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三浦雄一郎さん 大骨折、病床からはい上がった最高峰

冒険家の攻め抜く健康法(下)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

前回記事「三浦雄一郎さん 重症メタボから70歳エベレストへの道」に引き続き、世界的冒険家でプロスキーヤーの三浦雄一郎さんによる話を紹介する。この話は、2019年11月、「北里研究所病院 予防医学デー フェスティバル2019」の記念シンポジウムにおける三浦さんの講演をまとめたもの。80歳のエベレスト登頂から6年半。87歳となった三浦さん自身が、70歳から達成した合計3回のエベレスト登頂と、その間の心臓手術や骨盤骨折という試練を振り返る。「一歩ずつ、繰り返す。諦めなければかなう」という思いで挑戦し続けた三浦さんのエネルギーの源はどこにあるのか。

1日3食の鮭スープで骨盤骨折から驚異の回復

2003年、70歳のときに世界最高峰のエベレスト(8848メートル)登頂を達成し、最高齢登頂記録を更新した三浦雄一郎さんは言う(70歳での登頂成功までの話は「三浦雄一郎さん 重症メタボから70歳エベレストへの道」をご覧ください)。

「エベレストは、ものすごい山です。景色も素晴らしく、登りながら感動していました。そして、もう一回登ってみようと思ったのです」

ところが当時、持病の不整脈がひどくなっていた。フラフラしたり、階段を上がって2階に行き、気がついたら気を失いかけているということも。国内だけでなくアメリカの病院でも診察を受けたが「無理です。治りません」と宣告されてしまう。そんな中、帰国後、心臓手術で世界的に注目されている医師と出会い、2度の手術を経て、75歳のときに2度目のエベレスト登頂を果たす。過去に70歳代でエベレスト登頂を達成したのは三浦さんただ一人だと、世界で報道された。

「運良く75歳でも登頂を果たすことができ、『よし、いよいよ次は80歳だ』と。息子の豪太(アスリートであり加齢制御医学の研究を行う)は、『お父さん、まだ登るの?』とあきれていましたね(笑)」(三浦さん)

80歳のエベレスト登頂を目標にトレーニングを続けていたが、次に襲った困難は、致命的とも思われた。2009年2月、76歳のときにスキーを滑っていた際にジャンプで失敗し、硬い氷の上に腰から落下したのだ。

左大腿骨付け根骨折、右の骨盤を恥骨まで骨折、という大ケガ。救急車で搬送された三浦さんは「手のつけようがない大ケガです。治っても車いす生活でしょう」と医師から伝えられた。

それでも引き下がる三浦さんではない。復帰はあり得ないと言われても「何としても治して、80歳でエベレストに登りたい」。ケガから1カ月間はリハビリも受けられない状態だったが、その状態でもできることはないかと思考を巡らせた。

「入院中思ったのは、病院の食事があまりおいしくないということ(笑)。まあ、おいしすぎると食べ過ぎて太ってしまいますからそれでよいのかもしれませんが、これじゃあ骨がくっつかない。食事面で何かできることはないだろうかと考えました」(三浦さん)

当時は真冬の2月。生鮭のシーズンだ。知り合いの魚屋さんに、鮭の頭と中骨を分けてもらい、ニンニク、ショウガ、昆布、ゴボウ、ニンジン、タマネギなど野菜をたっぷり加えて鉄鍋で煮込んだスープを作ってもらった。「鮭の頭からしっぽまでの栄養が溶け込み、味噌味で、これがとてもおいしい。病院食はおいしそうなものだけつまみ、1日3食このスープをいただきました」(三浦さん)

毎週、検査を行っていたが、2カ月後に医師が「あれ?」と驚いた。

折れた骨が正常な位置に戻り、くっつきはじめていた。「これが77歳の骨ですか? 中学生や高校生並みの早さで回復しています」

2カ月半後にリハビリを始め、平行棒で歩けるようになり、松葉杖の歩行が始まり、1年足らずで再び歩行可能となった。

高度順応の際に取り入れた「年寄り半日仕事作戦」

大ケガを克服し、いよいよ80歳のエベレスト登頂を目前にした半年前。8848メートルという高度に体を慣らす「高度順応」のトレーニングがヒマラヤで始まった。

エベレストは「宇宙に一番近い場所」と表現される。

人間の有酸素能力をはるかに超えた超高所で登山をするということは、肉体への負荷は極めて大きくなる。エベレスト山頂では、20歳の登山家でも90歳相当になると言われることもある。肉体年齢が70歳近く加算される状態、つまり三浦さんなら150歳の身体能力になるという計算だ。さらに、いつどんな悪天候にさらされるかもわからない。

