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減った労働時間どう生かす サントリー流は社員投資

千大輔サントリーホールディングス人事部部長(下)

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NIKKEI STYLE

サントリーが働き方改革を成長戦略として積極的に推進している。前回記事で「ナカミ改革」を実施し、テレワークの推進や業務の棚卸しなどで大幅な労働時間削減が実現した経緯を聞いた。引き続き、柔軟な勤務体制の実現やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入などの取り組みについて、千大輔ヒューマンリソース本部人事部部長に聞いた。

働き方改革に熱心だったのは営業部門

白河桃子さん(以下敬称略) 前回、「ナカミ改革」の結果、労働時間が減ったというお話を伺いました。ちなみに、2000時間から1900時間に減った結果、浮いた100時間分を原資として、それは何に充てているんですか?

千大輔さん(以下敬称略) よく聞かれる論点ですが、当社の場合は単純に浮いた分を基本給や賞与に還元することはありません。新浪(剛史社長)の考えとしては、人材育成のための教育プログラムや健康経営のための環境整備に投資することでも還元していきたいと考えているようです。

白河 なるほど。先行事例としてヒントをいただきたい点がもう一つ。冒頭におっしゃったテレワークの推進についてです。2011年の導入以降、順調に浸透してきたとのことですが、なぜうまくいったのでしょうか? 実は「テレワーク制度をつくったのに、なかなか使われない」と嘆く会社が多いのですが。

千 まず、テレワークに対してもっとも消極的にとらえる可能性のある層からアプローチしました。つまり、マネジャーです。ですから、まずマネジャー陣から実際に使ってもらって、その良さを実感してもらうことにしたのです。まず、トライアルとしていくつかの部署で試験導入した後に得られた前向きな評価をセットにして、マネジャー層に試してもらいました。すると、「社外でもちゃんと仕事ができるし、セキュリティーもしっかりしているし、悪くないな」とポジティブに受け止めていただいて、メンバーにも積極的に推奨してもらえるようになりました。

白河 とはいえ、なかなか働き方を変えづらい部署もあったのではないでしょうか。例えば、長時間労働になりがちな外食向けの営業チームですとか。お客様が働いている時間や曜日に休めないとか。

千 実は一番積極的に取り組んでくれたのが、営業部門のトップでした。「従来の働き方のままでは、メンバーが疲弊するばかりで、新たに配属を希望する社員も減ってしまうのではないか」という危機感が切実にあったそうで、率先してテレワーク導入に動いてくれました。有休取得の推奨もすぐに取り組んでくれましたね。

白河 やはりそれまではどうしても「休みにくい」という雰囲気があったのでしょうか。

千 営業部門はどうしてもお客様に合わせる必要が生じますから、社内の理解だけではうまくいかない場合が出てきます。対策として、各事業所のトップがお得意先まで説明に伺い、ご理解を得る努力をしたそうです。ちょうど時期を同じくして、日本の社会全体で働き方改革の認知が進んできたのも、追い風になっていたと思います。

白河 一番実現しにくそうな部門が率先して取り組んでいるとなれば、会社全体の空気が変わるのも早くなるでしょうね。テレワークの際の社内のコミュニケーションはどのようになさっているのでしょうか?

千 支給するパソコンも今年刷新しましてモビリティーを高め、マイクロソフトのチャットツール「Teams(チームス)」を導入したところです。チャット機能はもちろん、クラウドで資料が共有できるので非常に便利ですね。活用のための研修も積極的に行っています。オンライン会議についても、遠隔地でもクリアな画像と音声でストレスなく会話ができる高度なTV会議システムを2年前から導入しています。

週の半分を出社すればOK

白河 そういった環境整備にしっかり投資されている点に、経営としての本気度が感じられますね。柔軟な働き方についても早くから力を入れてこられたとのことですが、勤怠についてはどういうルールで実施されているのですか。

千 月間の所定労働時間を満たす形であれば、個々が働きやすいスタイルを選べるようにしています。勤務時間においては、先ほど申し上げたコアタイムなしのフレックス制により、朝5時から夜10時までの時間帯の中であれば自由に働く時間を選ぶことができます。

また勤務場所においては、必ずしも毎日出社する必要はなく、「週の半分以上は出社すればいい」というルールです。これはコミュニケーション不足を防ぐねらいですが、10分でも出社すれば1回の出社にカウントされているため、裏を返せば、それ以外の時間は10分単位でテレワーク勤務が可能ということになります。

例えば、ワーキングマザーが早起きして朝6時から8時まで在宅勤務をした後に、お子さんが通う学校の授業参観に出席して、午後から出社するといったことも、当たり前のようにできます。

