やりたい仕事だからこそ 2人の女性が歩んだ軌跡ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020

2019/12/17
「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」の大賞者・小巻亜矢さんは、サンリオピューロランドを再建した
「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」の大賞者・小巻亜矢さんは、サンリオピューロランドを再建した

組織の中で自分のやりたい仕事を続けることは意外に難しい。女性誌「日経ウーマン」(日経BP)が選ぶ「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」の受賞者2人は、仕事を通じて本当にやりたいことを見いだし、努力を重ねている。

積み重ねが経営に生きる

サンリオエンターテイメント社長 小巻亜矢さん

「自分にやるべき仕事があるのか、不安より前に葛藤があった」。サンリオエンターテイメントの小巻亜矢社長は23年前、37歳で離婚した時のことをこう振り返る。サンリオを結婚退職してから11年間は専業主婦だった。この間に職場ではデジタル化が進み、仕事の手順は大きく変わった。英語は得意だったが資格を持っているわけではない。息子2人の子育て中で、働ける時間にも制約がある。

雑誌やチラシの求人を見ると、条件にあてはまる仕事はなかった。このまま働かずに支出を切り詰めて生活したほうがいいのか。自分が仕事をして生きていく意味を考えながらの職探しだった。

サンリオエンターテイメント社長 小巻亜矢さん

だから、当時愛用していた化粧品を販売する仕事に就いたときは、「ありがたい」と夢中で取り組んだ。「肌のことや商品のことを誰よりも知っていないと、自信を持って人に薦められない」。寝る間を惜しんで勉強した。

徐々に成績は上がり、顧客も増えたが、そこで気づいたのは「自分よりもっと大変な思いをしている女性がいる」現実だった。自身も次男を事故で失い、離婚するなどずいぶん苦しんだ。「でもお客様に話を聞くうちに、借金や暴力などで悩んでいる女性がたくさんいるとわかった。化粧品だけでは女性を幸せにできない。経済的にも精神的にも自立するためにサポートしたい」。目標が定まった。

コーチングやキャリアカウンセラーの資格を取るなどまずは勉強。やがて女性向けのセミナー事業を手掛け、子育て支援のNPOを立ち上げる。51歳で東京大学大学院教育学研究科に進学したのは「スペシャリストになるためにはアカデミックな下支えが必要」と感じたからだ。

修士課程を修了して教育関係の道に進もうと考えていた54歳の時、サンリオピューロランドの再建を依頼される。自分のやりたいこと、今までやってきたことが無駄になるのではないかと迷ったものの、実際にやってみると組織運営は人材教育そのものだった。朝礼を導入して社員同士の会話を増やし、社員一人ひとりと面談してアイデアを引き出し、形にしていく。

赤字続きだった施設は2年で黒字化し、2018年度の来場者数は過去最高を更新した。今は「これまで努力してきたことがすべて今につながっている」と感じている。

今年、サンリオピューロランドを運営するサンリオエンターテイメントの社長に就任した。社員の声を聞き、子どもの小学校入学前までだった時短勤務の利用可能期間を小学3年生修了に延ばし、テレワークを一部導入することを決めた。「管理職を増やすのも大切だけれど、まずは社員が辞めなくてもいい会社にしたい」と小巻さんは話す。

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