稲盛氏とウェルチ氏に学んだ対話の力ベネッセホールディングス社長 安達保氏(下)

ベネッセホールディングスの安達保社長
ベネッセホールディングスの安達保社長

ベネッセホールディングスは瀬戸内海・直島でのアート活動をつうじた地域づくりなどでも知られる。安達保社長は「ベネッセが手がける事業は教育や介護など社会課題の解決そのもの」と説き、「ダイバーシティー(多様性)」や「サステナビリティー(持続可能性)」といった新潮流との親和性の高さを成長に結びつけたい考えだ。こうした発想を支えるのが、「10年ごとに変えてきた」というキャリア。現場の社員には自らの経験から「多様な経験を持った人たちが集まることで、組織が力を発揮できる」と訴える。

<<(上)「先延ばし」で痛恨の一撃 進むべき方向、すぐ決断

――リーダーとしての原体験はどのようなものでしたか。

「米ゼネラル・エレクトリック(GE)の金融子会社、GEキャピタルの日本法人にいたときのことです。GEキャピタルは1999年、会社更生手続き中だった日本リースのリース事業を買収しました。負債総額は2兆円を超え、当時としては戦後最大規模だったこともあり、大きな話題になりました。私は担当者としてこの買収に関わり、日本リース子会社で自動車リースを手がける日本リースオート(後のGEフリートサービス)の社長に就任しました」

「このとき、GEは米国から経営幹部の多くを派遣しました。しかし、私はマネジメントチームにはダイバーシティーが重要だと考えました。そこで、GEから派遣された者と、従来の社員、新たに採用した者、それぞれ3分の1ずつでチームをつくりました。GEの考えだけを押し付けてもいけないし、従来の社員の視点が中心となって変革が進まなくなっては困ります。外部の視点が入ることで、バランスよく経営にあたることができると考えたのです。結果として、リース業にとどまることなく、周辺のさまざまなサービスを強化することで順調に業績を伸ばし、収益力の高い会社に成長させることができました」

耳を傾けて決断、間違いならすぐ撤回

――経営者として現場との直接対話を重視しています。なぜそう考えるようになったのですか。

「三菱商事からDDI(第二電電、現KDDI)に出向して、創業者である京セラの稲盛和夫さんに出会ったときです。当時はDDIが立ち上がったばかりで、社員は20~30人ほどでした。稲盛さんは必ず週に1回、京セラの施設に間借りしていたDDIを訪れるのですが、その際、社員一人ひとりと話をして、現場で何が起こっているのかをしっかり聞くのです。三菱商事では社長はとても遠い存在で、会ったこともありませんでしたから、非常にびっくりしました。夜に畳敷きの部屋で酒を酌み交わしながら話をすることも度々でした」

「稲盛さんは話し合うなかで必ず結論を出して、『こうやろう』と意思決定するのです。翌週来たときに、うまくいっていないことがあれば、『では、こっちでやってみよう』とフレキシブルに前週の決定を変更するのです。そうやって物事がどんどんスピーディーに進んでいきました。リーダーは早く決断し、間違ったらすぐ方向修正すべきだと学びました。決断することとフレキシビリティー(柔軟性)とのバランスが重要ですね」

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ウェルチ氏の「ラウンドテーブル」に感銘