終的には非常に満足のいくものができました。真駒内は札幌の中心部からは離れているのですが、おかげさまで固定客がついてくれて、今でも定期演奏会は大体いっぱいになります。

真駒内のホールを造って大満足していたら、今度は札幌の駅前に店舗を作ることになりました。これもまた不思議な縁なのですが、ヤマハさんが駅の周辺に音楽教室の生徒さんの発表の場を欲しがっているという情報が飛び込んできたんです。それで交渉していくと、使用料もいただけるとのこと。じゃあ札幌の中心部にも音楽ホールを造ろうということで2015年に完成したのが、札幌本店6階のふきのとうホールです。もしヤマハさんとのマッチングがなかったら、店舗だけの建物になっていたと思います。

文化事業が企業の色合いを豊かに変える

僕はお菓子と建物をつくるのが大好きです。建物は造っていく過程で、「椅子どうする?」「この壁どうする?」「反響板どんな形にする?」とあれこれ考えるのが本当に楽しいんです。お菓子作りもそうですが、やるからにはとことん妥協せずにやりたい。それが結果として、長く続くということになると思っています。

六花亭は本業のほかに、コンサートや落語会もやるし、美術館に「サイロ」という児童詩誌もあります。僕は今から24年前に父の跡を継いで六花亭の社長になりましたが、社長になる前から、これからは単なる「物売り」の時代じゃないなというのをずっと感じていました。

会社にとって、お菓子を作って売ることはもちろん必要条件だけれども、十分条件として、「美術館があります」「コンサートもやっています」といったこともあったほうが、企業の色合いがぐっと変わってくる。それは常々経営者として思っています。

コンサートをやることは全然採算に合いませんし、例えば道内の店舗に併設している喫茶室のメニューも、あの値段では赤字です。それでもお客さんが寄ってくれる、人が集まってくれるというのが僕には一番うれしいことなんです。

ふきのとうホールは、六花亭に何かあっても、たぶんみんな壊さずに使ってくれるでしょう。自分の好きなように造るということはもちろんあるけれども、何かをやるときに社会資本という考え方は持っていなければといつも思っています。

小田豊
六花亭亭主、六花亭食文化研究所所長。1947年北海道生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、72年に帯広千秋庵製菓(現・六花亭製菓)に入社。取締役副社長を経て、95年に代表取締役社長に就任。2015年、第13回渋沢栄一賞受賞。16年に代表取締役社長を退任し、六花亭食文化研究所所長に就任。同時に六花亭の「亭主」を名乗る。17年、第1回井上靖記念文化賞を受賞。

(取材・文 谷口絵美=日経ARIA編集部、写真 東藤亮佑)

[日経ARIA 2019年8月22日付の掲載記事を基に再構成]

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