オーディオシステムが「億」超え

小沼 2000万円って高級外車やマンションみたいな価格ですね。どんな人が買うんですか?

小原 日本でも買う人はいますが、増えているのはアラブやドバイ、中国の富裕層。彼らをターゲットにすることで価格が大きく上がっているようですね。最近一番印象に残っているのは、11月に開催された「2019東京インターナショナルオーディオショウ」で見たTechDAS(テクダス)の「Air Force Zero」というレコードプレーヤー。重量350キログラム、予定価格は4500万円以上だそうです。

「2019東京インターナショナルオーディオショウ」で展示されたTechDAS「Air Force Zero」。同ブランドのハイエンド機で、2015年から開発し今年ついに完成したという

小沼 レコードプレーヤーって、つまりアナログレコードを再生するプレーヤーってことですか。それが4500万円って、すさまじいですね。

小原 しかもこれはプレーヤー単体の値段なので、この製品に見合ったアームやカートリッジを入れれば5000万円オーバー、アンプやスピーカーも含めれば1億円を超えるでしょう。昔から本格的なオーディオシステムには高額なものも多かったですが、それでもこの金額には驚きました。

小沼 専門家の小原さんでも驚くほどですか。手軽に音楽を楽しみたい人と、徹底的にお金をかけても音質を追求したい人。昔からそれぞれいたのだとは思うのですが、その差が広がっているのかもしれませんね。

Amazonがハイレゾ音源配信を開始

小原 ちなみに、インターナショナルオーディオショウのTechDASブースの一角ではCDプレーヤーが用意されておらず、CDを持ってきた人が希望したシステムで試聴できないということがあったそうです。

小沼 アナログレコードが再生できるのにCDが再生できないのは面白いなあ。そういう時代なんですね。実際、個人的にもCDは本当に買わなくなりました。

小原 その一方で、9月にAmazonが「Amazon Music HD」という、ハイレゾ音源のストリーミング配信を開始しました。日本では「TIDAL」など海外のハイレゾストリーミングサービスが利用できずマニアは困っていたのですが、そんな中で日本でも多くの人が利用しているAmazonが、何の前触れもなくこのサービスを開始したことには驚きました。

小沼 配信楽曲は6500万曲以上で、iPhoneだと5s以降であれば対応しているんですね。

小原 ハイレゾ対応はそのうち数百万曲のようですが、これでハイレゾがぐっと身近になりそうです。ハイレゾを聴くためのオーディオ機器も2020年は盛り上がるんじゃないかな。

小沼 たしかに、これを機会にハードを見直そうという人も出てくるかもしれませんね。そもそも完全無線イヤホンなどだとハイレゾに対応していないものも多いですし。

小原 その完全無線イヤホンは、今年元気だった分野ですね。

高級ブランドが完全無線イヤホンに参戦か

小沼 完全無線イヤホンは、この連載でも数々の製品を取り上げました。

小原 完全に定着したといえるでしょう。1年前はまだ様子見しているメーカーもありましたが、今はどこも無視できないほど存在感を増しています。メーカーに聞いていても、売り上げの中で大きなパーセンテージを占めるようになっているようです。

小沼 GfKジャパンの「2019年上半期 家電・IT市場動向」によると、完全無線イヤホンの販売本数は前年の2倍強に。下半期のデータはまだ出ていませんが、今後も成長が見込まれます。

小原 今はまだ言えないのですが、今後はハイエンドのイヤホン・ヘッドホンメーカーも完全無線イヤホンに参入してきます。2020年はハイクラスの完全無線イヤホン登場に拍車がかかるでしょうね。

小沼 記事「1万円台の完全無線イヤホン 新興ブランドも音侮れず」で取り上げたような手ごろな価格の製品も増えていますし、手軽な製品と、高価だけど性能に優れた製品の2極化が進みそうですね。ちなみに2019年に発売された完全無線イヤホンの中で、小原さんのベストは?

小原 Noble Audio初の完全無線イヤホン「FALCON」ですね。Noble Audioといえば基本的に10万円以上のイヤホンばかりを作っているブランド。それが2万円以下の価格で完全無線イヤホンを発表したのですから、かなり戦略的に仕掛けてきていると思います。

「FALCON」(税込み1万7820円)。オーディオファンにから高い支持を得るNoble Audio初の完全無線イヤホンだ

小沼 「FALCON」はこの連載でも取り上げる予定ですが、サイズも小さいし、格好良いですね。

小原 音もすごく良いし、今の僕のお気に入りです。高級ブランドが完全無線イヤホンに参入してくる先駆けのような動きだとみています。2020年は、「このブランドも!」と驚くようなところからも完全無線イヤホンが登場すると思いますよ。

小原由夫
1964年生まれのオーディオ・ビジュアル評論家。自宅の30畳の視聴室に200インチのスクリーンを設置する一方で、6000枚以上のレコードを所持、アナログオーディオ再生にもこだわる。2020年に買いたいAV機器は「ずっと狙っている今は言えない国産MCカートリッジ」。
小沼理
1992年生まれのライター・編集者。最近はSpotifyのプレイリストで新しい音楽を探し、Apple Musicで気に入ったアーティストを聴く二刀流。2020年に買いたいAV機器は「ハイレゾ対応イヤホン」。

(文 小沼理)

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