「キャリア迷路」から抜け出すためのコミュニティーを主宰する池田千恵氏によると「好きを仕事にする」ことは会社員のままでも実現できるそうです。むしろ安定した収入を維持しつつ身銭を切ってチャレンジできるのは会社員の特権でもあるとのこと。今回は実際に会社公認で趣味のネットショップを運営し、その知見を本業の会社に反映して仕事でも成果を出している松永剛さんのインタビューをお届けします。
本業に相乗効果が生まれる副業の始め方
前回は、副業NGの会社にお勤めの方が「プロボノ」(仕事で培ったスキルを無償で提供する働き方)で興味があるプロジェクトに参加することで本業にもシナジー効果が生まれた例を紹介しました。プロボノも勉強になりますが、せっかく自分の貴重な時間を費やすのなら、報酬もあったほうがうれしいな、という人も多いことでしょう。そこで今回は、副業歓迎の会社に属し、趣味を生かした事業を持つことにより副収入に加えて本業とのシナジー効果を発揮している松永さんにインタビューしました。
――普段はどんな仕事をしているのですか?
企業のデジタルマーケティングを支援する会社でコミュニケーション・プランナーをしています。クライアントである企業のウェブサイトやECサイト、SNSを活用して、企業とお客様のコミュニケーションを手伝う仕事です。戦略から管理運用までを一貫して行います。6年前に今の職場に転職しました。

――会社員をしながらネットショップを運営するようになったきっかけは何ですか?
直接のきっかけは東日本大震災でした。当時新卒で入った前職でグラフィックデザイナーをしていました。妻も別の会社でコピーライターをしていました(現在は転職しECサイトの企画・商品開発職)。夫婦で広告の力を信じていて、広告で世の中を良くしたいと考え、自分たちなりに意義をもって働いていました。
そんな中、東日本大震災が起き、自分たちが作った広告が自粛で世に出ないという事態が起きました。自分たちがやっている仕事の意義を立ち止まって考えてみたところ、「広告で商品の良さを伝えるのもいいけれど、その先にある、もっとお客さんに近い仕事にもたずさわってみたい」「お客さんに直接手渡しできるもので、人の生活を良くすることはできないか」と思うようになりました。
思いたったのが「器」のネットショップでした。結婚を機に器を買いそろえるようになり、夫婦の趣味になりました。以前は毎晩飲み歩いていたのに、器を買いそろえるようになってから「この器で食事をしたい」「家でくつろいで楽しみたい」という気持ちになり、家で過ごすことが増え、日々の生活がちょっと豊かになってきた気がしました。夫婦そろって旅行も好きで、旅行先でも器を開拓して作家さんに直接会ったりもしていました。
そこで2011年の夏に器のECショップ「threetone うつわと生活雑貨」(http://three-tone.com/)を開設しました。「日本の道具で家ごはんをごちそうにする」をコンセプトに、全国各地に足を運んで、窯元や作家もののテーブルウエアを探し、取り扱うセレクトショップを夫婦ではじめました。
