年収1000万円で新卒採用 就活生に企業が問う力とは就活探偵団

眼鏡専門店のオンデーズ(東京・品川)は一律だった初任給を廃止し、学生時代の接客アルバイトの実績など個々の入社時点の能力や実績を反映させる新たな制度を20年4月に導入。年収は最大で600万円を提示する。20年卒採用では2~5人が対象になる見通し。

誰もがうらやむ特別枠採用。実際入社する人はどんな人なのか。いち早く制度を取り入れたヤフーを訪ねた。

常にプレッシャー

田中英太さん(仮名)は「エンジニアスペシャリストコース」という技術職の特別枠で17年に新卒で入社した。年収は一般社員の1.5倍の650万円以上。現在はユーザーのデータを扱う専門部署に所属する。

特別枠の応募資格はプログラミング競技大会で一定の成績を収めていたり、自然言語処理などの分野で論文の発表経験があること。田中さんは国立大大学院出身で、在学中は複数の論文を発表したり、関連イベントに登壇したりして、プログラミングの世界ではちょっとした有名人だった。

就活では海外企業からの誘いもあったが、「ワークライフバランスを重視したい」との思いからヤフーを選択した。

能力が高く評価された故の悩みもあるという。入社後すぐに、先輩が1カ月くらいかかって取り組んでもできなかった課題をやるよう命じられた。「上司の期待値が高くて常にプレッシャーがありますよ」と吐露する。

こうした厚待遇をうたう募集。実は単に学生を「釣る」だけが目的ではない。

日本企業では年功序列や終身雇用を前提とした「メンバーシップ型雇用」が主流だ。職務や勤務地が限定されず、新卒一括採用で大量に人材を獲得。会社が人材を大事に育てる仕組みだ。社員が会社へ忠誠を誓ってくれるため、会社にとっても都合が良かった。

しかし、デジタル化やグローバル化の進展で企業はイノベーションを起こせるような専門性のある人材を求めている。「大学を卒業したばかりの若者をゆっくり育てる時間はない」(大手メーカー)からだ。会社は仕事内容に応じたポストを用意し、優秀な即戦力のある人材を新卒や中途を問わず選別し採用する「ジョブ型雇用」へのシフトが迫られている。能力ある者は評価するが、そうでない者には退場を促す――。「新卒1000万円採用」はこうした日本企業の転換の象徴なのかもしれない。

トヨタ自動車は総合職の採用に占める中途採用の割合を中長期的に5割とすることを決めた。新卒に偏った採用は曲がり角に来ているのは間違いない。企業の人事に詳しいデロイトトーマツグループの古沢哲也パートナーは「近いうち、日本の人事の仕組みは劇的に変わるだろう」と予測する。

平均年収が1000万円を超えるある大手商社に勤務する20代の男性社員は安住していない。将来は留学して経営学修士号(MBA)をとることを視野に入れているという。

「在学中はもちろん、社会人になってからも勉強をし続けなければ、必要とされる人材にはなれない」。自分に「エンプロイアビリティー」(雇われる力)はあるだろうか。そんな点に注目しながら就活を進めてほしい。

(企業報道部 鈴木洋介)

[日経産業新聞 2019年12月11日付]

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