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一橋大大学院特任教授 伊藤邦雄氏

一橋大大学院特任教授 伊藤邦雄氏

経営者をはじめとする各界のトップがリーダーシップについて語る連載「私のリーダー論」。その言葉からはどんな時代が読み取れるのか。社外取締役などを通じて現場のリーダーやガバナンス(企業統治)を長く見てきた2人の識者に聞く。前編は一橋大学大学院経営管理研究科の伊藤邦雄特任教授。

(下)中間管理職を再生できるか 強いリーダーに4つの条件 >>

――最近の経営者の傾向をどのように見ていますか。

「この10年ほどのあいだに、日本の経営者のタイプが変わってきているように思えます。特徴的なのは卓越した対話力を備えたリーダーが増えてきたことです」

「対話と会話は異なります。会話が価値観の共有を前提としているのに対し、対話はダイバーシティー&インクルージョン(D&I=多様性の受容と活用)というか、価値観が異なるかもしれないことが前提です」

「対話を通じて価値観や考え方の違いを認識するだけでは不十分です。粘り強く対話を続け、互いの違いの原因を探り当て、乗り越えることが必要です。社員との対話に注力し、組織変革や社員のエンゲージメント(主体的に行動する意欲)向上に役立てている経営者が目立つようになりました」

「2つ目は本質志向、原点志向についての意識の高まりです。経営学でいう『パーパス(存在意義)』、すなわち私たちの会社は何のためにあるのか、私たちは誰のために仕事をしているのか、という本質的な問いを社員に投げかけ共に考える。こうしたことを社員と繰り返していくなかで、共通の了解事項あるいは価値を明確にしようとする経営者が多くなってきています」

カリスマ型のリスク高まる

――なぜ、対話を重視するリーダーが増えてきたのでしょうか。

「カリスマ型経営者の限界、リスクが相対的に高まってきたからです。企業を取り巻く環境の変化が緩やかな時代なら、向かうべき方向は明確ですから、そこに経営資源を集中すればよかったのです。しかし、現在のようにグローバル化が進み、環境の変化が激しくなり、ディスラプティブ(破壊的)イノベーターが出てくる時代は、経営者の直感よりは現場の感性鋭い人たちの知見を吸い上げ、多面的な知恵を結集する必要があるのです」

「この数年のガバナンス(企業統治)改革の影響も大きいと思います。2018年のコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の改定などで、経営者と国内外の投資家とのワン・オン・ワン(1対1)の対話が大きく広がりました。これにより対話力が磨かれてきたのではないでしょうか」

「ある衛生用品メーカーの2代目社長は積極的に投資家に会うことを心がけています。投資家と対話すると、いろんなヒントをもらう。ときには厳しいことも言われるが、それによって自らを振り返ることができるというのです。つまり、相手が誰であれ、対話は自らを顧みる契機になるのです」

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