白河 10分単位のテレワーク、コアタイムなしのフレックス制とは、かなり柔軟な働き方が浸透しているのですね。新入社員の女性比率も年々増えて、今は4割にも達しているそうですが、「結婚・出産してからも働きやすい会社」というイメージが広がってきたことも一因となっているのかもしれないですね。一方で、入ってくる女性社員の比率が上がるということは、いずれ育休で職場を一時離れる社員が同時期に大量に出る可能性もあるわけです。それに向けての準備は万全ですか。

千 具体的な策を十分に打てているとは言えませんが、これまで進めてきた働き方改革がきっと効いてくると確信しています。業務のスリム化が進み、必要最低限の要員で仕事を回せる体質へと変わってきた感覚は、多くの社員が持っていると思います。RPAツールによる業務効率化も昨年から進めていて、18年は年4万時間分の削減につながりました。19年はさらに8万時間分の削減を目標にしています。

業務の棚卸しを重ねたことでRPAが効果的に

白河 すごい効果ですね。RPAも入れたけれど、現場が面倒がって使わないという事例もよくあります。導入も現場の推進リーダーが主導しているんですか。

千 そうです。業務の棚卸しを重ねてきたことで、定型業務の手順も推進リーダーが理解しているので、機械に読み込ませるのもスムーズにできるんですね。業務の棚卸しをしないままRPAを導入していたら、きっとうまくいかなかっただろうなと思います。もちろん最初はRPAと相性がいい部門を選んで導入してきましたが。

白河 例えばどういう部門ですか?

千 意外と営業が合うんです。毎朝、前日の売り上げデータをシステムから落としてきてエクセル表に反映させる定型業務をRPAに移行しました。

白河 素晴らしいですね。営業部門は現場が忙しいから、苦手意識が先行するとRPAが活用されないと嘆く企業の声をよく聞くのですが、御社は成功事例と言えますね。ポイントは、業務の棚卸しと推進役となるリーダーの存在。

千 そこはかなり意志をもってやっていますね。

白河 業務の効率化が進むほどに問われるのは「じゃあ、自分ができるクリエーティブな仕事って何?」という本質的な問いですよね。そこを直視せざるを得なくなる。なぜならロボットができる仕事はロボットにどんどん置き換えられていくのですから。

千 おっしゃるとおりですね。逆に厳しく突きつけられると思います。

白河 そういった意識の覚醒によって、キャリア勉強会や「TERAKOYA」の取り組みが盛り上がっているのでしょうね。女性活躍の面はいかがでしょうか? 例えば、育休から復帰する時には時短を取る方よりフルタイム復帰のほうが増えているといった傾向はありますか。

千 今は大半がフルタイムですね。フレックスを使えば柔軟な働き方ができるので、皆さん活用されています。ダイバーシティ推進室が主催する対象者向けのガイダンスでも、「垂直立ち上げ」という表現を使って、フルタイム復帰によるキャリアの継続を推奨しています。

男性育休への取り組みはまだ途上

白河 「垂直立ち上げ」って良い言葉ですね。今話題の男性育休についてはいかがでしょう?

千 頑張りたいところですが、正直、まだ結果はそれほど出ていません。育児を理由にした5日連続の有休取得を追加で推奨する取り組みを始めていまして、ようやく取得率が50%に達したところです。これでもだいぶ増えたのですが。たった5日でも一度育児にしっかりコミットした男性社員は、その後も継続的に育児に関わり続けて、保育園のお迎えのために早く帰ることが日常的になるようなケースが多いです。

白河 きっと10年前には考えもつかなかったほどの変化なのでしょうね。

千 おっしゃるとおりで、社内の風景は劇的に変化したと思います。以前は「午後5時半に帰るなんて」「有休、取るの?」という雰囲気がありましたから。

白河 女性管理職もこれから増えていきそうですか。

千 やっと10%程度になりましたが、25年までにはその倍にすることを目標にしています。営業と生産という2つの現場を抱えるメーカーとしては、大きな挑戦ではありますが、強い意志で取り組んでいきたいという思いです。

白河 注目しています。ありがとうございました。

あとがき:働き方改革が進んでも肝心の営業成績が落ちたり、逆に社員が「やらされ感」で疲弊してしまったりしては意味がありません。サントリーはまず「業務の棚卸し」をやり、やるべき仕事を見極めた上でRPAを導入することで効果が上がりました。また、改革を「ナカミ」重視の方向で見直したことで、社員自身がボトムアップでナレッジを共有、学びを創発しあう体質に変わりました。業務をスリム化したまま走り続けられる筋肉質な体質に生まれ変わったといえるでしょう。

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)。

(文:宮本恵理子、写真:吉村永)

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