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五輪の切符をつかむマラソン選手の共通点 有森裕子

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NIKKEI STYLE

大きな物議を醸した2020年東京五輪のマラソンと競歩競技は、東京の暑さを回避するために北海道札幌市で開催されることで決着しました(「有森裕子 五輪マラソン札幌移転、遅すぎる本気の議論」)。しかし、急な移転決定のため、日程やコースなどをめぐって国際オリンピック委員会(IOC)や、陸上競技を統括するワールドアスレティックス(世界陸連)との協議が難航し、準備が思うように進んでいないようです。関係者の皆さんのご苦労は計り知れないものがありますが、関係各所とのコミュニケーションをしっかり取りながら、選手たちが実力を発揮できるレースの開催を目指していただけるよう願うばかりです。

一方、2019年9月15日に開催された「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」(東京五輪マラソン日本代表選考会)で五輪代表に決まった男女上位各2人の選手は、札幌で開催されるレースに向け、既に気持ちを切り替えてトレーニングに励んでいることと思います。既に切符を獲得している選手は、そのアドバンテージを生かして、しっかり対策を練って準備していただきたいと思います。

自分のペースを守り抜くために必要なこと

さて、今回はいよいよ2020年開幕となる東京五輪の代表切符をつかんだ女子選手の強みや、残り1枠を狙うために必要なことについてお話ししたいと思います。

MGC の女子のレースは、私もNHKの中継で解説をさせていただきましたが、参加条件を満たした15人のうち、実際に走ったのは10人という前例のない少人数でした。選手の数が少なく、ペースメーカー[注1]もいないという特異な状況下で、ペース配分や勝負の仕掛けどころなどの判断をすべて自分でしなければいけない、とても難しいレースだったと思います。

そんな難しいレースで、見事2時間25分15秒で優勝して代表の座をつかみ取ったのは、前田穂南選手(天満屋)でした。彼女の勝因は、ずばり「自分のペースを守り抜いたこと」でしょう。周りに誰がいようが何人いようが、彼女には関係ないように思えました。

レース前の記者会見で、前田選手は「周りに惑わされないで自分(の判断)で行きたいと思います」と発言し、天満屋の武冨豊監督も「自分が行けると思ったら行けばいい」という指示をしていたようです。実際にレースを見ていても、集団のペースに翻弄されず、集団から少し横に離れて走っているように感じました。レースの入りは一山麻緒選手(ワコール)に引っ張ってもらっていたものの、8.3km過ぎで冷静に判断して自然と前に出て首位に立ち、20kmからは独走状態になりましたが、走りのリズムをさほど落とさずに淡々と歩を進めているように見えました。

東京五輪の切符がかかったあの舞台で、自分のペースを崩さず、冷静に判断できたことは評価すべき点です。自分のペースを守り、判断に迷いがないというのは、「人は人、自分は自分」と考えられる性格面も大きいのでしょうが、「これまでの練習やレースでの経験を信じ切ることができている」からではないかと私は思います。こういう選手は、周りの選手にとっては脅威でしかありません。東京よりは涼しいとされる札幌で開催される東京五輪の戦いは、従来の想定よりもハイペースになることが予想されます。そんな中でも彼女のブレのなさは強みになるはずです。

開催地が突然の決定で札幌に変わったことも、前田選手にとっては何の影響もないでしょう。前田選手は2017年8月に札幌で開催された北海道マラソンで、冷静な判断で逆転優勝(2時間28分48秒)した成功体験があります。彼女にとっては、開催地変更はむしろ有利に働くかもしれません。

紙一重の運命を分けるのは「自分を信じ切る強さ」

2位の鈴木亜由子選手(日本郵政グループ)は、スタート前は非常に緊張していたものの、しっかり実力を発揮して2時間29分02秒というタイムで結果を残しました。さまざまな彼女のインタビューを聞いていても、自分をしっかり分析し、説明できる頭の良さを感じます。その判断力で五輪本番も、大きく崩れる可能性は少ないのではないかと思います。

