快適に座れるパンツ デサントのユニホーム技術で人気

日経クロストレンド

国産衣料品の通販サイト「ファクトリエ」とデサントが共同で開発した「“座る”を快適にするパンツ」。野球のユニホームの縫製技術を応用することで着用時のストレスを低減。2019年10月に発売したところ、発送まで数カ月待ちになるほど人気を集めている。ファクトリエを運営するライフスタイルアクセント(熊本市)の山田敏夫社長に人気の理由を聞いた。

山田敏夫氏は1982年に熊本の老舗洋品店に生まれた。2012年にライフスタイルアクセントを設立し、ファクトリエをスタートした。自ら全国の優れた技術力のある工場を訪ね回っている

野球のキャッチャー向けの技術を使用

「“座る”を快適にするパンツ」は、3Dパターンと呼ぶ野球のユニホームに使われている構造と伸縮性のある素材を利用した。通常のパンツでは各脚につき前後に2枚の生地を縫い合わせているところを、各脚1枚の生地を筒状にして作っている。

野球のユニホームを作っているデサントアパレル(大阪市)の村岡工場(兵庫県香美町)と共同開発した。特徴は動いても生地が引っ掛かりにくいこと。例えば座るときに生地が膝に引っぱられて裾がずり上がったりしない。脚を曲げても突っ張らないので、座った姿勢で快適に過ごせる。ネイビーとブラックの2色があり、直販価格は1万9800円(税別)。決して安くない製品だが、予想以上の売れ行きで生産が追い付かないほどで、ほとんどのサイズで完売もしくは発送まで数カ月待ちの状態になっている。

山田敏夫社長は人気の理由を「長時間座って働くことが多いビジネスパーソンが快適に過ごせるはき心地」にあると語る。

「はいた姿は普通のスラックスのようだが、はき心地は柔らかい。歯医者、美容師、エンジニア、自転車に乗ることが多い人など“座る”ことをストレスに感じている人からの引き合いが多い。動きやすいので、例えば自転車に乗ったりエクササイズするときに着用して、そのまま上着を着て仕事に出られるようなところが好評なのではないか」(山田氏)

一般のパンツとは縫製のパターンが全く異なる。伸縮性のある素材をこのパターンで縫製するには高い技術が必要になる
3Dパターンと呼ぶ、野球のユニホームの構造を応用しているため、手に持っても一般のパンツのように真っすぐ垂れ下がらない

企画の発端は、デサント側と話し合いをしていて「第2、第3の水沢ダウンを作りたい」という話題が出たことだった。デサントが国内に持つ4つの工場のうち、岩手県にある水沢工場がその高い技術を生かして開発したダウンウエアは「水沢ダウン」と呼ばれ、人気を集めている。他の工場にもそれぞれ高い技術があり、それを生かした価値のある商品を開発したいということだった。

そこで村岡工場を山田氏が訪れて優れた縫製技術などに触れたことから企画が動き始めた。「見に行ったところすごくいい工場で、3Dパターンという優れた技術があった。それをどう活用できるかという話し合いの中で、“座る”という部分に焦点を当てた製品のアイデアが出てきた」(山田氏)。

山田氏自らデサントアパレル村岡工場を訪れ、製品開発に当たった(写真提供:ファクトリエ)

村岡工場の3Dパターンと縫製技術は、野球のキャッチャーが立ったりしゃがんだりという動作をスムーズに行えるように開発された技術だ。

「座ったときやしゃがんだときに一番楽に感じられるように作ってある。例えばタクシーやバスの運転手、飛行機の操縦士など、座る動作にストレスを感じやすい職業に向いている。これから多くの分野に応用できる可能性のある技術ではないか」(山田氏)

予約を開始したところ大きな反響があり、村岡工場側も非常に驚いていたという。

「それまで野球のユニホームしか作ってこなかった村岡工場にとって、これから少子化や他のスポーツの人気などにより野球人口が減っていく中で、どうやって生き残っていくかという問題があった。そのため、これまでに培った技術で全く異なる分野の製品を作ることに対してとても前向きだった」(山田氏)

野球のキャッチャー向けの縫製技術をパンツに採用した発想の転換が新たな需要を掘り起こした。デサントにとって、価格競争の激しい大手スポーツ用品店で販売するものとは異なる、新しい切り口による事業創出につながりそうだ。

ファクトリエのショールーム。製品の感触を確かめ、試着してからネットで注文できる

(ライター 湯浅英夫)

[日経クロストレンド 2019年12月6日の記事を再構成]

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