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タピオカに長い歴史あり ブーム3度目「今年の一皿」

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NIKKEI STYLE

食をテーマに調査・研究を行い成果を発信するぐるなび総研はこのほど、2019年の世相を反映し象徴する食として「今年の一皿」に「タピオカ」を選んだ。(「『今年の一皿』はタピオカ、各地で長蛇の列 ぐるなび」を参照)

この選定は多くの消費者が納得する結果だろう。今年は台湾の有名タピオカドリンク店が日本に上陸するなど、タピオカ専門店が各地でオープンし、どの店にも長い行列ができた。専門店以外の飲食店や居酒屋でもタピオカドリンクをメニューに入れた店は非常に多く、コンビニ各社もオリジナルのタピオカドリンクを販売しており、タピオカ商品の人気の高さを物語っている。

また、タピオカドリンクを飲むことを意味する「タピる」は、「現代用語の基礎知識 2019ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に入り、「タピ活」などと一緒に使われた点も併せて、タピオカ人気がブームの域を超えて社会現象となったことがよくわかる。

今回のタピオカブームは第3次と言われている。第1次は90年代に白いタピオカの粒にココナツミルクを加えたデザートとして登場した。第2次は台湾で飲まれていたタピオカミルクティーが2008年ごろに日本でも販売された。第1次ブームではスプーンで食べていた白いタピオカが、第2次ではミルクティーのグラスの底にたっぷり沈んだ黒い粒を太いストローで飲む形態で登場した点が新しく、一躍ブームとなった。

そして、今回の第3次ブームでは、組み合わせる食材の種類が多種多様になった点が特徴的だ。かつては紅茶や抹茶などのお茶をベースにしたドリンク類が多かったが、様々なソフトドリンクはもちろん、ビールやエナジードリンクと組み合わせたり、プリンなどと一緒に食べるデザートも提供されている。

東京・神奈川に4店舗を展開しているビアカフェ「iBEER LE SUN PALM(アイビアー・ルサンパーム)」では、19年2月からタピオカにビールを合わせた「タピオカ・ザ・ネクスト タピオカビール」を販売している。

タピオカにビールとレモンゼリーを合わせ、イチゴ、パイナップル、キウイなどのシロップを加えたドリンクは、普段はビールを飲まない女性にも好まれているという。(「ビールの苦み+もちもち感 変わり種タピオカドリンク」を参照)

さて、タピオカがブームになっている割には、その原料に関してはあまり知られていないようだ。タピオカの原料はキャッサバというイモの一種で原産地は南米。毒性があるので、毒抜きの下処理をしてから食用に加工する。

毒抜きしたキャッサバの根茎からとりだしたデンプンに水を加えてから熱し、球状に加工したものをタピオカパールと呼び、このタピオカパールを水で戻してゆでるとタピオカドリンクに入っている、あのプリプリした状態になる。本来のタピオカパールの色は白色で、第2次、3次ブームで登場した黒色はカラメルなどで着色したものだ。

ところで、タピオカは大きなブームになるずっと昔から、食べた人を魅了してきたという。「今年の一皿」の発表会ではトークセッションが行われ、食文化や伝統産業に詳しいフリーライターで、同志社女子大学非常勤講師の長友麻希子さんが興味深いタピオカの歴史について披露してくれた。長友さんは今から約20年前、米国の台湾系のカフェでタピオカミルクティーを初めて飲み、特有の食感に驚いたのがきっかけとなって、武庫川女子大学大学院在学中に「日本におけるタピオカ」という論文を発表している。

論文によると、タピオカが日本に初めて紹介されたのは明治期で、「タピオカプディング」「スープの浮き実」「とろみづけの原料」などの西洋料理の食材という位置づけだった。

明治36年(1903年)に10万部の大ベストセラーとなった「食道楽」という小説にはタピオカに関する記述が出てくるという。作者の村井弦斎(げんさい)は当時の人気作家で、この小説は恋愛話にからめて和洋中の世界の食材を紹介するという構成だった。