「この会場の空気の酸素濃度は21%ぐらいですね。エベレスト山頂の酸素濃度は7%以下になります。この会場の酸素濃度を7%以下にすれば1分で気を失い、5分で命を失うでしょう。そうならないために、高さに体を慣らす高度順応が行われます。私も4000メートル、5000メートル、7000メートルと、徐々に高さを積み上げるトレーニング期間に入りました」(三浦さん)

5200メートルに達したころに、完全に治療していなかった虫歯が悪化。夜眠れないほどの痛みに襲われる。心臓の不整脈も悪化した。同行していた国際山岳医の大城和恵医師は、診察の結果、帰国して心臓手術をするしかない、と判断。

本番の登頂出発は2013年3月中旬に迫っていた。その4カ月前の2012年11月に日本に戻り心臓の手術、さらに翌年1月15日に再手術。出発まで2カ月を切っていた。

「『何としても今年登らないと』という精神状態にありました。事実、決行してよかったと思っています」(三浦さん)

登頂直前、心臓のリハビリをしながらの高度順応トレーニングの際に、三浦さんは「年寄り半日仕事作戦」というやり方を取り入れた。年寄り半日仕事、とは、昔から日本の農家などで伝わる、「半日仕事をして、残りはのんびり過ごす」という健康管理の仕方だ。

朝出発して昼までを登山にあてる。お昼をゆっくり食べて、昼寝をする。目が覚めたら1時間ほど散歩する。こうやって、焦らず、年齢に合ったペースで高度順応を16日間続けて、ベースキャンプ(標高5350メートル)に到達した。このペースにより、1日の標高移動差はだいたい500メートル以内におさまったという。これは高度順応の生理学から見ても理にかなっていて、実際に今回のトレッキングからアタックに至るまで、メンバー全員(三浦さん、次男の豪太さんら日本人隊員4人と、登山をサポートした6人のシェルパ)、高度障害がほぼ出ない状態で順調にベースキャンプに到着することができたという。

5月16日からベースキャンプを出て頂上アタック(サミットプッシュ)を開始し、6カ所のキャンプを経由し、頂上を目指した。

標高8500メートルで手巻き寿司に舌鼓

登頂の最中も、食事を決しておろそかにしないのが三浦さん流だ。

三浦さんチームは、8500メートル地点で、持参したウニの瓶詰や塩辛を材料に手巻き寿司を食べたという。羊羹(ようかん)と抹茶も持って行き、氷を鍋で溶かしてお茶の時間も。「作法も知らないのに、狭いテントで膝をつきあわせて、お茶をいただきました。そして、休憩しようとぐっすり寝込んだ。しっかり食べて、爆睡したおかげで、80歳にして山頂にたどり着くことができました」(三浦さん)

2013年5月23日午前9時(日本時間午後0時15分)、三浦さんチームの登頂が達成された。

心臓手術、骨盤骨折など、通常であれば「もう、やめておこう」と判断するような出来事に見舞われながらもエベレスト登頂を果たした思いはどこにあったのか。

「いろんなことが起こりました。しかし、それは、『できない』という理由にはならないと思いました。とにかく、目標に向かって一歩ずつ、できることを繰り返す。諦めなければかないます。何歳になっても行動をすること。僕の場合はちょっとむちゃくちゃなやり方ではありましたが(笑)、そうやって行動することがアンチエイジング法となっているのだと思います」(三浦さん)

講演会場では、最高齢登頂記録を打ち立てた登頂直後に、山頂から「ありがとう。ありがとう。世界最高の気持ちです。まさか80歳でエベレスト山頂に着くとは、人生最高の幸せでした。最高に疲れました。これ以上ない。でも、80年、まだまだいける、そんな感じです」とにこやかに話す三浦さんの映像が流された。

骨折、心臓の持病を抱えながらの頂上アタック。目標に向かう悲壮感というよりは、常にユーモアを忘れず、食べることを楽しみながら冒険を繰り返す三浦さんの姿に「年齢を重ねても、こんなふうに生き生きとありたい」と思った参加者は多かったのではないだろうか。

(ライター 柳本操、カメラマン 菊池くらげ)

三浦雄一郎さん
プロスキーヤー、クラーク記念国際高等学校校長。1932年青森市生まれ。64年イタリア・キロメーターランセ日本人初の参加。66年富士山直滑降。70年エベレスト・サウスコル8000m世界最高地点スキー滑降(ギネス認定)。85年世界7大陸最高峰スキー滑降完全達成。2003年次男・豪太氏とエベレスト登頂、当時の世界最高年齢登頂記録(70歳7カ月)樹立。08年75歳で2度目、13年80歳で3度目のエベレスト登頂(世界最高年齢登頂記録更新)。

[日経Gooday2019年12月2日付記事を再構成]

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