「数学五輪」の常連、灘の数研 先生もかなわない才能灘中学・高校(上) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ

中高6年間の数学を中1で超特急習得

毎年5月に行われる文化祭で、数学研究部として1年間の成果を発表する。一人一人書いた論文は部誌にまとめる。数学オリンピック的な問題を解かせて得点を競う「和田杯(校長の名にちなんで)」という競技も開催する。大人向けの現代数学の講義も行う。そして目玉は、灘の中学入試の「そっくり問題」を部員がつくり、小学生に解かせ、解説する「灘中入試模試」だ。

文化祭が終わると新しい課題図書を数冊選んで、グループに分かれて新しい「自主ゼミ」を始める。「数学専攻の大学生が読むような本ばかりですから、そうサクサク進むものでもありません。苦しみながら読み進めます。でもそれが楽しい」と河口さん。

ただし、中学校に入ったばかりで2次方程式すら知らない1年生がいきなり「自主ゼミ」に参加するのは無謀。そこで行われるのが「中1講義」である。早く「自主ゼミ」に参加できるようにするために、本来なら高3までの6年間で学ぶ一通りの数学を中1の1年間で修了してしまうという超特急プログラムだ。

「中1講義」は放課後に週2回。代数分野と幾何分野を同時並行で進める。教えるのは中3の部員の役割と決まっている。数学オリンピックで活躍するような優秀な先輩たちを間近に見ながら中高6年間の数学が短期間ですべて習得できるなんて“おいしい”話はない。

近田さんは「本人が望むのか、親が望むのかは不明だが、この10年くらいはやたらと中1での入部が多い。数学が好きでたまらないというよりは、大学受験に有利という打算で入ってくる部員もいるかもしれない」と言う。

しかし当然ながら、活動内容は思ったよりもハードなので、「中1ゼミ」を最後までやり切るのは3人に1人もいない。中2では部員が20人ほどになり、高3まで活動を続けるのは多くて10人だ。

数学テキスト約40ページ分を2時間で終了

「中1ゼミ」を見学した。放課後、中1の部員が10人ほど集まる。講師は中3の仲西皓輝さん。テキストはなく、仲西さんが板書をしながら講義が進む。中1たちはいたってリラックスしている。遊びながら聞いている部員もいる。なんとも不思議な雰囲気だ。

この日のテーマはベクトルで、中1にとっては初めて扱うテーマであるが、どんどん進む。ベクトルくらい大昔に私も学んだが、顧問の先生たちとちょっと話をしている間に、あっという間に置いていかれ、話について行けなくなった。2時間弱の講義で進んだ範囲は、定番テキスト青チャートの『数学2+B』の384ページから425ページまで約40ページ分に相当するらしい。

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