Men's Fashion

べっ甲めがね・コードバン靴… 一生かけ育てる楽しみ

トレンド

心躍る10の特別なモノ(中)

2020.1.18

MEN'S EX

世の中に「もの」が溢れ、さらに様々なツールを通して情報が襲ってくる現代。何が素晴らしく、そして“何が特別なのか?”が見えづらくなっている時代と言えるだろう。しかしながら“本当の上質”を伝えていく、を信条としている弊誌としては、今こそ諸兄に本当の「特別なもの」を提示したい。希少極まりないもの、最高級のクオリティのもの、はたまた、見逃してしまいそうな隠れた逸品。今回厳選した特別は多岐にわたるが、どれも成熟した男に高揚感を与え、所有欲を満たし、思わず笑みがこぼれてしまうものばかり。体感して欲しい。そう……特別なものと過ごす人生は格別だ。




〈 5/10 Special SHOES 〉名手のクロコを履く

靴を愛する方であれば、人物を知ろうと知るまいと名前には聞き覚えがあるのではないだろうか? フィリップ・アティエンザ。ジョンロブの名靴「フィリップ」に名を残すその人である。フランス国家最優秀職人賞「M.O.F」を授与された氏は、ジョンロブを経て約9年に亘りマサロで働き、2016年に自身の名を冠したブランドを設立。日本でも年2回、オーダー会を開催している。フィリップ氏自らが採寸を行うビスポークシューズは、それだけで特別な存在となることは間違いない。しかし、せっかく最高峰の仕事が得られる機会なのだから、とびきり高級な素材、たとえばクロコダイルでこれを誂えたら、もっと粋ではないか。

名手のクロコに、威圧するような気配は微塵も感じられない。アーモンド型のトウは低く抑えられ、どこまでも流麗な曲線を描く。それが上質なクロコ特有の斑の紋様や輝きと相まって、息を呑むような美しさを湛えるのである。まさしく、世界最高峰のラグジュアリーがここにある。

■PHILIPPE ATIENZA(フィリップ アティエンザ)

[ビスポークシューズ]
世界屈指の技術と美意識を備える靴職人と賞賛されるフィリップ・アティエンザ氏が、夏と冬の年2回来日し、ストラスブルゴにてオーダー会を実施。直近では12月12日に大阪店、同13~14日に銀座店、同15~16日に南青山店で開催された。 靴82万1000円~〈オーダー価格。クロコは164万2000円~。仮縫い1回。納期約1年〉(ストラスブルゴ)

〈 6/10 Special ACCESSORY 〉二度会えぬ素材

装身具の世界には、似た何かこそあれど、決して代えの利かない素材というものが存在する。眼鏡に用いられるべっ甲は最たるもの。艶やかに磨きあげられた一流のそれは、世に溢れるべっ甲調のアセテートとはまるで異なる、艶めかしい表情を醸し出す。割れの修復ができる点も、一生の付き合いを後押しする魅力である。なお、べっ甲はワシントン条約によって輸入が禁止され、使えるのは主に批准以前に輸入したストックのみ。希少性とそれぞれが備える唯一無二の表情を考えれば、すべてが二度会えぬ素材である。

ひとつとて同じ紋様のないエキゾチックレザーや鉱物にも、同じことがいえる。特別な素材は、モノへの愛着を深めてくれる。丁寧に仕上げられた極上のそれなら、なおさらだ。

■01. OSAWA BEKKO(大澤鼈甲)

[ウェリントン眼鏡]
小野妹子が隋から持ち帰った美術品にも用いられていたという、歴史ある素材のべっ甲。現在では希少なこの素材をフレームにした、「KUAI(クワイ)」シリーズのスマートなウェリントン眼鏡だ。奥行きのある色合いと艶やかな風合いは、本物のべっ甲ならではの特別な魅力。たんぱく質を含むため肌にも優しく、βチタン製のバネ蝶番が相まって掛け心地も実に快適である。 42万円(大澤鼈甲)

■02. T.MBH(ティーエムビーエイチ)

[カフリンクス]
エキゾチックレザーの中でもとりわけ個性の強い印象のガルーシャだが、これを18Kピンクゴールドのベースへ合わせたT・MBH「雫菱」シリーズのカフリンクスは、どこまでも上品で、繊細な表情を浮かべている。なだらかな曲面を描くこのガルーシャは、ベースへはめ込んだ後にもう一度、丹念に磨きあげているという。この手仕事や漆仕上げが相まって、唯一無二の、魅惑的な艶が生まれるのである。 50万円(T・MBH)

■03. S.T. DUPONT(エス・テー・デュポン)

[ガスライター]
定番のガスライター「ライン2」へパワーストーンを大胆に配した、全6種類、各288個限定販売の「ストーンズ オブ フォーチューン」。乳白色のニュートラルな色味やランダムな輝きが美しいこちらは、タンザニア産のホワイトオパールを用いたモデル。この石には、感情の曇りを取り去る、ネガティブなエネルギーを反転させる等の力があるとされる。 71万7000円(エス・テー・デュポン 銀座ブティック)