急な雨に傘シェアリング 駅や街に広がる1日70円の輪

18歳のときに社会起業家を志す。家電量販店で販売員としてトップクラスの成績を上げた後に、マレーシアの大学へ留学。帰国してアイカサを運営するNature Innovation Groupを起業。19年12月現在、25歳。中国語と英語が堪能(写真:新関雅士)
18歳のときに社会起業家を志す。家電量販店で販売員としてトップクラスの成績を上げた後に、マレーシアの大学へ留学。帰国してアイカサを運営するNature Innovation Groupを起業。19年12月現在、25歳。中国語と英語が堪能(写真:新関雅士)

突然の雨のためにビニール傘を買った経験は誰にでもあるだろう。1本500円前後はするので痛い出費だ。さらに、ビニール傘が毎年、大量に廃棄処分されることで、社会全体にも多大なコストが生じている。この問題を解決しようと立ち上がったのが、傘のシェアリングサービス「アイカサ」を運営するNature Innovation Group社長の丸川照司氏だ。2018年12月のサービス開始からまだ1年ほどだが、東日本旅客鉄道(JR東日本)、西武鉄道などの鉄道各社、福岡市、東京都渋谷区、早稲田大学など、名だたる大企業や公共機関が続々と導入している。25歳の若き起業家は、傘シェアリングで社会をどう変えるのか。

東京なら自転車より傘を直感

「マレーシアに留学していた17年当時、日本で自転車のシェアリングサービスへ参入する企業がニュースになっていた。でも東京都内で移動するなら自転車より、徒歩。日本でシェアリングサービスをするなら自転車より傘じゃないか、と直感的に思った」。丸川氏は、起業のきっかけをそう振り返る。既に、傘のシェアリングは中国やカナダでも始まっていたことが背中を押した。

早速、大学を中退し日本に戻った。「大学は自分が何をしたいのか探す場所だと思っていたので、迷うことは無かった」。留学費用は日本で働いて、自分で稼いだお金だった。18年3月から渋谷で現在のビジネスモデルの原型となる仕組みを検証した。そこで自己資金は尽きたが、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家など25カ所以上を回って資金を調達。18年12月から「アイカサ」を始めることになる。

利用法は、まずスマートフォンのLINEアプリで「アイカサ」と検索し、「友だち」になる。アイカサのシェアスポットには、ダイヤルロックが掛けられた傘が置いてあるので、その傘のQRコードをスマホで読み込むと解錠に必要なパスワードが表示される。傘のロックを解いて利用し、返却時には傘置き場の返却用QRコードを読み込む。傘は同じ置き場に返す必要は無く、アイカサの他のスポットでもいい。

利用料金はLINEで決済情報を登録し、LINE Payかクレジットカードで支払う。傘の利用料は1日(借りた時点から24時間以内)なら70円(税込み、以下同)。これは「月に3~4回利用していただいて300円なら使ってもらえるのでは」(丸川氏)という考えから価格が設定された。傘のシェアスポットは19年10月時点で600カ所に達し、アイカサのユーザー登録数も5万人を超える。

アイカサの料金設定。1日70円(税込み)ずつ段階的に料金が加算され、6日以降なら420円(同)になり、月末まで料金は変わらない。さらに8月からは月額280円(同)の使いたい放題プランも始まった
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