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残業削減より「ナカミ改革」 サントリーの働き方

千大輔サントリーホールディングス人事部部長(上)

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NIKKEI STYLE

早くから長時間労働の是正など働き方改革に取り組んできたサントリー。新浪剛史社長は働き方改革を成長戦略として位置付け、積極的に推進しているという。千大輔ヒューマンリソース本部人事部部長に取り組みを聞いた。

数値目標の残業削減には限界

白河桃子さん(以下敬称略) 働き方改革の先進企業のサントリーですが、一体何が本当に効果がある施策で、その結果会社には何が起きるのか? 今日はぜひ先進企業ならではの効果と成果をお聞きしたいです。働き方改革を進める上では、その成果をモニタリングし、よりよい形へとアップデートしていく姿勢が重要だといわれています。御社はそのアップデートが奏功してよりよい結果を出せているそうですね。そもそも働き方改革に着手したのは、いつ頃からだったのでしょうか。

千大輔さん(以下敬称略) 長時間労働を是正する取り組みは早くから進めてきまして、例えばテレワーク施策は2011年から導入していました。より本格的に進んだのは、14年に新浪(剛史氏)が社長に就任したことがきっかけです。「成長戦略として働き方改革を位置付けて、強力に進めていく」というトップステートメントが発信され、16年から「働き方改革」として始動。翌17年を「『働き方ナカミ改革』元年」と位置付けて、改革のアプローチを変えていきました。

白河 何をやるかの段階から、意味や成果を問うていこうというフェーズに入ったのですね。ナカミ改革とは、「より本質的な仕事の中身を磨いて、生産性を上げていこう」という意味だと思います。なぜアプローチを変える必要があったのか。その背景を教えていただけますか。

千 早くに導入していたテレワークは順調に利用者が増え、15年の頃には対象者の半数以上が「年1回以上利用している」というほどに浸透していました。また、同時に進めてきたフレックス制度も、コアタイムがなく個人単位で実施できるなど、「柔軟に働ける環境整備」の面では一定の成果は出せていたと思います。しかしながら、労働時間削減や有休取得日数増加に関して、数字を追うだけの活動では頭打ちとなってきていました。そこで、「より根本的な業務の見直しを行うことから仕切り直そう」と再スタートを切ったのが、16年以降に着手したナカミ改革になります。

白河 具体的にはどんなアクションから始めたのでしょうか?

千 まず、各部署で「業務の棚卸し」をしてもらうことから始めました。現場のメンバーが自分の担当業務と工数をリスト化して、課長や部長が一緒にチェックし、要不要の判断をしてムダな業務を省いたり、効率化の方法はないかを探ったりする作業です。営業、マーケティング、管理部門など、それぞれの現場で棚卸しを一斉にやったのが、1年目に行ったことでした。

業務の棚卸しで無駄な作業を洗い出し

白河 特に削減の対象としてあがった業務として、印象的だったものはありますか。

千 よく挙がっていたのは「会議」です。定例化していたり、議題に対して開催時間が長過ぎたり、参加人数が多かったり。そういった会議のムダに気づき、頻度や時間、参加人数を絞る判断をしていた部署は多かったです。

会議以外でも、「なんとなく慣例でやってきたけれど、実は必要度は高くない業務」の洗い出しはよく報告されていました。「毎月こういうデータを取って、◯◯部に渡しているけれど、果たして本当に活用されているのでしょうか」といった疑問が出ると、マネジャーが相手先の部署に確認し、「今はほとんど活用されていないらしい。じゃ、来月からやめよう」という判断をする。人事部でも、毎月社内向けに発信していた「社員数」のデータを年1回に削減したり、慣例的に続けていたメールレターの頻度を見直したりしました。

白河 業務の要不要の判断をするのは、部長クラスがしっかりチェックするのですね。決定権者が決まっているとスムーズですね。

千 そうですね。現場レベルでは見えづらい関係性や、将来の展開につながる意義が隠れている場合がありますので。

白河 そうやって業務の見直しを推進していった結果、労働時間や有休取得の改善も見えてきたのでしょうか。

千 実は反省として、当初は、数値目標が先走りしてしまったんです。当社らしいカルチャーかもしれないのですが、「年次有給休暇を全員最低10日は取りましょう」と数値目標を掲げると、その達成に向けて頑張り過ぎてしまう。その結果、「業務はまだ残っているのに休まないといけない」といったシワ寄せが現場にいってしまったんですね。その点を労働組合からも指摘されまして、17年から「ナカミ改革」という言葉を使い始めたという経緯があります。

白河 改革の進め方を変えていったのですね。どう変えたのでしょう?