「食道楽」ではタピオカについて以下のように記されている。

「印度(インド)の穀物でタピオカもセーゴも似たものです。一時間ばかり水に漬けておいて鍋へ牛乳を沸(わ)かしてタピオカを入れて塩と砂糖で味をつけて三十分間ばかり煮ると葛(くず)のお粥(かゆ)のようなものが出来ます。あるいは先にお砂糖を入れずに出来てからそれへ砂糖とクリームをかけて食べても結構です」

このように朝食用のおかゆとして利用する調理法を説明し、ほかの場面ではこのおかゆを病人の養生のための食事として薦めている。

時代が進み、昭和初期には婦人雑誌にタピオカを使ったメニューが紹介されるようになり、病人食としてタピオカプディングを推奨する記事も出て、タピオカは徐々に日本でも知られるようになった。しかし、当時、一般の家庭でタピオカを手に入れるのは難しかったと思われるので、庶民の食卓には上らない食べ物であっただろう。

ところが、第2次世界大戦で東南アジアへの日本軍の進軍が始まると、今度はタピオカは戦地での重要な食物資源として着目され、インドネシアやラバウルなどの激戦地でキャッサバを栽培して食べられた記録が残っているという。

タピオカは日本で西洋のおしゃれな食材やデザート、病人向けの食事として紹介された後、激戦地で兵隊たちの空腹を満たす食料となった歴史を知って、何度もブームが生まれただけのことはあるタピオカの奥深さを感じた。

次に登壇し、キャッサバの原産地であるブラジルでのタピオカの歴史を語ってくれたのは、ブラジルの現況を伝えるWEBマガジン「メガブラジル」の編集長である麻生雅人さんだ。

ブラジルの先住民族は、わかっている限りでは16世紀以前にはキャッサバを栽培し、そのイモを粉にして焼いて食用にしていたという。「タピオカ」の語源には諸説あるが、先住民族の言葉で「タピ」が「パン」、「オカ」は「家」。つまり「パンの家」という意味が有力と言われているそう。

キャッサバの粉を焼いたものは長持ちするために、大航海時代には航海用の食料として重宝され、ブラジルとポルトガルやアフリカを結ぶ船によって広まったようだ。16~17世紀のポルトガル皇帝が食べた宮廷料理のレシピには、タピオカをプディングやコンソメスープの浮き実に使ったと書かれている。

現代のブラジルでは、タピオカの粉をクレープ状にし、肉やチーズ、ハムをはさんで軽食として食べたり、バナナ、キウイ、チョコレートなどを巻いてデザートにする食べ方が一般的だ。タピオカの粉をフライパンでクレープ状に焼くと、もちもちした食感が楽しめる。

ブラジルは国土が広いため、地域によって食文化が異なり、クレープにする食べ方は、先住民族の文化が色濃く残る北部・北東部で盛んだった。しかし、最近はタピオカ粉がグルテンフリーである点が注目され、都市部のおしゃれな飲食店でも提供され、ファストフードとしても利用されている。

また、イタリアからの移民の多かった南部地方では、タピオカパールがよく食べられ、タピオカパールを水に戻してゆでたものに、ワインと砂糖を煮詰めたソースをかけたり、そこにクリームを入れたりしてデザートにすることが多い。

さらに、最近のガストロノミー(グルメ)の世界では、タピオカパールをとった後の汁を発酵させてうま味成分として活用している。この活用法は先住民族にも用いられていたという。

さて、「今年の一皿」の準大賞に選ばれたのは発酵食メニューだ。これは味噌、しょうゆ、麹(こうじ)、ヨーグルト、納豆などの発酵食材・食品を取り入れた料理の総称である。

農林水産省が11月に開催した和食を広めるイベントでは、女子大学生が「タピオカお味噌汁」を提案して話題となった。くしくも「今年の一皿」と準大賞が組み合わされたメニューである。

ぐるなび総研の滝久雄社長は発表会で、「今年の一皿を選定することで、日本の食文化を育てることに貢献したい」と語っている。ブラジルでの例を見てもタピオカの食べ方は多様なので、今後どのように日本の食文化に影響を与えていくのか興味深いところだ。

(フリーライター 芦部洋子)

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