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富永京子著 左右社

富永京子著 左右社

今の日本には、社会への自己主張を「わがまま」と捉えかねない空気がある。本書はそれを逆手に取り、「わがまま」を「社会をより良く変える行動」と定義、その方法をやさしく説く。

心に刻みたいのは、「ふつう幻想」にとらわれるあまり不平等が見えにくい今こそ、個人の不満やモヤモヤに埋もれている社会の問題に気づくことが大事との指摘。日々の人間関係に応用できる気づきも多い。「モヤモヤの種をことさら探す→社会運動を遊ぶ」という論の運びの軽さに引っかからないでもないが、あるいはこれは時代性を踏まえた「戦略」か。社会学者の著者自身も本書で「大いなるわがまま」を実践していることに気づきたい。

要点1 「ふつう幻想」が不平等を覆い隠す

社会への主張を「自己中心的」と感じる意識の背景には、高度成長期以来の「ふつう幻想」(自分たちは皆「ふつう」=同じ条件を背負っているという思い込み)がある。しかし今は、人によって接する情報も価値観も生活実態も違う多様化の時代。学校のクラスにしても、貧困状態、発達障害、LGBTなどの事情を抱える人が必ず一定数いる。実は皆違うのに表面的には「ふつう」だから助けるべき人の存在に気づかず、苦しみを抱える側も、それが理解されるとは思えず口をつぐんでしまう。不満やモヤモヤを言葉にしてぶつけ合うことで、一見違う問題の根っこに同じテーマが見えてくる。

要点2 「わがまま」は社会を良くするきっかけ

「わがまま」な運動に対して、そんなことをやっても社会は変わらないと冷笑する人がいる。そんな彼らは社会運動に結果を求めすぎていないか。制度や法律が変わらなくても、デモなどで社会に意見することにはいくつもの意味がある。決定的に重要なのは多様な意見、解決すべき問題の存在を世に知らせること。これなしでは問題は永遠に解決しない。例えば、生まれながらのハンディというものの多様さが世間に浸透し、自己責任の一言では片づかない貧困問題の根深さが理解されて初めて、事態は改善に向かう。「わがまま」は社会を良くするきっかけなのだ。

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