風呂に入らず周囲に悪臭 「スメハラ」モンスター部下フェリタス社会保険労務士法人代表 石川弘子(7)

「いや、そんなこと、突然言われても。何もそんな極端なこと言わなくても……」

A田は女性社員をなだめたが、全員「これ以上は我慢できない!」と断固たる態度だった。(弱ったな……)A田は頭を抱えた。

A田は同期の人事課長にN原の「スメル・ハラスメント」の件について相談した。人事課長は「悪臭で周囲の業務効率が下がっていたり、ましてや客からクレームも来ているなら会社としても対策をとる必要がある」と人事部として対応を検討すると言った。

数日後、N原は人事から呼び出され、毎日の入浴と着替え、煙草の後の口臭ケアなどをするよう注意を受けた。その旨をA田から聞いたY山は、

「どれも小学生でもやってる当たり前のことですけどね」

と呆れていたが、「ちゃんとN原さんが守ってくれるなら」と、退職するという意思は撤回した。その後、N原も少しは気を遣うようになり、以前ほどの臭いはしなくなった。

デリケートで難しい企業のスメハラ対策

臭いの問題は非常にデリケートなので、不快に思っていてもなかなか本人に言いにくいことである。また、不潔な臭いだけでなく、柔軟剤などの強い匂いで頭痛を引き起こす等、ある人にとってはいい香りでも、人によっては不快に感じることもある。不快な臭いの中では業務に集中できず、効率も悪くなるだろう。会社としても何らかの対策が必要だ。

臭いについての相談を受けたら、「仕方がない」「気にしすぎ」などと放置せず、取り組むべき課題として認識することが第一だ。だが、一方で相談者が個人的な感情で過剰に反応したり、臭い以外の感情的な対立などが隠れていたりする場合もあるので、客観的に話を聞くことが重要だ。相談を受け、対応が必要と判断した場合は、臭いを発している加害者に対して直接改善を促すが、伝える際は十分な配慮が必要だ。体臭や口臭といった身体的なことを指摘されれば誰しも恥ずかしい気持ちになるだろう。本人の気持ちに配慮しつつ、冷静かつ客観的に伝えることが必要だ。その上で、具体的な対策を提案したい。

伝え方を間違えると、本人は傷つき、恥をかかされたという思いから意固地になったり、場合によってはいじめられたという誤った捉え方をされたりしてしまうこともある。デリケートな問題だけに、最大限の配慮が必要だ。

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石川弘子
1973年福島県生まれ。青山学院大学経済学部卒業。フェリタス社会保険労務士法人代表。一般企業に勤務するかたわら、2003年に社会保険労務士資格取得、04年独立。産業カウンセラー、キャリアコンサルタントの資格も保有し、中小企業から上場企業までさまざまな企業の労務相談を受けるほか、企業のメンタルヘルス対策などにも携わる。著書に『あなたの隣のモンスター社員』。

モンスター部下 (日経プレミアシリーズ)

著者 : 石川 弘子
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 850円 (税抜き)

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