PCでメモはNG 佐藤可士和流、結果の出る打ち合わせ
『佐藤可士和の打ち合わせ』
「発言しない人は打ち合わせに出てはいけない」と指摘する
「とりあえず、打ち合わせしよう」。あなたのオフィスでこんな会話が頻繁に交わされるようなら、仕事の効率を見直した方がよさそうだ。今回紹介する『佐藤可士和の打ち合わせ』は、打ち合わせの無駄を省けば生産性が大幅にアップすると説く。多方面で活躍する人気クリエーティブディレクターの実践しているノウハウを体得すれば、仕事の質が格段に高まるはずだ。
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佐藤可士和氏(撮影=尾鷲陽介)
著者の佐藤可士和氏は多方面で活躍しているクリエーティブディレクターです。1965年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科を卒業後、博報堂を経てクリエーティブエージェンシー「SAMURAI」を設立しました。国立新美術館のシンボルマークデザインやユニクロ、楽天グループ、セブン-イレブン・ジャパンをはじめ様々な企業のブランドクリエーティブディレクションを手がけたことで知られます。毎日デザイン賞や東京ADCグランプリなど受賞歴も豊富です。現在、慶応義塾大学特別招聘教授と多摩美術大学客員教授も兼任しています。本書は2014年に単行本として出た『佐藤可士和の打ち合わせ』(ダイヤモンド社)を19年11月に文庫化して日本経済新聞出版社から出版しました。
仕事の質を高める秘訣
冒頭で佐藤氏は「僕にとって打ち合わせとは、仕事そのものだ」と断言しています。
何気なくこなしてしまいがちな「打ち合わせ」という行為にこそ、仕事の質を高める秘訣が隠されているのです。
僕のオフィス「サムライ」では、流通、ITから、自動車、飲料、商社、ファッション、国や地方の仕事まで、30を超えるプロジェクトが常時、無理なく動いていますが、それを可能にしているのは、最高に質の高い打ち合わせを重ねているからです。
(はじめに なぜ、僕は打ち合わせの本を書いたのか? 6~7ページ)
「結果の出る打ち合わせ」と「全く無駄な打ち合わせ」があります。著者は前者にこだわります。打ち合わせをすることで「プロジェクトなり、テーマなりが、少しでも前に進む」ことを自分に義務づけています。「とりあえず、打ち合わせ」は時間の無駄と斬り捨てます。
打ち合わせをするためのノウハウをまとめたこの一冊には、守るべき9項目のルールがテーマごとに挙げられています。「心構え」「設計」「イメージの重要性」「時間管理」「気遣い」「ファシリテーター」「ブレーンストーミング」「会食とランチミーティング」「社内コミュニケーション」です。
アドバイスにあたって、打ち合わせという行為を時間設定や話し方、座る場所の決め方、終わり方などの細かい場面に分解しているのが本書の特徴です。そのうえで各場面でどう動けばよいのかを極めて具体的に解説していきます。例えば野球の教則本を読むと、バッターボックスでの立ち位置、バットの構え方、内野ゴロに対する一塁手のグラブの動かし方などがわかりやすく示されています。著者の説明方法はスポーツを教えるイメージに似ていますから、読者に対して明確に言いたいことが伝わってきます。