Men's Fashion

「AI時代こそ人間らしさに価値」創造力の数値化に挑む

SUITS OF THE YEAR

ビジッツテクノロジーズCEO 松本勝さん

2019.12.12

日本経済新聞社デジタル事業 メディアビジネスユニット「NIKKEI STYLE Men’s Fashion」と世界文化社「MEN’S EX」が共催する、「ビジネスや自分のフィールドで情熱を持ってチャレンジし、時代を変えていく才能や志を持つ人」を表彰するアワード「SUITS OF THE YEAR 2019(スーツ・オブ・ザ・イヤー)」。2回目となる授賞式を11月7日(木)PALACE HOTEL TOKYO(東京都千代田区)にて開催しました。それぞれの分野で活躍する受賞者6人の横顔を紹介していきます。




ビジネス部門の受賞者、ビジッツテクノロジーズ最高経営責任者(CEO)の松本勝さんは独自の合意形成アルゴリズムを活用し、これまで定量化することが難しかった人間の創造性、目利き力、センスなどの可視化に挑む。能力が高く影響力のある人の「1票の重み」を数値化することで、「多数決だけでは見つけにくい、本当にいいものは何かをすぐに選別、意思決定できる」という。このCI(コンセンサス・インテリジェンス)技術と呼ぶ独自技術は国の補助金審査員の信頼度分析などにも応用されるようになった。大きな仕事のときにはスーツで勝負に出る。

ゴールドマン・サックスでAI使った投資ファンド設立

180センチの長身に均整のとれた体。「世の中でみると体格はよい方ですが、自分自身では相当細いと思います」。大学時代に強くなりたい一心でボディービル部に入部。51キロだった体重は90キロを超えるまでになった。ストイックにトレーニングを続け、全日本3位やベンチプレスでの優勝に輝いたが、部活にのめり込みすぎたために留年。母に泣かれて今度は一念発起、勉強に集中し、大学院でまたたくまに成績上位にのぼりつめた。その大学院時代に、今度は総合格闘技にのめり込んだ。

両親ともに起業家で学習塾とブライダル事業で成功を収めた。「食卓ではいつもビジネスや事業アイデアのディスカッションをしていました」

大学院修了後はゴールドマン・サックスで株式トレーダーの道へ。「少しでも油断したら自分が痛い目にあう。そんな部活の経験から、就職先もハイプレッシャーの生きるか死ぬかの境目で働きたいという願望がありました」。いったん別の外資系証券へ転職した後、再びゴールドマンに再就職し、債券デリバティブのトレーダーとして好成績を連発した。

当時、外資系金融業界は華やかな時代で、高価なスーツは成功の証しでもあった。「普段はモニターに向き合う仕事ですからスーツは着ませんでしたが、ちゃんとした場所でちゃんとした人に会う日や夜にパーティーなどへ出かけるときはスーツ。仕事で着るというよりは、おしゃれしたいから着るという感じでした」。鍛えた体に既製のスーツは合わず、すべてオーダー。スーツ以上にシャツはサイズが合わず、「むりやりボタンを留めて気分が悪くなったり、スピーチしようとしてボタンが飛んだりしたこともありました」。

金融業界では次第に人工知能(AI)やアルゴリズムを使った自動取引がどんどん進化していった。松本さんもゴールドマンで自分たちの仕事をAIに代替させていくプロジェクトにかかわり、AIを使った投資ファンドを設立した。AIと共存する時代の変化を肌で感じながら「人にしかできないことって何だろう。それは、クリエイティビティーなのかな、と感じました」。