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ラグビー代表 コーチが明かす「疲れない体」の作り方

ラグビー日本代表S&Cコーチに聞く(中)

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NIKKEI STYLE

初の自国開催となったラグビーワールドカップ2019(W杯)で、8強入りを果たした日本代表選手たちの体力強化やリカバリー(回復)管理を務めたストレングス&コンディショニング(以下、S&C)コーチの太田千尋さん。今回は、デジタル機器を使ったコンディショニング方法や、体の回復力を高め、筋肉を成長させるために重要な睡眠の取り方などについて聞いた。

練習量や疲労度をデジタル管理

――前回記事「ラグビー日本代表 快挙支えたトレーニングの裏側」で、選手のコンディション管理をするために、GPS(全地球測位システム)などのデジタル機器を活用しているとおっしゃっていました。どのように活用されているのでしょうか。

太田:昔は、選手自身が体調や疲労度などを紙に書いて、それをトレーナーが見てチェックするというアナログ方式でした。私が2013年にアシスタントS&Cコーチとして日本代表チームに参加したときは、既にデジタル機器でコンディション管理をしていましたが、当時はこうしたデジタル機器を使って管理しているスポーツは珍しかったと思います。入力する選手もチェックするトレーナーも簡便にできることから、今はラグビー以外のスポーツでもデジタル化が進んでいると思います。

私たちは、具体的には「ONE TAP SPORTS」および「VX Sport Wellness」というウエブブラウザを使っています。疲労度や睡眠時間、睡眠の質、上半身や下半身の筋肉の痛みなどを、個人のスマートフォンから選手の主観で入力します。操作は簡単で、ビジュアルアナログスケールというカーソルを左右に指で動かして、0~100の数値で自己評価するだけ。何かあればコメント欄に連絡事項を記入し、そうしたデータが僕らのところに飛んできます。

体調だけでなく主観的な練習強度や、練習の質と強度を掛け合わせたトレーニングロード(負荷)を定量的に示すことで、どの程度の負荷がかかるとどの程度選手が疲労度を感じるかを知ることができ、事前に練習強度の設計や疲労回復計画を立てることが可能です。また、負荷がかかりそうな練習が控えているときに選手の疲労度が高い場合は、メディカルトレーナーに体の状態を詳しく評価してもらい、練習量を減らすのか負荷のかけ方を変えるのかを検討します。基本的には完全に休ませるのではなく、何ができるかを探ることが重要です。

具体的な流れは、起床後に選手に入力してもらい、40人の選手の朝の状態をトレーナーとコーチが共有し、練習のボリュームと体のケアの方法を考え、調整します。

さらに練習や試合中にGPSや心拍数計を選手に装着してもらい、走行距離などのデータも判断材料に、選手の体を追い込みつつ、リカバリーも調整しています。強化の例で言えば、試合中の選手の運動強度をデータで取り、練習ではそれに対して10%、20%強度の高い状態で正しい判断やプレー、高い質の動きが実行できるよう挑戦させます。トレーニング負荷と疲労の評価は、ハイパフォーマンスを実現するためのこうした練習に必要不可欠な情報といえます。

――運動強度というのは何でしょうか?

太田:一つは時間当たりのスピードです。例えば、試合なら1分当たり60~70mぐらいの移動距離になります。短いように思えますが、その間にタックルしたり、サポートしたり、スクラムを組んだりするので運動強度はとても高い。その60mという距離を100m、120mと伸ばしていき、その間、タックルやスクラムなどを入れる練習をすると、強度がさらに上がります。

また、攻守の切り替えも多いラグビーでは、高強度の加速度(2.5メートル毎秒毎秒以上)での加速回数が多いかどうかも評価します。こうして強度を上げると心拍数も上がり、その状況の中で正確なスキル、正しい判断ができるように鍛えれば、試合中で苦しいときでも、さらに冷静な判断ができるわけです。日本代表は、試合の強度のプラス20%ほどの練習を目標にしていました。

8時間以上の睡眠がケガのリスクを抑える

――強度の高い練習をしてもケガが発生しないようにするには、睡眠によるリカバリーが重要とのことですが、具体的な睡眠の取り方について教えてください。

太田:普段から8時間以上寝ている人は、それ以下の人と比べると、ケガの発生率が低いというデータがあります。つまり、睡眠時間が少ないと、運動をして回復し切らずに次の運動になってしまうので、ケガにつながります。裏を返せば、体や筋肉を成長させたいのに、睡眠の効用が疲労からの回復だけに使われて終わると、体や筋肉の成長につながりにくくなるのです。睡眠によって、体や筋肉の疲労回復から成長につなげなければいけないので、そういう意味でも睡眠の時間と質を充実させることは大事です。

