観葉植物で部屋の空気きれいに… 実はなりません

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

室内ガーデニングの人気が高まり、売れ筋の植物の多くは、部屋の空気をきれいにすると宣伝されている。しかし研究によると、室内の空気をきれいにするという点では、観葉植物の効果はないに等しいとの結果が出た(PHOTOGRAPH BY BECKY HALE AND MARK THIESSEN, NATIONAL GEOGRAPHIC)

私たちの目を楽しませてくれる観葉植物。だが、部屋の空気をきれいにする効果はほとんどないという。「そんな事実は知りたくなかった」と思うかもしれないが、これが科学者の出した答えだ。

インターネットを検索すると、そんなはずはないと思うだろう。インテリアに関するウェブサイトでは、空気中の危険な化学物質を除去するという植物が数多く紹介されているし、オンラインストアでも、空気をきれいにするとうたう植物が売られている。

「多くのインターネット記事や健康関連のブログで、植物が室内空気質(建物内などの空気中のガス成分量)の状態を改善する特効薬として薦められています。そこで、この問題について、より深く調べることにしました」と話すのは、米ドレクセル大学の環境エンジニアで、室内空気質の専門家でもあるマイケル・ワリング氏だ。

その成果は、2019年11月6日付けで学術誌「Journal of Exposure Science and Environmental Epidemiology」に掲載された。ワリング氏は共著者とともに、過去10年に発表された12件の科学研究を検討。対象の植物は計196種類に上った。

1989年のNASAの実験

こうした過去の研究のうち、室内に置く小さな鉢植えの植物がさまざまな有害物質を除去できると結論を出したものは、いずれも実験室内で行われていた。ワリング氏によると、小さな容器に植物を置き、有害な気体である揮発性有機化合物(VOC)にさらすのが典型的な実験方法だという。

それぞれの実験は、密度や除去時間の点で幅があった。ある実験は、一般的な室内用のツタを、VOCの一つでシックハウス症候群の原因でもあるホルムアルデヒドにさらしたところ、わずか24時間で3分の2が除去されるという結果を出していた。

しかし、こうした研究には問題があるとワリング氏は言う。それは、実験で気体を密に入れた空間と、普通の家庭やオフィスの環境とでは違いが大きいことだ。

空気清浄効果をうたう植物を販売するブログや業者の多くがその根拠として挙げるのが、1989年のNASAの研究だ。幅、奥行き、高さが60センチ余りの空間をさまざまな気体で満たし、小さなファンで循環させ、その中に植物を置くというものだった。狭い気密容器内で植物がVOCを低減できることを示したこの30年前の研究により、消費者の植物への期待が大きくなりすぎたのではないかと、専門家は話している。

「実験データに欠陥があるとは言っていません」とワリング氏。ただ、これは実験室での結果にすぎないということだ。

空気の質を変えるのに必要な植物の数は

もっと一般的な住宅環境で植物がどう作用するか測定しようと、ワリング氏はそれぞれの実験について、クリーンエア供給率(CADR)を計算した。CADRは米国などで使われる指標で、一定時間に空気清浄機が室内にきれいな空気を供給する量を測定する。

CADRを使い、ワリング氏らは各研究の結果を標準化した。これにより、機械式空気清浄機を使う、窓を開けるなど、すでに効果がわかっている方法と比較し、植物が室内の空気をきれいにできた度合いを判断することができた。

「植物は確かにVOCを減らします。ですが、その速度はかなり遅く、建物内ですでに利用されている換気システムと肩を並べられるほどではありません」とワリング氏は言う。

空気の質を左右するほどVOCを減らすには、約30センチ四方につき10本ほどの植物が必要になる。これは約45平方メートルの部屋なら5000本に相当し、森そのものという状態だ。

厳密に言えば、植物は空気中の毒素をわずかに取り除いている。だが、「空気清浄機や換気と同じくらいの効果を得るのに必要な植物は、非現実的な量」だというのがワリング氏の見解だ。

今日、NASAは国際宇宙ステーションで植物を育てている。目的は新鮮な食料を得ることと、「雰囲気をよくする」ことだ。植物の健康効果として、人の精神状態を改善できる点に着目している。