[注1]あらかじめ設定されたペースで指定された距離まで走り、先頭集団を引っ張る役目を果たすランナーのこと。

2016年のリオデジャネイロ五輪では5000mの代表だった鈴木選手ですが、2018年の北海道マラソンで初マラソンに挑戦し、見事に優勝(2時間28分32秒)した経験があります。今回の開催地変更は、前田選手と同じく、彼女にとっても問題はないと思います。

一方、2位とわずか4秒差の2時間29分06秒で五輪の切符を逃した3位の小原怜選手(天満屋)は、最後の2.195kmを8分26秒でカバーする走りを見せてくれました。最後にこれだけの力が残っているのなら、もっと前の段階で思い切って勝負を仕掛けていれば…と悔やまれます。彼女は2016年リオ五輪の選考会を兼ねた名古屋ウィメンズマラソンでも、たった1秒差で代表の座を逃しています。身体能力はすごいものを持っていて、代表まであと一歩なのに切符をつかめない。その原因として、彼女は何かに迷いがあり、自分の力を信じ切れていないところがあるように感じます。自分や周りをもっと信じられるようになれば、もっと早い段階で勝負を仕掛けるなど、さらに力を発揮して良い結果につなげることができるのではないでしょうか。

8位の安藤友香選手(ワコール)は、2時間21分36秒という誰よりも速い自己ベストタイムを持っていて、MGCでも調子が良いと聞いていたにもかかわらず、いざ蓋を開けると何かの歯車が狂ったかのように、タイムをがくんと落としてしまいました。

実力はあっても、当日のコンディションやメンタル次第で可能性は100にも0にもなる。それが、五輪を目指す戦いの厳しさです。今後、五輪代表の残り1枠は、12月から3月にかけて開催されるMGCファイナルチャレンジの対象レースで決まります。この短期間で、メンタルをどう強化し、動じずブレない気持ちを作れるかが、代表の切符をつかむ鍵になるでしょう。

7位の福士加代子選手(ワコール)は、今の自分ができることを全力で出した走りでした。可能性があれば全力で立ち向かっていく姿は、他の選手たちにとっても大いに刺激になっていることでしょう。MGCファイナルチャレンジでも気負わず、彼女らしく全力で立ち向かう姿を見守りたいと思います。

「残り1枠」私が注目している選手は…

MGCファイナルチャレンジで私が注目しているのは、MGCで5位だった野上恵子選手(十八銀行)です。彼女は6月に左すねを故障してしまい、納得のいくペースでの練習は積めていなかったと記者会見で話していました。でも、MGCでは40km以降はどの選手よりもラップタイムが速かったですし、「たられば」の話になるものの、左すねの故障さえなかったら、スピードがある選手で暑さに対する耐性にも定評があるので、上位争いに絡むことができたように思います。

MGC6位の一山麻緒選手(ワコール)や4位の松田瑞生選手(ダイハツ)も、残り1枠を狙える実力は十分に持っていると思います。

どんな試合展開になったとしても、自分の判断に迷わず走り切る力を持つためには、試合はもちろん、日々のトレーニングの中でも常に自分の頭で考えて判断し、成功するという経験の積み重ねが必要になります。五輪代表に決まった選手も、これから代表をつかみに行く選手も、そうした経験を本番までの残りの時間でさらに積んでいってほしいと思います。

【2020年東京五輪 マラソン日本代表の選考方法(男女共通)
【1】MGCの上位2人を選出
【2】MGC終了後に行われるMGCファイナルチャレンジ(男子は福岡国際マラソン、東京マラソン、びわ湖毎日マラソンの3レース、女子はさいたま国際マラソン、大阪国際女子マラソン、名古屋ウィメンズマラソンの3レース)で設定記録(男子:2時間05分49秒、女子:2時間22分22秒)を上回った選手のうち最速の1人を選出
【3】2の該当者がいない場合は、MGCで3位となった選手を選出
参考:男子日本記録は2時間05分50秒、女子日本記録は2時間19分12秒
※2019年12月10日時点で、福岡国際マラソン(12月1日)とさいたま国際マラソン(12月8日)が終了。設定記録を突破した選手はいなかった。
※MGC3位は、男子は大迫傑選手(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)、女子は小原怜選手(天満屋)。

(まとめ:高島三幸=ライター)

有森裕子さん
元マラソンランナー。1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。

[日経Gooday2019年12月10日付記事を再構成]

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