『ぼくらの7日間戦争』アニメで復活 宮沢りえも出演
1985年刊行の宗田理の小説を88年に実写映画化した『ぼくらの七日間戦争』。管理主義の大人に反旗を翻した中学生たちが町外れの工場に立てこもる。本作が女優デビューとなる、当時14歳の宮沢りえの初々しい魅力と、中学生たちが戦車に乗るクライマックスが鮮烈な印象を残した。それから約30年、同じ小説を原作に初のアニメ映画として登場する。
本作は「ぼくら」シリーズを発刊する児童書レーベル「角川つばさ文庫」の10周年がきっかけ。現代らしい問題を織り込みつつ、より幅広い層が楽しめるようにと、設定を高校生に変えるところからスタートした。
主人公の守は突然引っ越すことになった片思いの綾や同級生らとともに、使われていない古い石炭工場に7日間隠れることを計画する。ところが、工場には家族とはぐれたタイ人の子どもが潜んでいた。不法滞在で捕らえようとやってきた入国管理局の職員に立ち向かうが、徐々に個々が抱える問題が明らかに……というストーリーだ。
88年の実写版とは大きく異なるが、村野佑太監督はその意図を「『七日間戦争』の持つ"大人への反抗"というキーワードには2つの意味があると思うんです。1つは物理的に大人と対決するということ。自分より経験も力も勝っている人をやっつける爽快さがある。そしてもう1つは、いつか自分も大人になることへの葛藤。今回はより大人に近い高校生が主人公なので、物理的な対決もありつつ後者を強く描きました」と話す。
リアルで等身大の高校生を描くために、村野監督自ら高校に出向いてインタビューも行ったという。「そもそも今の子どもたちは、前作の中学生のように大人を敵と思っていない。それよりも、SNSをはじめとするコミュニティーの中での確執や、そこで自分がどう見られているかのほうが重要なんです。気持ちを解放する場になるどころか、がんじがらめになっている。こうした状況も映画では描いています」(村野監督、以下同)
一方で子どもらしい知恵と工夫で大人をやり込める――そんな原作や実写版の持つ爽快感や遊び心も堅持している。それが表れているのが、対決の舞台となる北海道の廃虚と化した石炭工場だ。
「スマホを肌身離さない今の子どもたちがロストテクノロジーの象徴みたいな所で戦うのは絵的にも面白いし、高校生が立て籠もりたくなるような秘密基地感もあった。また、工場の地下坑道は、下水道を通って地上へと出る実写版のシーンをほうふつさせる。要所では原作や実写版を踏襲しているので、楽しみにしてほしいです」
特筆すべきは宮沢りえが当時と同じ中山ひとみ役で出演していること。「中山ひとみは、実写版を知る人にとっては永遠の少女像。かつての"七日間戦争"を戦い抜いた人だからこそ、その言葉は30年後の高校生たちにも説得力を持つ。それに、宮沢さんが出てくれたことで、本作が実写版の続編というとらえ方もできる。原作、実写版好きにとっては夢のようなことだと思います」
(日経エンタテインメント!12月号の記事を再構成 文/前田かおり)
[日経MJ2019年12月13日付]
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