宇宙生物学って何? 生命の起源や未来さぐる旅へ出発東京工業大学 地球生命研究所 藤島皓介(1)

ナショナルジオグラフィック日本版

「生命とは何か」から宇宙生命探査まで、藤島さんはわくわくする話をたっぷり語ってくれる。
文筆家・川端裕人氏がナショナル ジオグラフィック日本版サイトで連載中の「『研究室』に行ってみた」は、知の最先端をゆく人物を通して、世界の不思議や課題にふれる人気コラム。2020年の年明け前後の「U22」に転載するシリーズは「宇宙生物学」がテーマ。地球と地球外の生命をともに考える地平からは平和へのメッセージが聞こえてきます。

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生命は地球以外にも存在する? だとしたらどんなもの? 生命は宇宙(地球)でどのように誕生した? など、宇宙と生命という究極の問いに挑み続ける宇宙生物学が活況だ。その中心地であるNASAのエイムズ研究センターを経て、最前線をひた走る東京工業大学(ELSI)の藤島皓介さんの研究室に行ってみた!(文 川端裕人、写真 内海裕之)

最近、宇宙生物学(アストロバイオロジー)という研究ジャンルをよく耳にするようになった。

字面を素直に解釈するならば、「宇宙の生物を研究する」学問ということになる。

とすると、「宇宙人の研究?」という連想も成り立つだろうし、実はNASAは極秘裏に宇宙生命体との接触に成功しているが秘密にしている、というような謀略論、陰謀論にもつながりうる。

そこまでいかずとも、どこかSFめいた、浮世離れした研究であると思われがちだ。

しかし、現実にはすでに20年以上の歴史がある研究分野だ。1995年、当時のNASA長官ダニエル・ゴールディンが、カリフォルニア州のエイムズ研究センターにて記者会見を行い、これからは"Astrobiology"という言葉を公式に使うと宣言したとされる。エイムズ研究センターは、その拠点に指定された。その後、「宇宙生物学」は着実に存在感を増し、今では国際学会も頻繁に行われている。そこには、宇宙物理学、天文学、鉱物学、海洋学、化学、生物学、情報学など、一見、方向が違う専門分野から、さまざまな研究者が集って、「宇宙と生命」という究極の問いに挑んでいる。

対応する動きは日本国内でもあって、2015年には東京都三鷹市の国立天文台の敷地内に、自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターが開設された。初代センター長は本連載でも登場いただいた田村元秀さんだ。田村さんは、ハワイ島のすばる望遠鏡を使って太陽系外の惑星を探し、その中に生命が存在しうる、つまり「ハビタブル」な惑星も見いだせることを教えてくれた。これはまさに、宇宙生物学的な研究だったのである。

東京工業大学地球生命研究所(ELSI)の研究棟。ELSIは「Earth Life Science Institute」の略称だ。

また、2012年には、東京工業大学が地球生命研究所(ELSI)を設けて、地球生命の起源を解明し、さらには宇宙における生命の存在を探索する「生命惑星学」という分野を確立しようと目標を掲げた。これもまた宇宙生物学と共通の関心を持っているのは明らかだ。

そこで今回は、後者の地球生命研究所(ELSI)を訪ね、「地球生命の起源」と「宇宙の生命」にかかわる宇宙生物学の話を中心に知見を深めたい。

取材を受け入れてくれたのは、ELSI公式ウェブサイトで、専門領域を「宇宙生物学」と表記している藤島皓介研究員だ。慶應義塾大学で、システム生物学、合成生物学といった、先進的かつ不思議な響きのある研究分野を修めた後、宇宙生物学発祥の地にして梁山泊、NASAのエイムズ研究センターで博士研究員を務めた俊英だ。2016年、日本に戻って現職にある。

東工大大岡山キャンパスのELSI研究棟を訪ね、1階の広々したラウンジのテーブルで相対した。壁一面を埋める大きな黒板があって、たぶん研究者たちはここに概念図や化学式や数式を描いて白熱した議論を展開するのだろうと想像した。まさに映画に出てくるようなシーンだ。

そこで、ぼくは映画に出てくる素人が研究者に向かって、よく分かっていない質問をするような場面を想像しつつ、とても大づかみなことを聞いた。

「そもそも宇宙生物学って何ですか」と。

この分野に名をつらねる研究者には、天文学者(いわば「宇宙」担当)、生物学者(いわば「生物」担当)だけでなく、地学、惑星、海洋、化学、情報科学研究者などさまざまな専門性を持った人たちがいて、どうもとらえどころがないと感じる人がいても不思議ではないのである。

「たしかに、とらえどころがないと思われても仕方がありませんよね。実は、宇宙生物学の研究者によっても、それぞれ答えは違うんじゃないでしょうか」

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