父に悪態ばかりついてしまう作家、石田衣良さん

NIKKEIプラス1

作家。東京都生まれ。2003年「4TEENフォーティーン」で直木賞。石田衣良のブックサロン「世界はフィクションでできている」主催(https://yakan-hiko.com/meeting/ishidaira/top.html)。
作家。東京都生まれ。2003年「4TEENフォーティーン」で直木賞。石田衣良のブックサロン「世界はフィクションでできている」主催(https://yakan-hiko.com/meeting/ishidaira/top.html)。

父を尊敬すべきなのに、つい嫌みとか皮肉を言ってしまいます。ずっと家族を支えてくれて、つらい時も病気の時も何一つ弱音を吐かなかった父。でも普段は下ネタばかり言うし、飲んべえだし、パチンコにも行くし、禁煙したはずなのにいつの間にか吸っているし……。そんな姿を見ていると「アホなの?」と思ってしまう。どう関係を保てばいいか教えてください。(埼玉県・20代・女性)

ふふふ、困ったな。そんなにあなたのお父さんはだらしないんですね。酒好き、下ネタ好きで、おまけにパチンコとタバコが大好き。若い娘から見たら、アホなのといいたくなる気もちはわかります。

でもね、世のお父さんのほぼ9割は「あなたのお父さん」的なおじさんです。ぼくのファンは衣良さんは違うと勘違いしているかもしれないけど、そんなの大ウソ。確かにぼくはパチンコもタバコもやらない。でも、下ネタも酒も当然好きだし、だらしなさ、やらしさでは、あなたのお父さんに負けていません。

世の中のお父さんはみな、そんな時代遅れのポンコツなのです。嫌みや皮肉をいわれるのも慣れているし、若い女性たちから好かれていないことも、がっかりながら理解しています。父とはそういう淋(さび)しい生きものだとわかってくれたら、それでいいのです。

あなたの手紙を読んで、ぼくはあやうく落涙しそうになりました。ずっと家族を支え、病気のとき、なにひとつ弱音を吐かなかった。この一文だけで、あなたの心の奥底のお父さんへの評価がわかったからです。その一点を理解してくれるなら、どれほど嫌みや皮肉をいわれようが、必死に働くのが父という存在です。健気(けなげ)でかわいらしく、気の毒で、でもなんとも素晴らしい生きものではありませんか。

誰もだらしない父親なんて応援しないので、ここでひと言いっておきましょう。がんばれ、日本のお父さん!

どう関係を保てばいいのかというご質問ですが、あなたはすでに父親を愛するという意味では、仏陀(ぶっだ)最後の説教でいうところの「最高の境地」に達していると思います。お父さんがつらい病気にかかったとき、あなたは泣きませんでしたか。長年家族を支えてくれた父親に、心の底から感謝したこともあったはずです。今、お父さんが倒れたら、なにをおいても病院に駆けつける。あなたはそういう娘なのではありませんか。

胸の奥に小さな感謝や愛情の灯がひとつある、それだけで十分です。今のまま最高の関係を保ってください。あなたが愛するように、お父さんもあなたのことを心から愛していると、ぼくは思うな。

あなたの悩みをサイトにお寄せください。サイト「なやみのとびら」(https://www2.entryform.jp/tobira/)から投稿できます。

[NIKKEIプラス1 2019年12月21日付]

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