水虫、足を洗う習慣で防ごう 毎日同じ靴は履かない
いつまでも歩けるための健足術(8)
水虫はいくつかのタイプに分けられるが、それぞれに適した薬で治すのが大切だ。自分の足を健康に保つための「健足術」の連載8回目は、日常生活における水虫感染の予防法を紹介する。スポーツクラブや温泉などをはだしで歩いたら、24時間以内にしっかり洗おう。
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前回「水虫、自己判断で放置は禁物 糖尿病の人は要注意」で説明したように、水虫は足指の間やかかとに起こる「足白癬(あしはくせん)」と爪に起こる「爪白癬(つめはくせん)」に分けられる。さらに足白癬は、趾間(しかん)型、小水疱(しょうすいほう)型、角質増殖型の3つに分けられ、タイプ別にのみ薬か塗り薬で治療する。
そのうち爪白癬については、「一度治ったとしても再発率が非常に高く、やっかいな水虫です」と久道勝也理事長は話す。爪白癬は足白癬が先行して起きていることが多い。まず趾間やかかとなどに水虫が起き、爪白癬が起こるというわけだ。
実は、爪白癬にも種類がある。つま先側から爪の内側に白癬菌が入り込むDLSO(遠位側縁爪甲下[えんいそくえんそうこうか]爪真菌症)がほとんどだが、SWO(表在性白色爪真菌症)のように爪表面の傷口から入り込むものもある。
皮膚角質に白癬菌を侵入させない
「この一連の流れを考えると、何よりも大切なことは、白癬菌の皮膚角層への侵入を許さないことです。白癬菌が皮膚内に侵入し、感染が成立するまでに最低24時間かかります。温泉、プール、スポーツクラブといった感染リスクの高い場所を裸足で歩いたときは、24時間以内に必ず足をきれいに洗うようにしましょう」と久道理事長はアドバイスする。
スポーツクラブや温泉でお風呂に入って自宅ではもう足を洗わない、なんてことをしていると、24時間経過していることも。自分は無関係と思わず、しっかり足を洗う習慣をつけよう。
洗うときは、せっけんや洗浄剤をよく泡立てて、足指の間も開き、ていねいに洗い流す。また「濡れている状態で、かかとを軽石などでゴシゴシ強くこすらないこと。角層が傷つくと、そこから白癬菌に感染するリスクが高くなります」と久道理事長は説明する。
足をしっかり洗ったら、足に水分が残らないようによく拭く。またそのあとは靴下をはいて、足を守ることが望ましい。
「靴下は、人からうつらないためにもはいてほしいのですが、自分が白癬菌を持っている場合、家族にうつさないためにも大切です。皮膚科医では五本指ソックスがいいという意見もありますが、足の健康全体を考えるポダイアトリー(足病学)の考え方では、通常のソックスがいいとされています。五本指ソックスでは、時に糖尿病などでもともと虚血のある人の血流を妨げる可能性があるからです」(久道理事長)
ひどく汗をかいたときは、靴下を頻繁に替えることも心がけたい。また、靴もできれば同じ靴を毎日履くのではなく、しっかり乾燥させられるよう、2足を交互に履くなどといった工夫もしよう。靴の中の湿気を減らせるからだ。
糖尿病と密接な関係、細菌感染のリスクも
前述したが、糖尿病と水虫の危険な関係は覚えておきたい。
「糖尿病で神経障害があったりすると、水虫に感染してもかゆみを感じません。糖尿病の人が水虫を放置していると、水虫によって破壊された皮膚のバリアから細菌が侵入して、真皮や脂肪などの皮下組織に感染を起こしてしまいます」(久道理事長)
これは蜂窩織炎(ほうかしきえん)という細菌感染で、通常、感染した部位が真っ赤に腫れて痛くなったり、高熱が出たりするが、糖尿病の人の場合、その症状も出てこない。だが細菌は皮膚の奥に侵入すればするほど、体に大きなトラブルを起こす。
「糖尿病では神経障害が起きてしばしば痛みを感じなくなるので、本人の知らないうちに重症化していきます。痛みという体の緊急警報がないのは怖いことです。そしてもし細菌が筋膜まで行ってしまった場合、感染部位を広い範囲で切開しないと生命の危機にまでつながります。糖尿病と水虫はまったく別々の病気のようですが、糖尿病の人は水虫のリスクが高いなど、実は密接な関係にあるのです」と久道理事長は説明する。
自分の足も、同居している家族の足も、積極的にチェックしていくことが大事だ。
「一番注目してほしいのは、親指の状態です。親指は爪白癬の発生率が高い。神経障害がないかどうかというのも、親指に触れて確かめることです」(久道理事長)
これからは"親指フォーカス"を習慣にすることを心がよう。日々の小さな気遣いが、自分の体全体を守ることにつながる。
下北沢病院(東京都世田谷区)理事長。獨協医科大学卒業後、順天堂大学皮膚科入局。米ジョンズ・ホプキンス大学客員助教授などを経て、米国のポダイアトリー(足病学)に注目し、足を専門的・総合的に診察する「下北沢病院」を設立。日本皮膚科学会認定専門医、米国皮膚科学会上級会員。
(ライター:赤根千鶴子、構成:日経ヘルス 白澤淳子)
[日経ヘルス2019年10月号の記事を再構成]
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