だから最低でも8時間以上の睡眠と、パワーナップ(昼寝)をするように指導します。昼寝は通常は20分ですが、午後の練習まで長く時間が空くときは90分。90分はレム睡眠とノンレム睡眠のワンサイクル分です。

また、睡眠の質を高め、回復を促進するために、夜、寝る前にはスリープスムージーをとってもらいます。ベリー系の果物とカゼイン(牛乳などに含まれるたんぱく質)などを入れた飲み物で、緩やかに吸収するので胃の負担が軽く、寝ている間に血中に栄養素が行きわたり回復を高めます。

夕食が午後6~7時頃で、就寝が午後9~10時ですが、その間の就寝1時間前に摂取するイメージで、ホテルで用意してもらったり、自分で調整して作れるように材料を置いておいたりします。激しいスポーツをしている一般の人も、夜寝る前にリカバリーのために作って飲むといいと思います。またメディカルスタッフからは、入眠の質を高めるために、入浴剤を活用した入浴による入眠準備の指導などもされていました。

試合翌日のリカバリー法

――休養日についてはどのような指導をしていましたか。

太田:基本的には、リラックスしてもらいたいので選手本人に任せていますが、試合後に飲むお酒については、リーチ・マイケル主将がみんなに、一杯だけにしてしっかりコントロールしようなどと話していました。

あとは試合の翌日には疲労をとるため、浮力と水圧で筋肉がリラックスするようプールの中で歩いたり、ストレッチを行ったりします。また、加圧しながらマッサージして血流を循環させる方法もあります。さらに、水温12~13℃の冷たい水につかり、血管を収縮させて炎症を抑えたり、冷水と温水浴を交互に繰り返す交代浴で血流を良くしたりします。睡眠時の体圧分散、就寝時の姿勢保持、吸透湿性などの機能のあるスリープマットレスを敷いて、睡眠の質を高めることもあります。

さらに、海外では取り入れるチームが増えている方法に、クライオセラピー(冷却療法)という、液体窒素を用いた極冷却空間に3分間入り、体を冷やす方法もあります。体が短時間で冷却されるので、血管がキュッと収縮されます。アイスバスよりも収縮率が高く、外に出ると血管が拡張し、体がブワーッと熱くなる。血流がとても良くなり、新陳代謝が活性化して回復を促進させます。

アンダーウエア以外は脱いで裸になり、凍傷にならないように手袋をし、ブーツを履いて入りますが、姫野和樹選手や中村亮土選手など、激しいコンタクト(体を当てる)プレーが必要なポジションの選手ほど、休養日にこうしたリカバリーをすることを勧めています。1回だけでも効果は期待でき、リカバリーだけでなく、睡眠の質が悪い人もよく眠れる効用が期待できます。 

リカバリー方法は時代とともに変わりますし、選手の疲労度合いによっても変えます。個々の選手のその時々の現状に合わせつつ、本人の感覚も聞きたいのでコミュニケーションを取りながら提案することを大切にしてきました。

こういう場合にはこういうリカバリーがいいということを科学的なデータや根拠を示しながら説明すると、選手も納得し行動につながりやすくなります。また、同じ練習をしても、選手によって、またはポジションによって負荷が変わってくるので、どのリカバリー方法を選択するかは、選手にしっかり考えてもらうことが大事になります。

例えば、フォワードの選手なら、コンタクトプレーをして筋肉のダメージにより炎症が起きたときは、しっかりアイスバスに入って炎症を引かせる。バックスの選手なら、当たるよりも走る運動が多いので、しっかり水分補給とストレッチをし、交互に冷水と温水につかる交代浴が選択肢に挙がります。

チームでの役割やトレーニングの種目が違えばかかる負荷も異なるので、リカバリーの仕方も変わります。自分に合ったリカバリーを、日本代表選手は自身できちんと選択できるようになっていました。

(次回「1日7~8回 ラグビー代表、練習の疲労をとる食事」に続く)

(ライター 高島三幸、カメラマン 厚地健太郎)

太田千尋さん
ラグビー日本代表S&Cコーチ。少年時代は野球をし、大学3年生でインターンとしてラグビートップリーグのクボタスピアーズへ。体を直接ぶつけるコンタクトの激しさに魅了され、故障がつきものの競技にトレーナーの力を生かしたいとラグビーの道へ。地域のチームでプレー、コーチングの資格取得など勉強を続け、国際武道大学大学院生のときにクボタと契約。現在は慶応義塾大学のラグビー部S&Cディレクターを務め、2013年から日本代表の強化に携わる。

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