止まらない投信安売り競争 投資家に思わぬしわ寄せもQUICK資産運用研究所 北澤千秋

写真はイメージ=123RF
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2019年の投資信託市場の重大ニュースを選ぶとしたら、個人的には「安売り競争の激化」をトップに推したい。指数連動で運用するインデックス型投信は、あちらが下げればこちらも下げるという信託報酬の引き下げの連鎖が続き、今では保有コストがETF(上場投信)を下回る投信も現れた。この傾向は当面続く見通しで、コスト意識の強い投資家には喜ばしい限りだが、それが市場拡大につながらなければ運用会社はじり貧だ。投資家に思わぬしわ寄せがいく可能性もある。

信託報酬最安のファンド、運用会社は持ち出し

投信業界が驚き、インデックス投資家が欣喜雀躍(きんきじゃくやく)したのが、SBIアセットマネジメントが9月に設定した「SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド」だ。信託報酬(税込み、以下同じ)は追加型株式投信で最低の0.0938%。すべてのインデックス型投信の信託報酬が平均で0.5%程度、アクティブ型では約1.5%といえば、この水準がどれだけ安いかがわかるだろう。国内上場の同指数連動型ETFをみても、最も安い銘柄で0.0945%だ。

同ファンドが投資対象とする米バンガード社のETFはもともと信託報酬が米S&P500種株価指数に連動するETFの中で最安(0.03%)。さらに「投資家にできるだけ指数に近いリターンを提供したい」と、運用会社と販売会社、受託会社(信託銀行)で分け合う報酬もぎりぎりまで削ったという。

S&P500に投資したい人には低コストの海外上場ETFを直接購入するという選択肢もあるが、為替手数料がかからない、定額の積み立て投資がやりやすい、積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)の対象商品で税制優遇が受けられる――など、同ファンドには公募投信ならではのメリットがある。投資家にとって魅力的な投信であることは間違いない。

では、ここまで信託報酬を安くして運用会社には利益が残るのだろうか。同ファンドの残高は現在約60億円で、これに運用会社の取り分(0.022%)をかけると年間収入は単純計算でざっと130万円ほど。現時点では明らかに持ち出しだ。SBIアセットは「長期積み立て投資の対象として持続的な資金流入を期待している。残高が増えればいずれ利益は出る」と話しており、採算度外視の戦略商品と位置付けているようだ。販売会社は現在SBI証券だけだが、拡大を検討中という。

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