千 2つあります。一つは、現場発想を重視しようと「推進リーダー制度」を全社で取り入れました。課長一歩手前くらいの若手層に働き方改革の推進リーダーになってもらって、7、8人ほどのメンバーで業務の棚卸しをもう一度やってもらう。何か課題が見つかれば部署のトップに提言してもらって、部署全体を巻き込みながら改善を推進していくという役割です。現在、全社で400人程度に推進リーダーや推進マネジャーとして動いてもらっています。

白河 でも、課長職一歩手前くらいの方々は、通常業務だけでも忙しい層ではないですか。反発が生まれたり、片手間で機能不全に陥ったりするようなことはないのでしょうか。

千 ボランティアではなく、業務の一つとしてやってもらっています。ゆくゆくはマネジメントを担う層にとって、組織活性化を考える予行演習になる育成施策の位置付けで、会社としても重視しているのです。当然、人事評価にもしっかり入れます。そういったアナウンスをした上での任命でしたので、あまり反発は出なかったですね。

白河 なるほど。評価にもかかわるとなれば、積極的な姿勢につながりますね。「働き方改革をやることで、本業の数字が落ちないのか?」といった不安の声は聞かれませんでしたか。

新浪社長から繰り返しメッセージ

千 一部でそういう声が上がったのも事実ですが、実際やってみた結果は落ちていないですし、何よりトップが「働き方改革は『競争戦略』だ」と繰り返し言ってきたことが、会社全体の意識を変えてきたと感じます。

以前は、どちらかというと疾病や過労死を防ぐという労務管理的なニュアンスで働き方改革を発信していて、現場で数字を担っている部門からは「そうはいってもビジネスが優先でしょう」という反応があったのも事実です。16年以降は明確に「競争優位に立つための働き方改革」という強い発信が増え、社内のどの部署の社員にとっても「これは自分たちのための改革なんだ」という理解が共有されていきました。

白河 やはりトップの継続的なメッセージが有効だということですね。具体的にどうやって現場にメッセージを下ろしていったのでしょう。

千 まず、毎年1月に全世界の管理職を集めてサントリーホールで実施する総合会議で、新浪から「働き方改革に本気で取り組んでいく。そのイメージはこういうものだ」とダイレクトに説明がありました。さらに新浪が社員に向けてメッセージを発信する社内向けのウェブサイトで、複数回にわたって働き方改革に触れてもらいました。最近では、推進リーダーを集めた座談会を新浪が中心となって開催しました。

白河 ナカミ改革をより効果的に進めるために始めたことが2つあり、一つは「推進リーダー制度」。もう一つはどういうものですか。

千 ナレッジサイト「変えてみなはれ」の開設です。要は、それぞれの現場から上がってきた働き方改革の事例を共有する「ネタ集め」のプラットフォームです。「あ、これ、うちのチームでもまねしたいな」というネタを自由に水平展開したり、さらにブラッシュアップしたりするための場になっています。人事部の若手社員の発案で始めた取り組みです。

白河 ボトムアップですね。サイトを見てみると、アクティブで面白そうですね。ネタの投稿はどれくらいの数が寄せられるのですか?

千 投稿数は年々伸びていまして、19年はおそらく200件を超えそうです。サイトのアクセス数も順調に伸びています。面白いのが、集まるネタの内容の変化です。最初は「Zドライブに埋もれているファイルを3秒で発掘するワザ」「消費データをエクセルでまとめる時におすすめのワザ」といった、業務効率化のTIPSがたくさん集まっていたんですね。それが十分に蓄積されてきてからは傾向が変わり、最近は自主的な勉強会やワークショップの開催、部署内アワードの発案が盛り上がっているんです。例えば、サントリービール社のある部署ではその部署を経験したことのある部長職を3人ほど呼んで「キャリア勉強会」を実施しています。

白河 業務効率化を経て、その次の自発的なクリエーティブな思考・行動へと発展しているんですね。

千 そう感じています。「推進リーダー制度」と「変えてみなはれ」の取り組みを始めてからは、労働時間や有休取得の面での変化が目に見えて起こってきました。総労働時間でいうと、06年には平均して年間2000時間超だったのが、18年には1907時間にまで減りました。残業に換算して、月18時間程度になります。

有休取得日数も大幅に増加

白河 有休取得日数も増えたのでしょうか?

千 飛躍的に増えました。15年には年間平均取得日数13.8日だったのが、18年には19日に。社員の意識調査でも、「必要な時に有給休暇がとれる」という回答のスコアが3.60(5点満点の5段階評価)から4.26に伸びました。

白河 上から数値目標とやり方を落とすだけでなく、「変えてみなはれ」のように、社員の皆さんが自発的に面白がれる方法が、御社のカルチャーには合っているのでしょうね。

千 たしかにそうかもしれません。あまり切羽詰まった数値目標が先行するよりも、楽しく取り組める仕掛けづくりをするほうがサントリーには合っているのかなと感じます。バーチャルな学び場を目指す社内サイト「TERAKOYA」というものも、最近力を入れています。平日の昼休みに「退職給付・退職金・年金制度について知ろう」という講座を開いたり、MBA(経営学修士)ホルダーの社員が講座を開いたり。外部からプロのスポーツコーチを招いてコーチングについて話していただく企画も立ち上がりました。

白河 「創発(自立的な組織により創造的な成果に結びつく)」が生まれる職場づくりこそ、働き方改革の本当の目的の一つですよね。

千 ギリギリと雑巾を絞っていても面白くないですし、いずれは限界が来ると思います。働き方改革による生産性向上は、「労働時間」という分母を減らしながら、「成果」という分子を増やすという両輪で実現するもの。当社ではまず分母の労働時間を減らすことから始まって、今は分子の成果の質をより高めていくフェーズに入ったと認識しています。

(次週公開の記事後半では残業削減のためのツールの活用方法、男性育休への取り組みなどもお聞きします。)

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)。

(文:宮本恵理子、写真:吉村永)

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